孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

マリーヌ・ルペンと気候変動 ナショナリズム(国家主義)とインターナショナリズム(国際主義)

2015-12-17 22:19:27 | 国際情勢

(フランスのルペン国民戦線党首=AP 【12月11日 日経】)

アメリカ:勢いが止まらないトランプ氏
アメリカの共和党大統領選挙候補者トランプ氏の「イスラム教徒入国禁止」発言に関して、15日発表世論調査では賛成36%、反対60%とのことですが、共和党支持者に限ってみれば賛成が59%と多数派を占めているそうです。【12月17日 朝日】

そうしたことから、トランプ氏の支持率も14日発表の世論調査によると前回10月の調査時より13ポイント増えて41%に達しています。【12月16日 毎日】

共和党主流派には、過激な発言を繰り返すトランプ氏では本選で民主党クリントン氏には勝てないのはもちろん、マイノリティー支持を失い共和党全体にとってもダメージになるとの認識もあって、“指名候補を最終決定する来年7月の党全国大会でトランプ氏を引きずり降ろすシナリオもささやかれている。”【12月16日 産経】とか。

ただ、“同氏が全国委員会との誓約書をほごにして第3党で出馬されれば保守票が食われ、民主党を利することになりかねない。主流派はそんなジレンマを抱えている”【同上】とも。

共和党内でトランプ発言賛成が過半を占める状況で、他候補者のトランプ批判も及び腰になっています。

****分断大国 2016米大統領選)トランプ氏発言に賛否 共和党9候補TV討論会****
来年の米大統領選に向けた共和党テレビ討論会で、ドナルド・トランプ氏の「イスラム教徒入国禁止」発言に同党候補の評価が割れた。

一方、国内外でテロ事件が相次いだ後とあって、世論の風をつかもうと、首位をうかがうテッド・クルーズ、マルコ・ルビオ両上院議員が競うように対テロ強硬姿勢を強調した。

 ■「イスラム教徒入国禁止」クルーズ氏は擁護
米CNNなどが主催した討論会には世論調査で支持率上位の9人が登場した。
 
トランプ氏は7日、パリでのテロ事件やカリフォルニア州での銃乱射事件を受けて、イスラム教徒の米国入国禁止の声明を発表。この日も「イスラム過激派は過去よりはるかに活発化してきた。(だから)人々は私を尊敬している」と強調し、声明発表後も党内で支持率首位を維持していることを自賛した。

これを正面から批判したのが、支持率の落ち込みが著しいジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事だ。過激派組織「イスラム国」(IS)と戦うイスラム教徒の協力を得られなくなると指摘し、「トランプ氏の提言はまともではない」と断じた。

これに対し、最近の調査で支持率2位に浮上した保守強硬派のクルーズ氏は「なぜトランプ氏があの提案をしたのか理解できる」と擁護した。

ルビオ氏も、トランプ氏の声明を一定割合の国民が好感していることに「オバマ大統領が我々の安全を守っていないからだ」と政権を批判したが、直接の評価は避けた。

米紙ワシントン・ポストなどが実施し、15日発表した世論調査では、トランプ氏の提案に6割の人が「間違っている」と答えたが、共和党支持層では「支持」が59%と多数派に。国内外で物議をかもした「トランプ声明」の評価が、候補者間でも支持層でも割れている。

 ■対テロ、強硬姿勢競い合い
IS関連の事件が相次いだことで、共和党支持層では、大統領選で重視する政策は「テロ対策」が最多の38%を占めるようになった。

こうした世論の風向きをつかもうと、各候補が安全保障や治安対策での強い姿勢を印象づけるため、互いに競い合う場面も目立った。(中略)

 ■マララさん「憎悪に満ちた発言」
昨年のノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさん(18)が15日、トランプ氏について「憎悪と差別的なイデオロギーに満ちた発言を聞かされるのは本当に悲劇的だ」と批判した。(後略)【12月17日 朝日】
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フランス:かろうじて右翼・国民戦線(FN)の台頭を抑える
フランスでは12月6日に行われた地方選第1回投票で、右翼・国民戦線(FN)が仏本土13州(コルシカ島含む)のうち6州の得票率で首位となる躍進を見せました。

