水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スピン・オフ小説 あんたはすごい! (第二百二十回)

2011年02月01日 00時00分01秒 | #小説
 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百二十
その時、タイミングを合わせたかのように店の電話が鳴った。トゥルルルル…と響く電話音で、店奥から聞こえた。
「早希ちゃん、ちょっと出て…」
「はいっ!」
 早希ちゃんはカウンター椅子(チェアー)から慌(あわ)てて立つと、店奥へと急いで入っていった。そして、何やら話しているようだったが、しばらくすると戻ってきた。
「沼澤さん、来られるそうですよ」
「えっ? だってさ、今日は木曜よ。何かの用で、こちらへ来られたのかしら?」
 ママは暗に、霊能教室は火、土曜だから、眠気(ねむけ)会館に沼澤氏は来ていない筈(はず)だ、と云ったのである。
「ええ…たぶん、そうだと思いますよ」
 私も奇妙には思ったが、そこはそれ、場の雰囲気を和(やわ)らげようと、ママに合わせた。その時、お告げの声が突如、私の耳、いや脳裡へ流れてきた。
『すべては私が仕組んだことです。塩山さんが今日、みかんへ久しぶりに来られることは分かっておりましたから、沼澤さんへ霊力を送っておいたのです。彼は、みかんへ寄りたい…と思った訳です』
「なるほど…」
 私はママや早希ちゃんに聞こえぬ程度の小声で、そっと呟(つぶや)いた。

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