ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

中国主導のアジアインフラ投資銀行への世界の態度

2015-03-30 08:29:55 | 経済

中国主導のアジアインフラ投資銀行に対する世界各国の態度が割れていて、その裏にある本音が透けて見えるように感じている。最初、中国は東南アジアやインドを巻き込んでインフラ投資銀行を立ち上げようとしていた。しかし、世界規模にしたいと考え世界各国に参加を呼び掛けていた。最初は先進各国は様子を見ていた。中国主導の姿勢が明確でメリットがあるかどうかが分かりにくかったからである。

潮目が変わったのはイギリスが参加表明してからである。ドイツ、フランス、イタリアが参加表明をしてにわかに世界システムの様相を示してきた。韓国は迷った挙句に参加を表明した。日本も迷い始めており、参加したほうが良いという意見が強くなってきた。期限は3月いっぱいである。アメリカは最初に参加を表明したイギリスに対して不快感を示している。

仕組みでは世界銀行などに比べて透明性が低く、中国の優位性が明確らしいが、それだけ参加各国に対する負担は軽いものなのだろうと思う。それでイギリスの実利主義が、「透明性」といった正義感を上回ったのだと思う。参加しなければ情報は入ってこない。参加しておけばビジネスチャンスがあるかもしれない。運営が偏っていれば脱退すれば良い、あたりがイギリスの考えだと思う。

問題なのは韓国と日本である。アメリカとの軍事同盟の色彩が強く、アメリカの意向に反する行動は取りにくい。その一方で中国と地理的に近く、摩擦もあるが経済的結びつきは強い。韓国は迷った末参加を決めたが、日本はまだ判断できないでいる。この辺りに「アメリカからの独立」の程度に日本と韓国の差を感じる。

私はイギリス参加のニュースを聞いた時に「やるな」と感じた。無視することも可能だが、調査の結果無視できない大きな流れになると判断したのだろう。義務が大きくないのであればアメリカとの摩擦があっても参加したほうが得だと判断したのはイギリスらしい感じがする。ヨーロッパ主要国が参加したのも同じ理由だろう。日本も参加したほうが良いと私は感じている。

中国にとっては、アメリカに対抗できるだけに力を世界が認めている証であり、望ましいことだろう。その一方でうるさいのがたくさん入ってきたので好き勝手はできない状況になりそうで、進め方を内部で議論している最中だろう。アメリカ主導の体制で起こっていた中国側から見て理不尽と思われた意思決定は少なくとも覆すことができる。その一方で自国の利益だけを考えた行動は取りにくくなっている。最も歓迎しているのはインドや東南アジアなどの諸国だと思う。

始まってみないとどうなるかは分からないが、少なくとも中国は世界に金融システムを提案できるだけの大国になった。実際に提案を行った点が「Japan as No1」と言われた80年代の日本との違いだと思う。



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5 コメント

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AIIBとシルクロード構想はワンペア (UCS-301)
2015-03-30 22:46:50
アジアの開発途上国への投資目的の銀行としては同じような機関としてアジア開発銀行(ADB)があります。投資比率は日本15.65%、米国15.65%となっており、投資判断の基準がいろいろと厳しいということです。その穴を突いて提案されたのが今回のアジアインフラ投資銀行(AIIB)で、緩い基準と、今までADBに参画していなかった西欧諸国があやかろうとしているのが特徴かと思います。北京の大気汚染を例に挙げるまでもなく、(日本の基準で見ると)環境破壊する気満々のチャイナが世界的な投資銀行の主導権を握ると考えると気が遠くなります。チャイナの大気汚染の影響は九州北部に及んでいます。

西欧は地政学的に関係が薄いので、純粋にカネ儲けだけが目当てと割り切っています。西欧には大気汚染の影響もありません。ただし、明確な意図を持って参加しないと、チャイナに乗せられる羽目になります。”バスに乗り遅れるな”的に各国続々と参加表明していることが、チャイナに乗せられている何よりの証明です。日本のマスメディアも態とバスの発車時間を気にして見せています。

最近チャイナは”シルクロード構想”と称して新疆ウイグル自治区の開発を大々的に行っています。つまり、AIIB稼働の暁には投資者は体良く植民地支配に加担させられることになります。”シルクロード構想”の意味は、「我々(=中共)が東トルキスタンを好き勝手しますよ」という意味です。もちろんウイグル人が豊かになるわけではなく、新疆ウイグル自治区の中共支配が強まるだけです。