全国得票率でも27.96%を獲得して第1位となり、サルコジ前大統領が率いる最大野党、共和党など右派連合の26.89%。オランド大統領の与党で左派の社会党の23.33%を凌ぎました。

躍進の背景には、「移民受け入れをただちに中止せよ」と大量の移民を「脅威」と訴える主張が、テロに震える多くの国民に届いたことの他、エリートによる政治を批判し、「主権」や「愛国」という言葉を操り、弱者に寄り添う姿勢をアピールしたことが奏功したと指摘されています。

****主権の回復」声高に訴え****
エリートによる政治を批判し、民衆とともにあるという意味で「私はポピュリストだ」と語るルペン。地域圏議会選の遊説でも「主権」や「愛国」という言葉を操り、弱者に寄り添う姿勢を際立たせた。

欧州連合(EU)の加盟国をはじめ外国との競争に苦しむ中小規模の農家への配慮を怠らない。流通業者の値引き圧力や激しい競争で、肉や乳製品の値段は下がった。この夏、パリの街角に農家がトラクターを乗り入れ、抗議の声を上げた。(中略)

国民の生活を苦しくしただけの共通通貨ユーロはやめる。国境は独自に管理する。農業をはじめとする政策はフランスが決める――。仏紙リベラシオンの政治記者、ドミニク・アルベルティニ(28)は「もたつく経済への対応も、治安の確保も、FNが国民に示す解決策の底流に『主権の回復』がある」と指摘する。

愛国の向こうに見据えて攻撃するのは、EUに屈したと映るフランスの既存政党と、EUだ。「女王」とも呼ばれるドイツ首相メルケル(61)も例外ではない。【12月8日 朝日】
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一見したところ、もっともな主張にも見えますが、「主権」や「愛国」の強調は、国内少数派の権利や他国との協調を無視し、やがては国内の個人の権利に挑むものともなる危険を孕むところが“右翼”“極右”と呼ばれる所以です。

第1回投票では過半数を制する政党がなく、上位政党で争われる13日の第2回投票が注目されていました。

****仏右翼政党、地方選全敗で首長届かず 既成政党巻き返す****
フランスの地方選(第2回投票)が13日投開票された。右翼・国民戦線(FN)が日本の関東や近畿などにあたる「地域圏」で初の首長の座を狙ったが、届かなかった。

11月の同時テロを背景に、「反移民」を唱えるFNが第1回投票では躍進したが、その後政権与党・社会党が対FNの包囲網づくりに動き、既成政党が巻き返した。
 
内務省の集計(開票率98%)によると、FNの得票率は全国で27%。これに対し、サルコジ前大統領が率いる中道右派・共和党などの右派勢力が41%、社会党などが29%だった。投票率は58%と第1回投票より9ポイント上がった。
 
今回の地方選は、13ある地域圏の議員選。その議長は地域の行政も担う首長の座にあたる。FNはテロ後に、「移民や難民に紛れてテロリストが入り込んでいる」と反移民のトーンを強め、6地域で首位に立って第2回投票に臨んだ。【12月14日 朝日】
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右翼・国民戦線(FN)が勢いを失ったのは、“第1回投票より9ポイント上がった”ことに示される、国民戦線躍進への危機感が高まったこと、及び、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首(47)や姪のマリオン・マレシャルルペン氏(26)が出馬して4割を超える得票を得ていた両地区で与党・社会党が第2回投票への不出馬を表明、ライバル共和党への投票を呼びかけるなどの対FNの包囲網づくりを行ったことなどによるものと説明されています。

かろうじて国民戦線を抑えた形ではありますが、国民戦線は“悲願である初の地域圏獲得こそ逃したものの、決選投票の得票数で2012年大統領選からの上積みを達成。ルペン党首は「われわれを止めることは誰にもできない」とさらなる支持拡大に意欲を見せる。”【12月14日 時事】とも。

