二人が駆けつけると、確かに霊安室の中に弥生時代の装束を身に纏った祈祷師の老婆がいた。
「お婆さん、いつ来られましたっ!!」
口橋は息を切らして老婆に訊ねた。
「またまたっ! その、お婆さん・・という呼び方は、やめて下しぇ~~まし、と申したはずですじゃ…」
「ああ、ご祈祷師様でしたな。ご祈祷師様、いつ来られましたっ!」
「ほん今、でございましゅだ…」
口橋、鴫田は瞬間、そんな馬鹿なっ!! と思った。当然と言えば当然で、三次元の地球科学を否定した話なのだ。
「あの…お車か何かで?」
口橋はそう訊ねるのがやっとだった。霊安室の中ということもあったが、少し怖くなってきたのである。
「いえいえ…」
老婆はニコリと哂(わら)いながら、片手を団扇のように振って否定した。
「…」「…」
ここはスルーしよう…と、口橋は思った。
「署長が、公安がウイルス絡みで埋葬したとご祈祷師様に話したと言ってましたが…」
「ええ、そのお話は署長様から聴きよりました…」
「聞きよりましたか…」
鴫田が話に割って入った。
「ええええ、怖ぁ~~か時代になりよりましたでしゅだ…」
老婆の話を確かにそうだな…と、二人は思うでなく思った。