ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

中国経済の減速

2015-03-18 10:35:19 | 経済

中国で全国人民代表者会議が行われ、中国政府は成長目標を7.0%に下げた、と盛んに報じられている。しかし、7.0%自体はかなり前から言われていたことであり驚くことではない。実際に7.0%の成長ができるかどうかが問題だと思う。中国の貿易統計によると1月は輸出、輸入ともに減少、2月は輸出が大幅増加、輸入が大幅減少となっている(いずれも前年比)。中国では春節前に経理を整理するので、企業が調整する傾向があるとしているが、1-2月をまとめてみると輸出が15%増、輸入が20%減だという。輸出増加は良いしるしだが、輸入減少は内需の弱さを示している。輸出増がそれほど続くとは思われず、7%成長もかなり苦しいのではないかと思っている。中国政府は元安に誘導するかもしれないが、これは世界との摩擦を生むだろう。

私は毎年1月に今年の経済予測などが出るのを色々と読んでいるのだが、大方の経済評論家は、中国の今年の成長の7.0%は実現できるだろうという見方だった。しかし、今は7.0%は苦しいという見方が増えてきているように思う。それでも6%以上の成長ができるなら大きな問題にはならないと思うが6%を切るようだと、最近のロシアのようなおかしな行動に出るリスクがあると思う。

一方日本はどうかというと、2月の貿易赤字が半減したというニュースが出ている(前年比)。原油安の割にはたいしたことは無いなと思って調べてみると、輸出2.4%増、輸入3.6%減という数字である。日経新聞は円安で輸出が増加に転じたと書いているが、下げ止まったという程度ではないかと思う。為替が1年前は$1が105円だったのに今は120円になっていることを考えると、ドル建ての輸出だったら10%以上増えているはずの輸出が2.4%しか増えていないということはまだ輸出が増えたとは言い難い状況ではないかと感じる。一方、輸入物価が上がっているのに金額は減っている。貿易収支の改善は、まだ原油安に頼っているということだろう。もっとも2月は中国向け輸出がさえなかったという事情はあるらしい。

経常収支は着実に黒字化している。日本企業の海外進出が進んでいることを示すものだろう。このまま日本企業がグローバル化して成功していくなら、見通しは明るいと思う。ただし、日本企業も外国人の雇用が増える傾向にあり、企業業績は良くなっても雇用は弱い。つまり格差は広がる、という傾向は続きそうに思う。それでも企業業績が悪いよりははるかに良いと思う。



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7 コメント

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不動産バブルの崩壊? (Instant Economist)
2015-03-18 19:25:17
中国ほどのポテンシャルを持っても経済が減速していくんですね。不動産バブルの崩壊しつつあるのではないかという説もありますが、以前の様に投資のうまみが少なくなっているのかもしれません。
中近東やアフリカは正常が不安定で投資のうまみがないし、金のなるフロンティアが無くなって来ているのかもしれませんね。金融業界の様に実態の伴わないフロンティアを作り出したり、IT業界の様に既存の経済システムを破壊しないと利益の出るフロンティアが創造できなくなって来ている。
世界は目先の金融政策や格差の是認では解決できない構造問題を抱えているような気がします。利益でしか行動を正当化できない人類あり方を問われているような気がしないでもないですが、日本人はアメリカがこけるまで動けないかもしれないですね。
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チャイナ経済統計の信憑性 (UCS-301)
2015-03-18 21:11:49
先ず、全人代に関するマスコミ報道について前々から気になっていたのですが、「日本の国会に当たる~」という枕詞は甚だ疑問です。チャイナは一党独裁のファシスト国家であり、民主主義国家ではありません。

