ウィトラのつぶやき

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ノキアがノキア・シーメンスネットワークスを子会社化

2013-07-09 06:39:18 | 経済

最近、フィンランドのノキアがドイツのシーメンスとの合弁会社であるノキア・シーメンスネットワークス(以下、NSN)のシーメンスの持ち分を買い取って、完全子会社化したといって話題になっている。ノキアにとっては「安い買い物だ」ということで株価が上がり、シーメンスにとっては「お荷物を処分した」ということで株価が上がっている。

ノキアは数年前までは携帯電話の世界で断トツの世界一の会社だったが、スマートフォンに出遅れ、Androidに手を染めなかったことから見る見るうち見シェアを落とし今はSamsungに抜かれている。マイクロソフトと組んでウィンドウズフォンに賭けたが、それも芽が出ずここ数年はリストラを繰り返している。

NSNはノキアとシーメンスの合弁会社でノキアの連結会社で、モバイルインフラで世界3位の会社である。しかしここ数年間は赤字続きで、最近大規模なリストラを行ってやっと黒字転換した。こんな会社を業績悪化にあえぐノキアが買収してうまくいくものだろうか、と私はこのニュースを聞いた時に思った。買収金額は17億ユーロで2000億円強である。企業の価値から言えば安い買い物だというが、業績の悪いノキアが借金をして買ったのだから大変な決断である。

投資家は、NSNをいずれ上場すれば今回の費用くらいは軽く出るし、会社を売却しても利益が出ると踏んで株が上がってのだがROAのアナリストはそうは見ておらず、ノキアはNSNを育てていくつもりだろう、と見ている。私も同感である。

今、モバイルインフラの世界ではエリクソンがトップで中国の華為技術がそれを追い上げている。3位がNSN、4位がアルカテル・ルーセント(ALU)だがこの2社は業績が悪い。間もなく華為技術がエリクソンを抜くだろうと言われていたがそれは当分は実現しない情勢となった。それはアメリカ政府が、サーバーテロの話もあって、中国製の通信インフラ機器の購入を抑えるように業界に圧力を賭けているからである。

3位のNSNとALUでは大分対応が違っていて、NSNは上に出ようとしてモトローラのインフラ部門を買収したりして頑張っていたが、その分赤字が続いていた。4位のALUは無理をせず儲かる市場に注力することで、シェアは下がったが、利益は出るようになった(と言っても薄利である)。

良く考えてみると、NSNのモトローラ買収、それに続いてノキアの今回のシーメンスからの買収は成功する可能性が高いと私は思っている。それはアメリカ市場で中国勢が将来が見えなくなっているからである。中国勢が居ないとなると、エリクソンの存在が大きくなるが、アメリカはcdma2000方式が半分を占めている国であり、エリクソンはそのインフラをやっていない。アメリカでcdma2000をやっているのはALUである。NSNも元々はcdma2000をやっていなかったのだがモトローラを買収したことで手に入れた。

NSNはあまり強敵の居ないアメリカのcdma2000市場、具体的にはVerizon、Sprint向けの市場で大きなチャンスがあると思う。そして、最近のモバイルの新技術はアメリカ発である。これが、ノキアの将来に可能性を与えていると思う。

モトローラ買収の時にここまで読んでいたのなら大変なものだが、アメリカの中国排除は読みに無かった幸運だとしても、今回のノキアの決断は評価できる。赤字にあえぐ日本の電機業界も、こういった思い切った決断をしてほしいものだと思う。


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