水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-82- いい結果

2018年11月12日 00時00分00秒 | #小説

 誰もが自分のやった行動の結果を気にする。当然のことだが、悪い結果を望む者は誰もなく、いいに決まっている。いいと、自己満足ながらも愉快ないい気分に人はなれる。これから物事をやろう! としたとき、その物事の上手(うま)くいく可能性が小さければ、どうだろう? 果たして、結果が悪い可能性が高いにもかかわらず、人は果敢(かかん)に動くのだろうか? ここに、人それぞれの違いの妙味(みょうみ)が生まれてくる。なせばなるっ! 的な発想の人は、どういう訳かいい結果が生まれる公算が高い。問題は何が何でもっ! と思う、その意識の強さにある。強ければ強いほど、いい結果となる。不可能を可能とすることさえあるのが、その意識の強さだ。日本史に登場する桶狭間で今川の大軍を撃破した織田軍などはその典型的な例である。
 ここは、とある選挙対策本部である。敗色濃厚の中、一人の候補者が痒(かゆ)くもない頭をボリポリと掻(か)いていた。
「先生っ! どうしましょう!」
「なにを言っとるんだっ! それを考えるのが君達、参謀(さんぼう)だろうがっ!」
「はあ、それはそうなんですが…。すでに、手は尽くしましたっ! もう、打つ手がっ! あと二日しかありませんっ!」
「ははは…だから君達は甘いんだ。まだ二日もあるじゃないかっ! これから敵の地盤を突き崩せば勝機は必ずあるっ!」
 それまで頭をボリボリ掻いていた手を止め、候補者は人が変わったような落ち着いた声で頭を撫でつけた。
「はいっ!!」
 選挙事務所に拍手と笑声が沸(わ)き起こった。このとき、選挙事務所の雰囲気が一変(いっぺん)したことを誰も知らない。雰囲気は誰の目にも見えないからだ。^^
 二日後、即日開票の結果、その候補者は不利な情勢を跳(は)ね除(の)け、見事に当選していた。
 意識の強さがいい結果を招(まね)いた愉快な例だ。^^

                                 


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