水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-83- 染(そ)まる

2018年11月13日 00時00分00秒 | #小説

 人には他に影響を受けて染(そ)まりやすい人とまったく染まらない人がいる。まあ、普通は適当にその場だけを合わせる・・といった、染まった素振りを見せたり、軽く影響を受けても、いつの間にか忘れてしまい、本来の自分へ戻(もど)ってしまう・・といった中庸(ちゅうよう)の人が大半だ。映画を見たあと、その主役になりきって映画館を出てきた人が数日後は元の自分に戻っている・・といった話が典型的な例である。
 会社ビルの前で、退社直後のサラリーマン二人が歩きながら話し合っている。
「ははは…まあ、いいじゃないかっ!」
「ダメなんですよっ、先輩! 僕、すぐ染まる体質なんですから…」
「ははは…染まりゃいいじゃないかっ! 染まって染まって染まりまくれっ!!」
「はい! でももう、染まってるんです、例の娘(こ)にっ!」
「ああ、あの娘かっ! かなり君に迫ってたからなぁ~。君だって満更(まんざら)でもなかったじゃないかっ!」
「ええ、まあ…というか、もう、ゾッコンなんですっ! これ以上、染まると、危険が危ないんです」
「なるほどっ! 危険が危ないか。ははは…愉快な話だっ! 俺は大丈夫だなっ、そっち方面はっ! だがな、俺も最近、染まっているものがあるにはあるっ!」
「先輩が、ですかっ? なんですっ?」
「パチンコっ!」
 後輩は、セコいなっ! とは一瞬、思ったが、口には出さず、笑って暈(ぼか)した。
 人は何に染まるか分らないのである。^^

                                 


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