ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

日本の民主主義を振り返って

2011-02-24 08:33:48 | 社会

中東情勢に刺激されて、日本の民主主義はどうだったのかを見直してみた。戦後のどさくさが終わっていわゆる55年体制が出来上がったあたり以降を振り返ってみようと思う。

当初は、個人の政治意識の高い人は少なかったので、いわゆる組織票が多かった。地域の団体、農協、会社などの組織で自分たちに近い人を議会に送り込むという目的で組織が形成されていたと思う。そして議員は、自分の出身の街に土木工事を持ち込むなどの見返りを目的としていた。自民党と社会党の体制になってからは自民党が経営者(農業などの自営業者を含む)社会党が労働組合員という組織票をベースに動いていた。

基本的には選挙では理念を訴えると同時に、自分の支持母体に利益誘導も訴えている。その意味では私は「利権で票を買う」という状態が続いていたと思っている。社会党は政権には就けなかったので利益誘導はできず、自営業の多い農業や土木の分野に利益誘導がなされていた。結果としてこれらの産業は足腰が弱くなったと思っている。

この構図が90年代のバブル崩壊から崩れ始める。労働組合は経営側と対立しては成り立たないことに気づき、労働組合の組織票としての位置づけが弱まってくる。これが社会党の崩壊につながった。同時に社会の資本主義化が進み、個人事業者は減って会社員が増えた。会社員はどういう行動をとるかというと投票行動に関しては特定の組織に属さない浮動票になっている。私は農業には詳しくないが農家でもかなり農協離れが進んでいる感じがしている。21世紀に入って浮動票はますます増え、浮動票を取らないと選挙に勝てないようになった。

この浮動票を取り込もうとして政治家は工夫するようになった。その典型例が小泉元首相の郵政選挙と、この前の民主党の選挙である。郵政選挙の場合には論点を絞って「郵政民営化に賛成か反対か」ということで国会を解散し、「小さな政府、その象徴としての郵政民営化」と訴えて大勝した。しかし、私は本来はこのような問題は総選挙ではなくテーマを絞った国民投票にかけるべきだと思っている。

二つ目が前回民主党が大勝した選挙である。このとき民主党は浮動票を取り込むために二つの工夫をしている。一つは「マニフェスト」という党としても方針を方針を明確に打ち出すことである。これは本来政党がやるべきことなので評判が良かった。もう一つは「浮動票を買う」政策である。子供手当、高速道路無料化、農家の戸別補償などがこれに相当すると思う。この二本立てで民主党は大勝した。

しかし政権を取ってみると、「浮動票を買う」というのはコストに見合わず財政悪化があまりにもひどくなる、ということが見えてきたはずである。本来ならばマニフェストの中でこのような部分を見直すべきだと思う。

今日本では「政党の意見を聞いてどこに投票するかを決める」という層が増えており、国民の民主主義に対する意識は新しい段階に入っていると思う。浮動票というのは本来買えるようなものではないのに票を買うような政策を打ち出す政治家が一番未熟だと思う。それでも次回の選挙からマニフェストの内容で政党が選ばれるようになれば、日本の民主主義は新しい段階に入ると思う。

心配しているのは浮動票を買おうとする(バラマキ)公約が続くことと、「マニフェストを出すと後で苦しむから」とマニフェストを明確にしない方向に政党が戻ってしまうことである。


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4 コメント

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バラマキ4K政策 (盗人・メドベージェフ)
2011-02-24 15:37:14
集票のために小沢一郎らが考え出したとされるバラマキ4K政策。4Kとは、子ども手当て、高速道路無料、戸別補償、高校無償。
菅直人はマニフェストを実行すると言うが、財源がない。
国の借金である国債でまかなおうとするが、日本国債は格下げされた。菅直人は「疎い人」。
野党に望むことのは、バラマキ4K法案を廃案にすること。
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ばらまき 浮動票 マニフェスト (世田谷の一隅)
2011-02-25 14:33:57
浮動票と一括りにするのは却って論点が曖昧になります。一般国民の大多数といってもいいと思いますが、特定の政党を「強く支持」しているわけではない人でしょうか。

この人達が、現在、大多数を占め、その人達に気に入ってもらえるような施策をアピールしている限り、「刹那的な施策に終始」するのはやむを得ないし、それは最終的には、国民が享受すべき課題です。政治家につけを回そうとするのは責任逃れでしょう。