「大方の経済評論家は、中国の今年の成長の7.0%は実現できるだろうという見方」は意外に感じました。”チャイナの経済統計に信憑性が無い”とは李克強首相自身の言です(当時はまだ首相ではありませんが)。そしてこれも李首相が”当てにできる”と言っていた国内の鉄道輸送量は、2012年頃より頭打ち(成長率0%を前後)となっています。チャイナの不動産バブルについても”鬼城”と言われるゴーストタウンに見られる通り、疾うに崩壊しています。上下水道などのインフラが整備されていない内蒙古の住宅価格が上海並みだというのは誰が見てもおかしいと気付くレベルです。

また、チャイナは既におかしな行動をとっていると思っています。国内の大量粛清、ウイグル、チベット、内蒙古、防空識別圏、パラセル諸島、スプラトリー諸島、尖閣諸島、小笠原諸島などなど枚挙に暇がありません。少なくともロシアより控えめには見えませんが、日本に浸透しない(報道もされない)のは欧米列強が軽視(または意図的に無視)しているためでしょうか。

チャイナの人口を金蔓と見做すやり方には疑問を持ちます。チャイナ独裁政権の巨大な収益簒奪システムに依拠しているためです。また戦前からそうですが、日本は(欧米もですが)チャイナを甘く見ている節があります。チャイナに進出した企業は悉く(撤退時ですら)金を毟り取られています。

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中国経済の「減速」 (世田谷の一隅)
2015-03-19 13:36:28
それでも、まだ「減速」の段階であり、バブルの明確な崩壊ではありません。

日本のほとんどの企業が、中国経済の減速を感じており、それに備え始めていると思います。この30年間、日本の目と鼻の先にある国が、10数億の人口を抱えて、猛烈なスピードで、これだけのの経済規模を実現してきたのですから、どきる限り、それの恩恵に与かろうとするのは経営者としては自然です。

それと同時に、その次に備えて、「チャイナ+1」を意識して生産基地としての役割をベトナムやミャンマ等に求めているのも経営者として自然なリスク対策です。

ただし、中国の内需に頼った部分は、大きく期待できないかもしれませんので、業種によって違ってくると思います。

何れにせよ、これだけの大きさと勢いを有した経済が変調すれば、周辺には大きな影響が出ます。また、あとになってから、「あの時がピークだった」と言えるのです。

日本の経営者は、その辺りのリスクヘッジを準備していると思います。何といっても「バブルははじけるまで膨らみ続け」ます。だからまだ「減速」段階であって、停止や縮小しているわけではありません。


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チャイナリスク (UCS-301)
2015-03-19 21:08:41
世田谷の一隅様のコメントでリスクヘッジという言葉が出ていましたので追加でコメントいたしますと、チャイナについてリスクヘッジを考える場合、金融面に加えて「国防動員法」を考慮に入れているかどうかが最も重要だと思います。日常的な商売上の損得だけでは済まないということです。産業スパイによる情報流出はもちろんのこと、最悪は工場が取り上げられたり、従業員が人質(出国できなくなる)になったりという危険性が伴います。日本の企業がこのようなリスクを考慮に入れて商売をしているようには到底思えませんが…。

個人的に、東トルキスタン、チベット、南モンゴルを(実質的に)植民地支配するチャイナの経済へ貢献(または経済を利用)することはどうも気が引けます。大手マスコミは報道しませんが”自治区”とは名ばかりであり、ウイグルでは多い場合数千人単位で普通に虐殺が行われています。
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チャイナリスク (世田谷の一隅)
2015-03-20 13:21:29
USC-301さんの懸念するような虐殺、苛斂誅求等の事件が、中国のどこかで起きている「可能性」は否定しません。1党独裁で、情報制限がある国ですから。

しかし、だからと言って中国市場を全く意識しないで、距離を置きながら現在の国内の事業運営をするのは、日本のほとんどの大手企業では無理ではないかと思います。

工場が停止したり、合弁相手に取られてしまうのも「あり得る事態」で、日本人従業員の出国停止も大手企業であれば、10年ほど前の事態で「想定範囲」と思います。

それは「準戦時状態」なので、平和ボケした日本には、いい刺激かもしれません。

大切なのは、これだけの勢いがついてきた中国の行動は、1890年~1945年に日本が拡大して周辺国を影響下(今の歴史観では侵略との表現になるが)に収めた時と似ています。地域におけるヘゲモニ争いになっているので、日中のつばぜり合いはしばらく続きます。おそらく中国がさらに優位性を発揮する事態が予想されます。

