ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

海上保安庁のビデオ流出に幕引き

2011-01-22 07:23:07 | 社会

尖閣列島の中国漁船衝突のビデオをインターネットに流出させた海上保安庁の保安官が起訴猶予処分になった。同時に釈放された中国人船長も起訴猶予となり、刑事事件としての本件の捜査は終了した。何か、うやむやのままに幕引きをした感じで「これで良いのか」という思いがある。

辞職した元保安官のコメントやインタビューが報道されているが、悩んだ末に、「これを闇から闇に葬り去ることはよくない」という判断のもとにネットに投稿したと言っている。結果として海上保安庁内での大問題になり、本人も失職したのだが、謝りつつも自分のやったことは必要だったという思いが伝わってくる感じがする。この元保安官にはある種のすがすがしさを感じる。

最初はそれほど極秘扱いされていなかったので比較的簡単にアクセスできた。それがある時から秘密資料になり、職員に秘密保持の義務を負わせる。その義務を破った職員を罰したわけだが、結果としてその資料を見てしまった国民に対して「なぜこれを秘密資料にしたのか」という説明は一切なされていない。決めた側は知らん顔で、流したことだけを非難して、世論の反発が強いとできるだけ早く幕引きをしようとする、政府や官僚の体質が表れている感じがする。

秘密にする判断をした人も「どうしたらよいか分からなかった」というのが本音で、隠さないといけないという信念はそれほどなかっただろうと私は想像している。その人の判断は法に触れるとかいう話は無いので純粋な判断力の問題である。

私は会社勤めをしているときに、ある情報を話すことによるメリットもあるが、おかしなリアクションが出るかもしれないというリスクを感じて迷うことは少なからずあった。私は「迷ったら話す」を自分のルールとしていた。相手を信用して情報を共有することのメリットの方が大きいはずだ、と思っていたからである。

世の中には「迷ったら話さない」を自分のルールにしている人は少なからずいる。そのほうがリスクが少ないからである。しかし、組織全体がそういう風土になってしまうと風通しが悪くなる。たまに失敗があっても「迷ったら話す」をルールにする人が多数派になるような組織風土を作っていかないといけないと思っている。

今回の問題に関して言うとこういうことを促すのはマスコミの役割だと思う。改めてマスコミの力不足を感じる。


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ビデオ流出 (世田谷の一隅)
2011-01-24 12:48:08
確かに、今回の幕切れは中途半端な印象を受ける。但し、「マスコミ」にその後の何らかの役割を期待するのは楽観的すぎると思う。日本のマスコミのほとんどは「なんでもニュースとして暴露されればいい」と考える連中が支配的。ユーチューブというメディアで開示されたことも、既存のマスコミの役割がなくなってしまって面白くないのであろう。

今回のポイントは「国益」とは何かであって、真実(とみられる事実も含め)を、ただ闇雲に報道したり、流せばいいというものではないと思う。今までは流すか流さないかを或る程度マスコミが判断していた。今回はその判断を政権側が目指した点で興味があった。

つまり、「国益」上で、何らかの制限を設けた方が良いと判断した場合は、政治的判断があってもいいと思う。(後年、その背景が開示されるとの前提で)。今回の場合で見ると、ビデオが存在することは既に政権中枢には知られており、その内容も把握できていたと思う。その上で(国益の観点から、釈放するし、開示しない)と判断したのであれば、それはそれなりの筋が通る。

ところが、開示しないことで、どのような国益が守られたのか? 中国側との交渉にどのように役に立てたのかが、良くわからない。説明どころか、沖縄地検の判断を「よし」として追認するのは、どうも、「国益」という観点では、ミスジャッジではないかと推定する。

国境上の争いや外交上の論争は、夫々の国民感情が控えていてヒステリックになりやすいので「正々堂々」が国益として良い選択かどうかは難しい。だから我々は3~4年に一度の選挙で、その信任を与えるか、もしくは交代させるかの権限を有するのだから、一旦、選択したのであれば、もう少し様子を見てもいいのではないか?

さて、需要な情報を開示するかしないかで迷った時には開示するとのウイトラさんの判断はなかなか面白い。賛成です。但し、その組織に、開示によって、「より広範な、多種の意見を聞いて、より正しい方向に進もう」との風土や上司がいないと、成り立たない話です。

よくある話で「俺だけには知らせろ、但し他には言うな」と要求する上司が多かった。
返信する

コメントを投稿