水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (92)強い弱い

2019年09月18日 00時00分00秒 | #小説

 何をもって強い弱いと言えるのか? を考えてみるのも面白い。お金持ちは貧乏な人より強いのか? また、多勢(たぜい)は小人数(こにんずう)より強いのか? はたまた、若者は老人より精力が強いのか? などなど、強い弱い・・という定義づけは実に曖昧(あいまい)なのである。確かにお金持ちは金に物を言わせていろいろ自由に出来るから強いが、自由に出来るあまり、勇み足をして不正使用で墓穴(ぼけつ)を掘り、助からない場合だってある。強くても結果は弱かった訳だ。また、大軍が少数の軍勢に敗れた桶狭間の戦いのようなこともあり、強い勢力だから助かるとは限らないのである。同じように、若者が弱く、老人が精力絶倫で女性を助ける強い場合だってある。^^
 秋の夜長(よなが)、テレビがガナらなくてもいいのにガナっている。とある夫婦の会話である。
『台風13号は勢力を維持し、今夜半、○○半島を暴風域に巻き込みながら北上する可能性がありますっ! 中心気圧970ヘクトパスカル、最大風速35メートル…弱い! 実に弱いっ!』
「お父さん、弱いそうよ…」
「そうかっ!? 強いと思ってたが、そうでもないか…」
「あなたと同じっ!」
「今、何か言ったか?」
「何も言ってないわよっ!」
 夫は早々と家の補強をやめ、一杯飲むと床(とこ)についた。
「やっぱり弱いじゃない…」
「んっ?」
「なにもない。おやすみ…」
「ああ…」
 次の朝、夫が窓を開けると、眼下(がんか)数m下の家まで床下(ゆかした)浸水していた。
「弱くなかったんだ…」
「あなたは弱かったけどね…」
「んっ?」
 このように、強い弱いの判別は実に難しく、助かる根拠(こんきょ)とはならないのである。^^

                                


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