だからといって、中国の昨今の無茶苦茶な拡大戦略を是認するものではありませんが、地政学から見て、経済成長をこのまま続けたら、どんな事態になるかは「極東の歴史」が教えてくれています。

経済人としてどうするかは全く別の話ではありませんが、多くの大企業ではシュミレーションしていると思います。それでも事業の機会がある限り、中国を市場としてとらえていると思います。
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価値観外交 (Instant Economist)
2015-03-21 01:12:48
阿部総理は、
「アジア太平洋地域の戦略環境が変化する中で、地域の平和と繁栄を確保していくため、自由、民主主義、基本的人権、法の支配など普遍的価値の実現と経済連携ネットワークを通じた繁栄を目指し、日本はASEANの対等なパートナーとして共に歩んでいく」
という考えの元、阿部ドクトリンを発表しましたが、既に開かれた国の多いASEANの中で得られる経済的メリットは限定的と思われ、むしろ対中包囲網の意味合いが強いのではないかと思います。
欧米の列強は資本主義の発展の為に周辺を植民地支配しましたが、治安維持コストなど経済的にペイしない為、独立させて経済的に支配する戦略に切り替えました。一方でベトナムやアフガニスタン、イラクでの戦争の泥沼化から、アメリカは内政への干渉にも消極的になっているように見えます。アメリカはモンロー主義に立ち戻るのではないかという予測もあります。
最近のターゲットは支配したい市場ではなく、「テロ」になっていること、ご存知の通りです。人権外交も一時もてはやされたものの、一国の価値観が短期間で欧米化する術はなく、経済支配しようにも新たな市場の開発は容易ではないというのが現状でしょう。
支配される側も馬鹿ではありません。アラブ・アフリカ統一通貨の構想を打ち上げたカダフィは抹殺されてしまいましたが、アラブ、アフリカ諸国の「欧米に経済支配、搾取されたくない」という思いには非常に強いものがあるように思います。中国も例外ではありません。市場開放当初は現地産要求のみでしたが、すぐにそれでは搾取される一方だと言うことに気がつき、知的財産の開示やライセンス、研究開発拠点の開設など要求がエスカレートして来た事はご存知の通りです。
このようにフロンティアの開発は厳しくなっている訳ですが、行き先を失ったマネーは先進国であるギリシャさえ経済的植民地化にしてしまう程の勢いです。そうした厳しい環境の中で阿部総理の価値観外交が、どれだけ経済的な利益を得る事ができるかは大きな疑問です。アメリカの二番煎じやTPP頼みでは、痛む事はあっても、本質的に成長する事はないでしょう。
かつて日本の洪水のような輸出に苦しめられたアメリカの産業界は現実をしっかり見つめ、ヤングレポート、バルサミーノレポート等による政策提言を踏まえ産業シフトしながら様々な施策を実施し、米国競争力法を立法するに至りました。日本もグローバル化が成功したらという神頼みではなく、しっかりと現実を見つめ、競合優位を持てる将来を築いて行く必要があるのではないでしょうか?
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今の中国は許容の範囲 (ウィトラ)
2015-03-23 09:01:45
UCS-301さんは中国は既におかしな行動をとり始めているといわれていますが、私にとっては今の中国のおかしな行動はまだ許容の範囲内です。欧米もそう見ていると思います。その意味で危うくなっているのはロシアです。ロシアと中国でどちらがリスクが高いかと言えば断然ロシアだと私自身も思っています。それはロシアではプーチン首相に対する不満が高まってくるのは確実だと思えるからです。
中国でも輸出が減り始めると、相当危険な状態になると思います。それは2-3年後ではないかと私は思っています。

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