どんな浮ついた、国民におもねった政策でも、それが国民から支持されれば、あとはそれを選んだ国民の側の問題です。国外につけを回すわけにはいかないでしょうから。

私は、かつて或る企業で商品企画を担当したことがあります。その時に対象となった消費者の特徴は、CCDです。つまりcost conscious (価格に敏感), capricious (移り気)、demanding(何でもかんでも機能盛り沢山)です。供給側として、全部を満たす実現できません。どこかに絞らないと開発が発散し、商品化が進みません。最終的には、その商品投入で一定数量の販売が実現し「利益が上がり、次の商品開発の資金が確保できること」が決め手になります。

国民の政党に対する期待も同じ様なものと思っています。全部の層にアピールするのは無理として、どの様な施策を誰に訴え、実現するかです。その結果を判断するのは「次の選挙」です。(事業評価の場合の利潤に相当するものでしょう)。

マニフェストに書いてないからと言って、とやかく言うよりも、書いてないことは「優先順位が低い」、「書くと反感を買いそうなことを企てている」とみるべきでしょう。

だから私はマニフェストを守った、変更したとすぐマスコミに踊らされることなく、自分としての矜持を正して、自分が期待した施策(絞り込んでの)を実現してくれるかどうが私の場合の決め手です。マスコミの様に、「総合点」で評価するのはナンセンスですね。

私はマスコミ産業に身を置いたことがないので、門外漢だが、マスコミに従事している人は、何を生きがいにして、日々の行動、情報発信をしているのでしょう。三大新聞が標榜していた、「権力の監視役」だけでは、とても続きそうにないと思うのですが。(もはや、事実を正しく伝えるだけの存在ではないように感じます)。
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マスコミを良くしないと (ウィトラ)
2011-02-26 11:25:25
世田谷の一隅さん

このテーマに関しては基本的に賛成です。ですが、マニフェストに書いていないからととやかく言っているのはマスコミではなく小沢派だと私は思っています。自分たちの議論を正当化するためにマニフェストを引っ張り出しただけで政策でも何でもないと思います。

退陣した松木氏が「マニフェストにTPPのことが書いてなかったのにやった」などとばかげたことを言っていますが、民主党がマニフェストを作ったときにはTPPに対する態度を決めていなかっただけで「参加しない」とも毛めていなかったはずです。

マスコミには意見は無く、売れそうなことを言っている人の言葉を伝えているだけだと思います。

経団連会長が会派離脱を表明した16人の行動を「論外」と言い、解散ばかり言う自民党に対しても「真剣に国民のことを考えていない」という。こういう直接自分の利害とはつながらないところで国を思って発言する意見をマスコミに取り上げてほしいと思うのですが、逆に{TPPに参加すべき」という経団連会長なら当然いうであろう言葉ばかりを報道する傾向が強いと思います。

マスコミはITとネットの進歩で売り上げが下がって業界全体として苦しくなっている。だから国民の興味を引く「売れる」情報ばかりを流そうとする。「貧すれば鈍す」を体現しているのが現在の日本のマスコミだと思います。

松本清張の推理小説の主人公などに社会悪に立ち向かうジャーナリストが良く出ていましたが、今はそういう感じが無くなっています。売れる記事を書かないとすぐ切られるのだと思います。

アメリカも同様の傾向にありマスコミの質が下がっている。政府はそれを意識して何とかしないといけないと考えているように見えます。

マスコミの質が維持されていると思うのはイギリスです。イギリスはどうやっているのかを調べてみる必要があると思っています。
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Unknown (花のヤン)
2011-02-27 09:18:01
>退陣した松木氏が「マニフェストにTPPのことが書いてなかったのにやった」などとばかげたことを言っていますが、

あのう、これは党内で十分な意見調整をやっていないという意味じゃないでしょうか?たとえ党執行部とはいえ、加入してしまえば後戻りが難しいような重要な問題を独断で決めてしまっていいわけがないでしょう。
以前から菅首相は独断専行が目立っていましたので、日頃から不満が重なっていてここで堪忍袋の緒が切れたのだろうと思いますよ。おそらく、地方議会の民主党議員もこのような気持ちの人が多いでしょう。
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