水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (41)眠(ねむ)り

2020年12月12日 00時00分00秒 | #小説
 眠(ねむ)りという存在は生き続けるために重要な時間だが、実に厄介な存在でもある。眠ってはいけないとき、つい眠くなってウトウトしたり、明日は大切な用事があるから早く眠ろう! とすると、目が冴(さ)えて眠れなかったり・・と、実に優柔不断なのである。^^ だが、その原因は自分自身だから、誰に文句を言うことも出来ないから厄介なのである。ものぱ思いようで、羊が一匹…羊が二匹…と数えるのもいいが、眠ろう! と意気込むことをやめれば、案外、スゥ~~っと眠れるのかも知れない。^^
 富畑は明日(あす)、海外出張するというので、早めに床(とこ)に就(つ)くことにした。何度も出張している富畑だったから、出張には馴れていて準備も出来ていた。しかし、今回は初めての海外出張でもあり、富畑の気分は、いくらか高まりを見せていた。そうなれば、なかなか眠たくならないから困ったもので、富畑もその例外ではなかった。
「もうっ! いい加減にしろっ!」
 自分に怒ってもどうしようもないのに、富畑は思わず床で叫んでいた。九時に眠りに就いて早くも三時間が経過していた。
「おう! 上等じゃねえかっ! 眠らせねぇ~んだなっ!!」
 こうなったら意地でも眠ってやるっ! と、富畑はウイスキ-瓶を取り出すと、グラスに注ぎ入れてグイ飲みした。そのせいもあってか、それ以降の記憶はすぐに遠退(の)いていった。
 富畑がフッ! と目覚め、枕元の置時計を見ると、すでに九時を回っているではないかっ! 飛行機のチケットは10:30である。富畑は慌(あわ)てに慌てた。朝食騒ぎの話ではない。とりあえず洗顔と歯磨きを終え、富畑はカバンを積み込み車に飛び乗った。走り始めて10分、富畑はパジャマで運転している自分に気づいた。
 ものは思いようで、そう意固地になって眠ろうとしても、眠りはやって来ず、駄々を捏(こ)ねるから、意識しないで眠りを待つことが肝要・・という気長さが求められるお話である。^^

                    

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