水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-81- 常識(じょうしき)

2018年11月11日 00時00分00秒 | #小説

 常識(じょうしき)は、常識、上敷(うわし)き、畳(たたみ)、とも言われ、^^ 日常の世間で通用する規範(きはん)のようなものだが、強制力のある法律などとはいささか趣(おもむき)を異(こと)にする。いわば、変人に思われないための曖昧(あいまい)な概念(がいねん)である。世間の大多数が常識とすることは、少数の人々がやったり、やろうする違ったことを非常識とする。そのことを直接、口に出す人もあるが、変な人! …などと思うだけの人が大部分を占(し)める。だが、この常識が非常識な概念であることを多くの人々は分っていない。それは間違った概念が多くの人々の常識となっている場合だ。
 ポカポカ陽気の小春日和(こはるびより)、二人の老人が木陰(こかげ)の縁台(えんだい)で将棋を指(さ)している。
「ははは…なるほど、そういう手がありましたかっ!」
 思ってもいない奇抜(きばつ)な手を指された老人は、指した老人の顔を一瞥(いちべつ)すると、悔(くや)しそうな声でそう言った。
「ははは…常識ですよっ!」
「そうですか?」
「ええ、ええ。お知りじゃなかったんですかっ? 世間の愛好家なら百人が百人とも、こう指しますよっ!」
 笑顔で自身ありげに指した老人はそう返した。
「はあ…」
 ほぼ、負け将棋に思えた瞬間、指された老人の頭に非常識な手がフッ! と浮かんだ。指された老人は駒をビシッ! と盤上へ叩(たた)きつけた。これが必死となる妙手(みょうしゅ)で、勝負は大逆転した。
「… ま、参りましたっ!」
 残念そうに、常識を指した老人は負けを認めた。
 常識が非常識となった愉快な例の一つである。^^

                                 


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