私は”中共の思い通りにさせない”のが目的ならば参加しても良いと考えます。この機会に民族弾圧を世界に知らしめるのも良いかも知れません。さもなくば、AIIBを脇目に見ながらADBに注力すべきです。日本は米国に追従するとだけ決めておき、梯子を外された時の対処も併せて考えておく(「あなた自身のせいで追従は弱まりましたよ」と対米発言する準備をしておく)くらいで良いのではないでしょうか。ウイグル人から強奪した土地と資源をネタにしたカネ儲けに加担し、しかも思った程儲けないという結果になった場合は最悪です。現時点では米国追従の方がより現実主義だと思います。日本の独立は程遠いということになりますが、韓国が独立しているとは到底思えません(事大主義という意味では相変わらずです)。日本は地政学的な見地に立てば、もちろんチャイナ(=中共)を太らせるべきではありません。
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AIIBの狙い (Instant Economist)
2015-03-31 00:38:54
AIIBの狙いは、輸出と外資導入によって積み上げられた4兆ドルの外貨準備を原資として、余剰となった鉄鋼、電解アルミ、鉄合金、コークス、自動車等の国内生産能力を、アジアのインフラ建設需要に向ける為とも言われています。中国は南沙諸島等で周辺国とつばぜり合いをしていますが、これで軍事力のみならず、アメとムチの構成をかける事ができますね。
シルクロード経済圏構想は、かつてのシルクロードが欧州とアジアをつなぐ重要な交易路だったことに着目し、鉄道、道路、送電網、港湾などのインフラ整備を中心に、地域経済統合の促進を狙うものですが、当然の事ながら、欧州としては黙っているわけにはいきませんね。この辺が、米国の反AIIBに同調しきれず欧州勢から崩れた理由でしょうか?
また、日米主導のADBのみならず、IMFやIDBなど米国主導の国際金融体制への中国の挑戦と見る人もいます。
いずれにせよ、中国経済が国際経済に与える影響力をまざまざと見せつけるような出来事ですね。
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認識は近いが評価は違う (ウィトラ)
2015-03-31 10:16:33
中国の狙いに対する認識はUSC-301とかなり近いですが、評価に関しては私は微妙に違っています。
公害問題にしても、社会が急激に成長するときにはある程度必然的に生じるもので、今の中国のPM2.5などの問題は、安価な石炭を大量に使っているから起きたことは明らかで、過去にも日本で起こったことです。何とかしたいという意思は中国政府に感じています。
問題は多々ありますが、これまでの中国政府は非常にうまくやってきたと私は思っています。共産党独裁がいつまでも続くとは思えませんが、現在の習近平の汚職撲滅が成功すればかなり長持ちするのではないかと思います。私心なく「国を良くしよう」という情熱に燃えて居るような人材を政治家として供給し続けることができるか、が国の体制を維持するうえでは最も大切で、今の日本ではそれが弱まっている感じがします。
国のトップに立てば「人類の全体利益」と「自国の利益」のバランスを取ることが重要です。先進国は他の国とうまくやるために「人類の利益」を前面に押し立てつつ「自国の利益」を確保することが重要なのですが、中国は発展途上国なのでいまだに「自国の利益」が前面に出すぎている感じはしますが、それなりに抑制は聞いていると思っています。
習近平政権が「人類の利益」を前面に押し出すように転換する転換点になるべきだし、その意志はあると私は思っています。気になるのは中国国内経済の動向で、国内景気が悪化してくると「人類の利益」などと言っておられなくなり、路線転換に失敗する、そうなると戦争の危機が生まれると思っています。今のロシアの状態がそれにかなり近い危ない状態だと思っています。
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習首席の印象 (UCS-301)
2015-04-02 23:54:11
ウィトラ様との評価の差はチャイナへの印象の差のようにも思います。訪中されたことのあるウィトラ様と訪中経験のない私の経験の差かも知れません。その上で私見を述べますと…。

私は習近平国家主席についてもクリーンな政治家と見做しておりません。共産主義政権下で個人と親族の資産が膨大であることと、太子党の党員が汚職で摘発されていないためです。親族はほとんど外国籍を持っていると言われていますので首席自らが”裸官”の一人であることは間違いありません。単純に、取り締まる側であるために取り締まられていないだけと考えるのが妥当ではないでしょうか。毛沢東以降の近現代史からも権力闘争、利権争いの末の粛清と見るとしっくりきます。チャイナにおいて賄賂や横領は普通のことで、その証拠に何万人という単位で汚職摘発されています。

あまりチャイナの悪口ばかりで気が引けるのですが、中共の上層部に『私心なく「国を良くしよう」という情熱に燃えて居るような人』は僅かでも残って居るでしょうか。共産党と意見を異にするあらゆる知識人は「文化大革命」を始めとする粛清で一掃され、それを逃れた人たちが日本や台湾へ脱出しているのは紛れもない事実です。

最後にAIIBの狙いの一つとしてですが、楼継偉財政相が「申請期限を過ぎても日米の参加を待つ」と表明しているということは、チャイナ国内の資金繰りが相当良くないのではないのでないかと思っています。
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クリーン度にも程度の差はある (ウィトラ)
2015-04-03 11:25:57
私も、習主席が完全にクリーンだとは思っていませんが、他の人よりはましなのだろうと思っています。蓄財は彼が小さいころに完了したのので後は無理をしていない、という感じかなと思っています。
それでも習近平はチャウシェスク、カダフィー、ウクライナのヤヌコビッチなどと比べればクリーンなのだろうと思っています。日本でも小渕優子が不正経理とか言われているがこれらの人とは全く次元が違うだろうと思います。
習近平の汚職撲滅活動が、権力闘争の一部であることは間違いないだろうと思いますが、自分たちも同じこと、あるいはそれ以上の汚職をしているのに、権力を握ったから相手側だけを暴露して追求しているわけではないだろう、と思っています。これは根拠のない想像ですが。
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