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削り |
湯のみ、茶碗などの削りと異なって
高坏の削りはとても気を遣う(つかう)。
手に持つ部分の、微妙なくびれと持ち上げた感じに違和感があれば失敗。
乾燥一歩手前までの間、全体が満遍なく乾燥するよう、ゆっくりと時間をかけて保存。
高台部分もある程度かたまり、口まわりもゆがまない程度になって初めて行う削り作業。
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削り完了 |
この削りの作業、慌てて行うとカンナ(金物道具)を当てている部分がぽろっと千切れてしまう。
ロクロの速さをその都度加減し、慎重に、更に慎重にすこしづつ削っていく。
そのようにして削りあがった品が下の写真の高坏。
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高さ、厚さ、重さ、 すべて同じく削る |
さて、削りの作業は無事終わったし、次の工程へと移る。
今度は別の道具を使って、更に慎重にシノギ文を掘り出していく作業。
さすがにこの時ばかりはラジオの音や電話の呼び出し音を消して行う。
気を張りつめて行う作業なので、電話の音でビックリし、余計な力が指に加わり、
下手をすると作品に穴を開けてしまったり、線文が乱れてしまうことだ。
過去何回もそれ等の音でビックリし、何個も穴を開けてしまった。
それ以来、この高坏を削るときやシノギ文を入れるときは音をすべて遮断している。
好きな音楽だけを小さく流すことはあるけれど、あくまでも控えめに流している。
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白磁高坏用に |
手に馴染み、アルコール類を入れても重くならないよう、成形の段階でかなり薄く作ってある。
薄く作ってある高坏、それを更に削って掘り込みを入れて仕上げる高坏。
品よく程よい重さになるよう、素焼きの後、釉薬をタップリ施して高温で焼き上げる。
そのようにして、いくつもの過程をえて焼きあがった、白磁シノギ文高坏。
伝統の技法を守りつつ、私らしい器として仕上げる予定です。
さあ、これから心落ち着かせて、一つ一つ削っていこう。
この文様、間違えたらやり直すことは出来ないんですよね?
上絵作家の方々は、絵がお気に召さなければ消して又描くことが出来ると思うのですが、
先生の場合は絶対に無理ですよね?
薄い作品なのに、気を張りつめてコツコツと仕事なさっている姿が見えるようです。
彫っていられるお姿を拝見したいですが、お仕事なさっている様子を想像させていただき、
焼きあがってくる作品を楽しみにしています。
ハイ、おっしゃる通り素地を削って文様を浮かび上げる技法ですので、
手の動きを間違えて深く削ったり、線を傷つけたりしたら失敗です。
釉薬をタップリ施していますので、重くならないよう素地は薄く作っています。
それを削っていきますので、どうしても静かな環境が必要になるのです。
日記にも書きましたが、品良く仕上がれば、そして白磁、青磁、どちらの
色合いでも映えるような作品に仕上げたいと思っています。