ウィトラのつぶやき

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70歳定年説

2011-04-16 12:05:57 | 社会

先日、イギリスのEconomistを読んでいたら、この会社の意見として70歳定年説を述べていた。ヨーロッパは2040年までに、アメリカは2050年までに定年を70歳に延長しないと、年金がもたない、しかしまだどこの政府も70歳定年説は打ち出していない、という趣旨である。

全体的に先進国では平均年齢の上昇と年金の不足が問題になっているから、定年の延長の動きが起こっている。根拠となる数字は私にはよく理解できなかったが、感覚的には理解できる。Economistは日本には言及していないが、ヨーロッパで2040年までなら日本では2030年までに導入しないといけないのではないか、ひょっとしたら2020年かもしれない、と思う。

私自身、もうすぐ60歳になるので年金をもらえる立場になる。私の同僚もどんどんそういう状態に入っている。貰えるものは勿論もらうつもりだが、まだ能力が無くなったわけではないのに、とも思っている。歳をとると体力的には衰えてきて肉体的にも瞬発力は落ちる。しかし、まだまだ新しいことは理解できるし覚えられるつもりである。私自身、ここ数年間で会社を辞めて生活が大きく変わったが、新しい生活環境に対応して新しいことをどんどん身につけたつもりでいる。おそらくそのまま会社にいたよりも新しいことを身につけているのではないだろうか。

仕事ができる人に対して、「定年だから」と言って辞めさせるのは合理的ではないし、会社のためにもならない、と思う。実際、60歳で会社を定年になっても何らかの形で働いている人は多い。そういう労働力は買いたたかれている感じを受けている。

定年を延長すると、若い人の仕事が無くなる、という議論もある。Economistはその議論に対して「女性の戦力化の時と同じ議論だ」と言っている。50年くらい前までは男性だけが働いて一家を養っていた。女性も働くようになると男性の職場を奪うという議論があったが、実際には女性の社会進出で今のヨーロッパ経済は回っており、女性が働いていなかったら大変なことになっていただろうと指摘している。

課題もいくつかある。まず、年功序列を辞めることである。今の日本で定年延長している会社も、逆年功序列、つまり仕事ぶりを評価するのではなく、ある一定年齢を過ぎたら報酬を下げる、という傾向がみられる。これでは年功序列の枠を出ていない。能力を含めた仕事ぶりで人事評価ができない会社は国際競争では脱落するだろう。

高齢者は個人差が大きいという問題もある。20歳の能力差と70歳の能力差では70歳の方が遥かに大きい。体力的にも頭脳的にも衰える人が出ることは間違いなく、こういう人は福祉で救っていくべきだろう。

色々課題はあるにしても私はEcomomistの70歳定年説に賛成で、日本は急ぐべきだと思う。

 


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1 コメント

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60歳定年、70歳定年 (世田谷の一隅)
2011-04-18 12:57:40
自分が定年近くになって「定年退職」に迫られると、「定年制度」を不条理に感ずることがあります。確かにその通りですが、一方で定年制度がないと、より若い人達の、昇進、活躍の機会が減ってしまいます。

だから、産業界も、官公庁でも「定年制度」を設けて新陳代謝を促しているのは、必ずしも不条理ではないでしょう。年功序列はけしからんとか、いう人は、その組織から飛び出て、自らをもっと評価してくれる組織に移ったり、場合によっては新組織を自ら作って活躍すれば済む話。

現に、定年の規定はあっても、組織としてもっと活躍してほしい人には、「役員」、「フェロー」等で待遇する制度もあります。最近では、再雇用により、そのまま企業に残るケースが非常に多いようです。それほどまでにして、その企業に残りたいということは、①他に出ることが冒険を伴い、リスクを避けたい。 ②他の組織での雇用は条件が低くなるので、暫くは。再雇用の道を選ぶ等の理由でしょう。

定年を契機に、その人の資質や能力が急速に低下するわけではないので、それでも、低下した待遇で、その組織に残るということは、組織の雇用者側から見ると ①組織として安く雇用できる。②組織としては、定年前の雇用は割高の面がみられます。

多くの組織では、既に「年功」だからと言って、昇進や昇給する局面は、特に中年過ぎでは殆どなくなっています。一方で、中年過ぎてからの転職というケースも依然として少ないです。つまり、中年以降(平均的に見ると)企業では中高年齢層の人的リソースは、費用面で高止まりのままです。

こんな状況で、定年を延長すれば、企業の人的効率が悪くなるばかりです(ウィトラさんの論調で行けば)それこそ国際競争力が低下します。

私は、一般的な組織構成員の場合、生活費をまかなう給与の昇給、昇格は40代半ばで停止させ、少なくとも、あとは歩合や賞与のみで上下する制度に移行するのが良いのではと思っています。

それで満足できない人は、その組織の外でどんどん活躍すればいいことであり、それまでに、十分な人的投資(教育訓練)と、回収(業績)をバランスさせるのが企業として望ましい姿ではないかと思っています。

もちろん、その場合、55歳や60歳の定年になって、残っても、さらに一段と報酬が下がります(雇用は守るとしても)。それでも、生活費総額が低下するので、暮らし自体は維持できると思います。

組織がこんな構成になれば、企業として、高齢者を抱えても、競争力は失われないし、残りたい人は残って、組織に自分の蓄積で貢献すればいいし、他に活躍の場があれば、それはそれで良い事でしょう。

定年間近の人をどうするかよりも、もっと大事な事は組織が全体として活性化できるかどうかだと思います。それが企業の成長戦略の根幹だと思います。

組織として、本当に必要な資質。能力であれば、その部分だけ「請負」の形で切出して、定年退職者に外注すれば済む話です。いずれにせよ70歳定年というのは、余りにも長すぎると思います。再雇用などで延長したとしても、60-70歳で提供できる多くの機能・サービスの「市場価値」は、もっともっと低いと感じています。

もちろん、公務員が怪しげな外郭団体などを作って、官公庁の仕事を外注の形で既得権化して、高級を維持したり、実質的な雇用延長を税金の形で展開するのは論外ですが。
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