****本当の危険はトランプ氏ではなくルペン氏*****
(2015年12月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
・・・・高い失業率、生活水準の停滞、移民流入の増加が続いた末に、グローバル化は攻撃的な愛国主義の発生につながった。

ルペン氏は人々の不安と偏見を手玉に取っている。敵は「アウトサイダー」で、この場合はイスラム教徒と国際資本主義だ。

その問題に対するルペン氏の答えは、国境の封鎖と国家の経済統制の復活だ。政治は「ナショナリストとグローバリスト」の戦いになったのだという。このメッセージは、右派の排外主義者だけでなく幻滅した左派の有権者にも同等の訴求力をもっている。(中略)

国民戦線を率いるルペン氏はただの不快なポピュリストの一人ではない。欧州が永遠に捨て去ったはずの過去への回帰を約束しているのだ。(中略)

ルペン氏のような現代の国家社会主義者も、(ヒトラーのように)それと同じ人々の理屈抜きの感情を揺り動かしている。すなわち、内と外の敵に対して国を「復興」させなければならないという感情だ。これは本当に危険だ。【12月11日 日経】
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国際主義が結果を出したCOP21
一方、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は12日夜、史上初めて、温室効果ガスの排出削減の取り組みに途上国も含む全ての国・地域が参加する枠組み「パリ協定」を採択したことは、12月15日ブログ“温暖化対策  すべての国・地域が削減に参加する初めての枠組み「パリ協定」で合意”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20151215で取り上げたところです。

下記記事は、フランスやアメリカの政治動向、COP21の「パリ協定」合意を、ナショナリズム(国家主義)とインターナショナリズム(国際主義)の視点から捉えたものです。

****マリーヌ・ルペンと気候変動とナショナリズムの敗北****
世界中で繰り広げられる国家主義者と国際主義者の戦い
(2015年12月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

この週末、フランスでナショナリズム(国家主義)とインターナショナリズム(国際主義)の相対的な強さが試された。そして今回はインターナショナリストたちに軍配が上がった。

パリでは、フランスのローラン・ファビウス外相が明るい緑色の小づちを振り下ろし、200カ国近い国々が気候変動対策で合意したと宣言することができた。

その翌日には、ナショナリストの反移民政党・国民戦線(FN)がフランスの地域圏議会選挙に臨み、いずれの地域でも第1党になれずに終わった。

FNのマリーヌ・ルペン党首は、政治はますますナショナリストとグローバリスト(世界主義者)との戦いになっていると語った。

次第に縮まる勝敗の差
この週末の会議と選挙は、グローバリストがまだ政治を何とか支配していることを示している。だが、勝敗の差は縮小している。

2002年にジャンマリ・ルペン氏がFNの候補者として大統領選挙の決選投票に進んだときの得票率は17%だった。今回の地方選挙では同氏の娘と孫娘(フランスでは、極右政治は家族の仕事だ)が40%を優に超える票を得た。全国レベルでは、FNは現在、30%弱の票を手にしている。

気候変動にかかわる協定が採択されたことは、FNが罵るグローバリストにとって重要な成功だった。

マリーヌ・ルペン氏が、世界において重要な国であることをやめたフランスという将来像を描き、国境の封鎖や国際条約からの脱退などを求めていたまさにそのときに、フランスは国際的な視野を持ち、グローバルな役割を完全に果たすことができる自信に満ちた国であることを立証してみせたからだ。

つい数週間前にテロ攻撃を受けたパリでこの会議が開かれたという事実も、フランスの打たれ強さを示す重要なシンボルになった。

気候変動に取り組む協定の採択が素晴らしい国際協力の1つに数えられることは間違いないが、これを発効させるには数々のハードルを乗り越えなければならない。

この協定に批判的な多くの人々が指摘しているように、パリ協定の条文は、たとえ順守されたとしても、気候変動のペースを緩やかにするという目標にとって十分でない恐れがある。

協定が抱えるこうした弱点は問題だ。なぜなら、ナショナリストとインターナショナリストとの戦いは世界中で繰り広げられているからだ。

気候変動は、ナショナリストにとっては特に苛立たしい問題だ。世界規模で行動を起こして対処するしかないことが明白だからだ。これは、多くのナショナリストが地球温暖化など起きていないととぼける理由の1つだ。

