水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

ユーモア推理サスペンス小説 無い地点 <39>

2024年07月27日 00時00分00秒 | #小説

 合同捜査本部の会議が終わり一同が退席したあと、残った正面席の三人が相談を始めた。
「署長、どうされるおつもりです?」
 手羽崎管理官が左隣から鳩村に声をかける。
「どうされる? と言われましても、今の段階では、こうしますとは申せません。あなたなら、どうしますか?」
 鳩村はスルーして左隣の庭取に振る。つい今し方、振られたことへの振り返しだ。^^
「…被害者かどうかも言えない五体のミイラですよ。そのミイラも消えて今は無い訳です。となりますと、いったい何を捜査すると言うんです、署長っ!」
 庭取は少し興奮気味に鳩村の振り返しを、受けて凌(しの)ぐ。両者の間に刀の鍔迫(つばぜ)り合いにもにた雰囲気が漂った。
「まあ、今日はひとまず、これまでに…」
 これは拙い…と思った手羽先が両者に割って入った。ハトとニワトリは相性がいいのか? は、定かではない。^^
「おいっ! どうなるんだ、この捜査?」
 署内の自動販売機の前で缶コーヒー片手に口橋が鴫田に訊ねる。
「さあ…」
 鴫田は、僕に訊かれても…という顔で口橋へ返す。
「まあ、いいか…」
 何がいいのかは分からないが、口橋が悟りきったような声で呟く。こうして、この先どうなるか分からない、どうでもいいような一件を抱えたまま、麹町署の一日は終わろうとしていた。



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