午後の研修会は「発達障害;小児神経学的視点から」というテーマでした。
小児の時点で発達障害が判明しても、時間とともに大人になっていくわけですが、講師の宮尾先生は、その期間を障碍児やその家族とともに見てこられた方でした。
「発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)などの脳機能の障害で、その症状は通常低年齢で発現するもの。
発達障害は、精神障害でなく認知障害である」
ちょっとワクワクするでしょう!
上記障害が判別しにくいもので、重なる部分があることは、午前の講義で解説済みでした。
(最近は自閉症スペクトラムというくくり方のほうが適切だといわれています)
「ADHDの場合、非治療の小児では80%が思春期になっても症状が残存する。
これらの症状は、少なくなりながらも成人期まで存在する。
予後は、各年代での発達課題をどのように乗り越えることができたか、どのような併存課題、合併症があるかによる」
臨床の先生ですから、具体例にあふれたおもしろい講義をしてくださいました。
臨床例を多くもつと、統計処理をしないままで全体の傾向がわかってくるものです。
アスペルガー児童の特質として「三つ組みの症状」という言い方があります。
1「対人交渉の質的な問題」
2「コミュニケーションの質的問題」
3「イマジネーション障害」
特に2「対人交渉の質的な問題」を持ったまま成人になってしまうと、知的機能が高ければ高いほど、その言語能力により、脳機能を過大評価されてしまいがちというくだりなどは、まさに認知症の高齢者が、一応言葉がしゃべれるというだけで、実際の脳機能よりもはるかに高いレベルと思われて、「わざとこんなことをしている(私を困らせるために)」とか「ボケてるかどうかわからない」などといわれてしまうことと同じです。
「脳に刺激が入って理解していく入力過程には三タイプある」というのも面白いですね。
1.耳から 2.目から 3.体から
「聞いたほうがわかる」のか「読んだほうがわかる」のか、それとも体を動かして納得するのかということです。
ガウディやルイスキャロルの例が出てきました。
ガウディは設計図が書けなかったが模型は正確だった・・・
ルイスキャロルは論理的な数学者で「不思議の国のアリス」の奇妙な顔や景色は、キャロルがそのように見えていたのかもしれないと考えられる・・・
学習障害は、このように脳機能を細かく見てできることとできないことをはっきりと測定していかなくては、援助や教育が成り立つはずもありません。
そして学習障害といわれる人たちの中から、社会を変革していったり優れた業績を生み出すことが多々見られることにも言及されました。
二段階方式の勉強をしている人にとっては、すぐに三頭立ての馬車の絵が浮かぶでしょう。
三頭立ての馬車で一番大切な役割は、御者。
馬車に御者はなくてはならないものですね。もちろんそれぞれの馬(デジタル処理にたけた左脳、アナログ処理にたけた右脳)の能力も大切なのですが、その能力を十分に引き出すかどうかは御者のお手並み。
二段階方式では、左脳、右脳、運動の脳のさらに高次元の働きをするものが前頭葉だと考えます。
決して並び立つものではありません。
講義でも、「結論的にはワーキングメモリーの障害」と何度か言われました。
ワーキングメモリーだけでなく、多岐にわたる前頭葉機能の障害が問題になる症状と密接に関連しているのです!なぜ前頭葉機能に障害が出てしまうかはこれからの研究課題でしょうけれど。