水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

ユーモア推理サスペンス小説 無い地点 <49>

2024年08月06日 00時00分00秒 | #小説

「それは怪(おか)しいんじゃないですかねっ! 公安が継続捜査をするというのに、こちらだけが解散するというのは…」
「いや、それはそうなんですが、事件性がない以上、こちらは解散するしかないでしょ」
 手羽崎が少し慌てながらバタバタと羽根をバタつかせるでなく署長の鳩村をフォローした。
「そういうことですか、署長?」
「ああ、はい…」
 鳩村はそう返すのが関の山だった。鳩村の身体にはЙ3番星から来た異星人が乗り移って[憑依して]いるということもあった。
「他にはないですねっ!?」
 庭取副署長が口橋の追撃を躱(かわ)すかのように大声で念押しした。鴫田とのヒソヒソ話を叱責された口橋としては、仕方ないか…と撤収する他はなかった。
 鳩村が逃げるように席を立ち、刑事達はザワつきながら席から立ち去っていった。
 捜査本部が解散となり、口橋や鴫田は俄かに手持無沙汰となった。
「おい、どうするっ!」
「何がですっ!」
 口橋が不満そうな顔で訊ね、鴫田も不満そうに返した。
「決まってんだろっ! これからだ…」
「これからって、本部が解散しちまったんですから、次の一件まで当分の間は暇(ひま)ですよね…」
「だな…。だが、妙に消えたミイラの行方が気にならねえか、鴫田っ!?」
「ええ、まあそうなんですけど…」
「公安絡みじゃ、俺らは手も足も出ねえが…」
「ええ、署長も来年、スンナリと本庁へお帰りになりたいでしょうしね」
 鴫田が鳩村の本音を代弁した。


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