米国では、ドナルド・トランプ氏やテッド・クルーズ氏のような共和党のナショナリストたちが列を成して今回の協定をこき下ろしにかかるだろう。

トランプ氏は、富める国々が発展途上国に排出量を削減してもらうためにお金を払うという事実をまず非難し、恐らくは、自分の交渉力を使えば(国境に作る壁の費用をメキシコに払わせるのとまさに同じように)中国やインドにも資金を出させることができると大声でまくし立てることだろう。

バラク・オバマ大統領は、気候変動対策での合意は米国の指導力の勝利だとすぐに発言したが、これは上記のような批判を早めに封じるための試みだった。

「弱腰オバマ」論の真実
会議に先立って米国と中国が合意していたことがパリ協定の下地を作ることになったことは間違いない。それでもオバマ大統領のこの発言は、米国人以外の人々には自己中心的で不愉快だと思われてしまうだろう。

しかし、オバマ氏の発言は米国内の文脈で解釈しなければならない。米国の現職大統領は自分の味方からも、国際交渉の舞台では弱腰だと批判されるのが常なのだ。

「弱腰オバマ」論が特に説得力に満ちているように聞こえるのは、指導力の強さを落とした爆弾の数で測る場合だ。実際のところ、今回の気候変動に関する協定は、オバマ政権による外交の画期的な躍進の1年の締めくくりになっている。

今年はこの気候変動についての合意に加え、イランの核開発プログラムについても外交で話をまとめ、環太平洋経済連携協定(TPP)という大型の通商協定を結び、キューバとの国交も回復させた。この4つはすべて、何年も実現してこなかったものだ。

これらの取り決めに至るまでの計り知れない忍耐、譲歩の精神、細部への目配り、そして退屈さの容認は、米国の右派に見受けられる暴力的な、あるいは安易な解決策を好む傾向とはまさに対称的だ。

トランプ氏は、イスラム教徒を全員米国から追い出すと公約しているし、クルーズ氏も、中東に爆弾を大量に落として砂漠の砂が燃えて光を放つようにしてやると話している。

国内のナショナリストを倒す必要があったのは、米国人とフランス人だけではなかった。
インドと中国の政府は、西側諸国によって課された自国の経済成長に対する制約を受け入れているとの非難を受けやすい。

だが、折しも北京が息の詰まるようなスモッグに覆われ、インドが依存する氷河が後退するにつれて、中国人とインド人は、気候変動に取り組む共通の国際的利益が、気候変動は西側が生んだ問題であり、西側が単独で取り組まねばならないと主張したくなる願望に勝たなければならないことを理解した。

勝利はまだ当然視できない
気候変動に関する合意とFNの敗北は、グローバリストにとって良い週末を意味した。だが、ナショナリストに対するインターナショナリストの勝利を当然視することはできない。

それどころか、ナショナリスト勢力はまだ、欧州、ロシア、米国、東アジアで力を増している。ナショナリストの物語の糧となる作用――経済の停滞、テロリズム、移民に対する恐怖心――は消え去らない。

しかし、究極的には、ナショナリズムはルペン氏やトランプ氏のような政治家が提起する本当の問題に対して、説得力のある答えを出すことができない。

気候変動協定が認めたように、どれほど不満があろうとも、世界中の国家は共通の利益のために協力せざるを得ないのだ。【12月16日 JB Press】
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保守系400議席で日本が根底から変わる
日本での展望は暗いものが。

週刊現代の最近号の見出し。
「衝撃!!最新衆参選挙予測で自民党が衆議院で単独323議席、おおさか維新も合わせて保守系400議席以上に 民主党は消滅。保守系400議席で日本が根底から変わる」

当然、憲法改正も現実のものとなるでしょう。

もちろん“暗い”というのは私個人の見方にすぎず、国民多数が選択した“明るい将来”と個人の考えがますます乖離しているに過ぎない訳ですが、なんだか気が滅入ります。「いやな渡世だな・・・」



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