脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

政府の数値目標 70代の認知症割合25年までに「6%」減

2019年05月16日 | エイジングライフ研究所から

GWに遊びに来てくれた友人の友人。ちなみに彼女は私たちの仕事の内容を知りません。
気持ちのいい五月晴れの朝は、庭に出て朝食を楽しむことになりました。

自然な話の流れがあって、私が「R子さん、だいたいどんな人がボケると思う?」と尋ねました。
R子さんは即答しました。
「お仕事をやめて・・・何もしてない人。趣味がない。人付き合いもない。気難しい」
続けてまた私の質問「じゃあ、どんな人がボケないかしらね」
こんども即答。
「楽しみごとがある人。友達とよく付き合う・・・だって私の母、81歳だけどとっても元気なんです。今思い浮かべながらお話ししてます。絵も好きだし音楽も好きだし、お花も大好き!仕事も続けてて、といっても独身の弟と同居してるので、家事一般なんですけど。何か作ってはお友達に食べさせたり、よくしてます。毎日がそれなりに楽しそうなんです」

R子さんの答えは正しい!
ボケるかボケないかをその人の生活ぶりで判断することは、世の多くの皆さんがしていることです。
決して職歴や学歴で判断することはありません。
むしろ笑いながら「立派なお仕事をした人は危ない」といわれ、慌てて「立派なお仕事をして、かくしゃくとしている方もいますよ。要は『今、いきいきとその人らしく生きているかどうか』でしょ?」と訂正すると、皆さんは実にスムーズにうなずいてくれます。
(5/11河津バガテル公園)

以下青字の引用は、今日(5/15)のネットニュースで目に留まった毎日新聞が報じたニュースです。下線を加筆しました。
70代の認知症割合25年までに「6%減」 政府が数値目標

認知症の高齢者は25年に700万人前後にまで増えると推計されており、政府は認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の後継となる大綱の策定を進めている。大綱の目玉は認知症の「予防」で、認知症を発症した人が暮らしやすい社会を目指す「共生」と2本柱になった。

 政府が予防の数値目標にするのは、人口に占める認知症の人の割合を示す「有病率」。厚生労働省の資料によると、約10年前の調査では70~74歳の有病率が約4%、75~79歳が約14%だった。政府は大綱最終年の25年に団塊の世代(1947~49年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)になることなどから、数値目標の対象を70代に設定。その上で、19~25年に70代の有病率を全体として6%減らす案で検討している。

 予防策には、社会参加や運動が認知症の予防につながる可能性があるとして、高齢者が通う運動教室やサロン活動、学習講座などの普及を推進。予防に役立つ商品やサービスの認証制度の創設を検討する。認知症の発症や重症化予防、治療について科学的な根拠が不十分なことから、国内外の研究成果から知見を集めて予防の手引を作成し、新たな予防や治療法の開発を進める。

 大綱案を議論する政府の有識者会議では、社会保障費の増加や労働力不足への懸念から予防の推進を訴える声が上がっていた。一方、根本治療薬の開発が進んでいないことから、医療で患者数を減らすことは困難との意見も出ている。【原田啓之】」


まさに、世の中の人たちの実感に沿った認知症予防が行われようとしてます。ボケないためのカギは変化ある生活ぶりというわけです。
そのことをエイジングライフ研究所では「脳の使い方」分けても「前頭葉機能をどのように使い続けているか」という視点から主張し続けてきました。
Photo_4
この図から考えると、厚労省の考えている予防活動は、やや左脳(仕事や勉強)に偏っているかもしれません。運動教室が筆頭に上がっていることはとてもいいことですが、右脳(趣味・遊び・人付き合い)の活躍場所を増やすことこそ、第二の人生を豊かに過ごせる基本的な条件ですから。

「治療薬の開発が進んでいないこと」を悲しむのではありません。認知症は薬で治すものではないからです。
専門家や研究者の方々は、重度の認知症患者の形態的な脳を対象に原因究明を進めたために、アミロイドベータやタウタンパクに注目してしまいました。それを薬物を使って、除去するとか発生を抑えるとかの方向に研究が進んでしまったのです。
最近になって、海外の有力な研究機関が「認知症発症には、生活習慣が大きくかかわっている可能性がある」という報告を始めました。

アミロイドベータやタウタンパクが原因ではなく、それらは老化の結果発生してくる。そして使わなければさらに増えていく。
このようにシンプルに考えると、生活ぶりこそが認知症になるかならないかのカギであるという一般的な理解と一致すると思います。

いずれにしても、財政的に立ち行かないということから目をそらすわけにはいきません。もっとわかりやすく「みんなが大ボケになってしまうと(そしてなかなか死なない状況になってしまうと)、それを支えるだけのお金がありません」という率直な言い方はできないものでしょうか?

素晴らしい5月のバラ園を楽しむことができるのは、まったく私たちの脳の働きのたまものです。
あふれる色彩と、さわやかな風と、かぐわしい香りと。同行の夫や友人との語らい。そしてこの感動を刻みこむ働きと。そうそう歩くことそのものも心地よい。
なんと沢山の働きを私たちの脳はしてくれているのでしょうか。
脳は使い続けなくてはいけません。脳を使うことは日々を楽しくさせるだけでなく認知症予防にも直結するのですから。

 


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