脳機能テスト結果は
H21.10 :MMS: 25/30(計算-3・想起-2)
かなひろいテスト:正答数=0 内容=不可
立方体模写=不可
H22.4:MMS: 23/30
かなひろいテスト:正答数=0 内容=完璧
立方体模写=可
今日は岩月先生が花の写真を送ってくださったのでご紹介します。
二枚目を読むと、MMSの低下順のおかしさに気付いていますね。
何しろ想起3/3ですよ。
それなのに時 3/5。
正常な老化や、単純な老化の加速ではないことになります。ここが一番おかしいことがわかりますか?
想起が満点の場合は、低下してもおかしくない下位項目は「計算」だけです。(例外的に「三段階口頭命令」で「机上」があります。MMS=29点で出現率7%)
もしこれが実力だとしたら、どう予測を立てていくことになるのでしょうか。
質問された方は
「A4版用紙を左側しか使ってない→右側が見えてない→左脳の障害。計算も1/5だし。
ついでに立方体模写=可なので右脳はOK」と推理しました。
A4版用紙の使い方に注目したことは良いことですが、「左側しか使わない」と考える場合は、ほんとに左だけにしか描いてなくて、このように真ん中の立方体・右上の日付がかかれることはありません。
また、左脳障害を考える場合には、テスト項目からだけでなく、検査中の応答まで含めて言語の障害はないのかどうかを考慮しなくてはいけません。
以下の説明はちょっと難しいのですが、頑張って読んでみてください。
脳が見るとき、左視野のものは目に入った時は右側に入ります。
そして左眼の右視野(に入った現実の左視野)の情報と右目の右視野(に入った現実の左視野)の情報は「視交叉」というメカニズムを経て右後頭葉視覚野に到達するのです。つまり今見ている左視野の情報はすべて右後頭葉視覚野に入るということです。
(右視野の情報は、左後頭葉視覚野に入ることになります)
図形を処理するのは、右脳の分担ですから右脳に入った情報の方が処理されにくいのです。右脳障害の時に左半側空間無視はよく見られる後遺症です。(左脳障害の時に右半側空間無視が起きることはとても珍しいです)
古くなりますが、2008年3月14日から「右脳障害後遺症ー右脳が壊れるということ」として続けてブログに書いてありますから、興味がある人は再読してみてください。
MMS下位項目の低下順がおかしい時は、脳の老化が加速されたものではないという観点から解釈していきます。なぜ「時」が3点になるのか?ここが突破口になります。
マニュアルA44Pに解説してあるように、「時」が想定外の低下を起こす時には①心理的な要因は考えられないか(神経症のような場合も含めて)②失語症はないか、この二点の可能性を考えます。
A4版用紙の使い方にはちょっと変わったところが見受けられますが(書き順)、それが神経症レベルまでとは考えにくいでしょう。
失語症もなさそうです。
1/20のブログ「テストができないということは・・・」に書いたように、正答でなかった場合には、その理由を考えなくてはいけません。
①テスターが悪い
②テスティーの前頭葉が悪い
③テスティーの脳機能に問題がある
④神経症レベル
①か②か・・・
今回のテスト結果をよく見てみるとテスト実施日は22年4月12日だったのですが、「4月17日?」「平成なんか気にしてない」ということで「時」が3/5になったのです。A4版もかなひろいテスト用紙も30項目質問票までもすべて22年4月12日と書かれています。
「時の見当識」がわからないのではなく、ちょっとあいまいにはなっているが、前頭葉が集中を掛けると正答できるレベルということです。限りなく5点に近いということになります
上記の理由②に相当するわけですね。
テスターが、MMSの下位項目の低下順を知っていれば、もう少し丁寧に「時」を尋ねることができたでしょう。
二段階方式では、正確に検査をするように皆さんに伝えますが、「正確」というのはその人の本当の実力を知ってあげるという意味です。
今回はより良い点数が実力であったと思いますが、よりよく見てあげなさいというのではありません。
「時の見当識」はどういう風に認識されて生活しているのかを知るために、私たちは検査をするのです。
さてこの方は、前回の検査がMMS=27点、今回がMMS=22点ということで低下と判定することになりますが、「時の見当識」を実力レベルで判定したら限りなく5点になり、そうすると模写のみ減点のMMS=29点。
これではMMS下位項目低下順がおかしいことになりますが、質問にも書かれていたように、一方が六角形で立方体模写ができるという状態なら再挑戦で合格は間違いないでしょう。
つまりこの方のMMS得点は、満点に近いということになります。
左が前回のA4版用紙です。
立方体を比較してみてください。
単に「不可」が「可」になったというだけではなく、形も線もきれいになったこと、図形のサイズが大きくなったことまで含めて改善と理解するのです。
前述してありますが、かなひろいテストは前回も今回も正答数=0でした。
内容把握を見てみると前回は「おじいさんとおばあさん・・・・」だったのに対して、今回はパーフェクト!
実態はみごとな改善例ということになりました。
S田さん、よかったですね!(この項続きます)