ミイラの消滅・・コトのすべてはSFじみた事実にあった。その事実を知る者、それは奥多摩の山深くの庵で暮らす祈祷師の老婆、そして署長の鳩村の二人である。二人は孰(いず)れもЙ3番星人が憑依しており、地球の命運を握る人物と言えた。
五体のミイラに残された頭部の一致した星印の痣(あざ)の鑑定結果が科捜研から報告されるということで、捜査員と関係者を一堂に会し、合同捜査本部の会議は署長が戻った夕方近くに始まった。
「科捜研の関さん、鑑定結果をお願いします…」
正面最前列で一同に対峙して座る鳩村が指名し、科捜研の研究所員、関礼子がスクッ! と立った。
「各ミイラの頭部に残された痕跡は孰れも後天性の痕跡で、傷痕と言える傷ではない・・という結論に至りました。現在の科学技術では到底、説明出きない痕跡であり、どのようにして付着したものか? の判明は不可能という鑑定結果です…」
言い終えると、関研究所員は着席した。
「鑑定結果は以上のとおりです。ただ、全てのミイラは現在、行方が分からず、我々は何の捜査に時を費やしているのかが、さっぱり分かりません。このまま、謎のミイラ・合同捜査本部を継続していいものかどうか、その判断は、署長の決定に委ねます…」
鳩村の右隣に座る庭取が、残り少ない鶏冠(とさか)のように立った癖毛を撫でながら静かに言った。振られた鳩村は一瞬、私かい? …と庭取を見てギクッ! とした。
「その件につきましては、明日に日を改めて通達することに致します」
この段階で、鳩村はどう平和的に決定したものか? の判断がついていなかった。それは、鳩村に憑依したЙ3番星人の思惑でもあった。