そのとき、霊安室を見回っていた巡査が慌てふためいてやってきた。丁度、口橋と鴫田が署を出ようとしていた矢先だった。
「く、口橋刑事っ!!」
「んっ!? どうしたんだ?」
「霊安室に婆さんが突然、現れたんですっ!」
「なにっ!? 婆さんがっ!?」
マジックじゃあるまいし、老婆が突然、霊安室に現れることなどある訳がない…と瞬間、口橋は思った。それより、これから鴫田と疲れを取ろうと居酒屋へ向かうところだったのだ。そこへ、つまらない通報だ。口橋は憤(いきどお)っていた。
「その婆さん、今、どこにいるんだっ!」
「霊安室でお祈りなさってます…」
「祈るって…もしやっ!」
口橋の脳裏に奥多摩の老婆の姿がふと、浮かんだ。
「その婆さん、弥生時代の装束を身につけてなかったか!?」
「はい、確かに…」
「おい、鴫田っ! 行くぞっ!」
口橋は署内へ走った。当然、鴫田もそのあとに続いた。もし、通報が事実だとすれば、それは到底、現実には起こり得ないイリュージョンに違いなかった。^^
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