真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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国際社会の現実が示す「ならずもの国家」

2024年02月07日 | 国際・政治

 イスラエル・パレスチナ戦争に、アメリカが直接介入を始めました。アメリカ軍がハマスと連帯して戦うイエメンのフーシその他の武装勢力へ報復攻撃を開始したのです。
 ヨルダンのアメリカ軍の拠点で、アメリカ兵3人が無人機による攻撃で死亡したことを理由に、すでにその6倍の死者を出す空爆を行った上、バイデン大統領は、「我々の対応はきょう始まった。今後も時と場所を選ばずに攻撃を継続する」と、”報復が数週間続く可能性”を示唆したというのです。
 でも、過去をふり返れば、イスラエルの不法行為がなければ、こういうことにはならなかったということを忘れてはならないと思います。 

 先日、国連のグテーレス事務総長は、ガザ地区のハマスとイスラエルの軍事衝突に関し、「何もない状況で急に起こったわけではない、パレスチナの人々は56年間、息のつまる占領下に置かれてきた。自分たちの土地を入植によって少しずつ失い、暴力に苦しんできた。経済は抑圧されてきた。人々は家を追われ、破壊されてきた」などと述べましたが、それが事実であることは、誰にも否定できないことだと思います。
 また、イスラエルによる空爆地上侵攻による襲撃が続くガザで「国際人道法違反」が見られると指摘したことも、国際司法裁判所(ICJ)が、イスラエルに対し暫定措置命令を発したことで、誤りとは言えないことが明らかになったと思います。
 さらに、グテーレス氏が安全保障理事会で、「どんな武力紛争でも民間人の保護が最重要だ」と語ったことも、国際法や道義・道徳に照らして当然のことだと思います。
 でも、イスラエルはグテーレス事務総長に対し辞任を要求したばかりでなく、国連関係者への査証発給停止を表明し、実際に、グリフィス事務次長(人道問題担当)へのビザ発給を拒否しているといいます。
 また、国連パレスチナ難民救済支援機関(UNRWA)の複数の職員が、ハマスによるイスラエルへの奇襲に関与した疑いがあるなどと言い出しました。そして、アメリカを中心とする西側諸国は、その事実が確認されていない”疑い”の段階で、資金拠出の一時停止を発表するという対応をしています。
 
 2月8日、朝日新聞は夕刊で、「暴力行為イスラエルの入植者制裁」と題し、下記の記事を掲載しました。
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区で深刻化する暴力行為について、米国務省は1日イスラエルの入植者4人に金融制裁を科すと発表した。「西岸地区の平和と安全、安定を脅かす特定の有害な活動について責任を負うように促す」と説明している。
 発表によると、4人はそれぞれ、車輛や建物に火を放ってパレスチナ市民を暴行するなどを指揮し、1人を死亡させた。パレスチナ人農業者とイスラエル人の活動家を石やこん棒で攻撃してけがを負わせた。パレスチナ人らに暴行する入植者グループを率いて、家を離れなければさらなる暴力をふるうと脅し、畑を焼き払って家屋を破壊した──といった行為に携わった。(ワシントン)
 でも、こうしたことは、ハマスのイスラエル襲撃後に始まったことではなく、グテーレス事務総長が言うように、56年間続いてきたのです。
 だから、イスラエルに対する非難が渦巻く国際社会に対し、イスラエルを支援するアメリカは、イスラエルを追い込むことなく、自らの立場を正当化するため、アメリカは、あたかもそうした不法行為を許さない民主的な国であるかのように装う必要に迫られたのだと思います。
 でも、アメリカ人が殺されたり、被害を受けたわけでもないのに、イスラエルの犯罪者に、いちいちアメリカが金融制裁を科すというのも、随分おかしな話だと思います。イスラエル人の犯罪は、イスラエルに裁かせるべきであり、イスラエルが裁かないのであれば、イスラエルという国に、国際社会が制裁を科すというのが、通常のあり方ではないかと思います。

 下記は、「君はパレスチナをしっているか」奈良本英佑(ほるぷ出版)に取り上げられている資料から、「国連安全保障理事会決議242号」と「二階堂官房長官談話」と「国連総会決議3236号」を抜萃しました。
 これらの資料は、当初、国際社会がイスラエルに対し、今よりはるかにまともな対応をしていたことを物語っていると思います。
  「国連安全保障理事会決議242号」は、イスラエル軍の撤退や、主権、領土の保全、および政治的独立平和に生存する権利の尊重など規定しています。
 また、日本も、田中内閣当時の「二階堂官房長官談話」で、この「国連安全保障理事会決議242号」支持し、パレスチナ人の自決権の尊重1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退、パレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利の承認尊重などを要求しています。
 また、「国連総会決議3236号」は、”追放され奪われた祖国と財産に復帰するパレスチナ人の固有の権利を再確認し、かつ、彼らの復帰を要請する”とか、”すべての国と国際機関に対して、国連憲章に基づき、自らの権利を回復するためのパレスチナ人民の闘争に支持を与えるように呼びかける”
”と明記しています。

 でも、現実は、こうした「決議」や「談話」は、ほとんど実行されることなく、ずるずるとイスラエルが望み、意図する方向に事態が進んきたのではないかと思います。それは、西側諸国を中心に多くの国が、アメリカの硬軟織り交ぜた巧みな政治的工作に丸め込まれて、イスラエルの「安保理決議」違反や「国連総会決議」違反を黙認してきたからだと思います。だからイスラエルは、いい気になって、本気でパレスチナの地からパレスチナ人を追放するという段階に進んできたのではないかと思います。
 ガザは、もう人が住める状態では無くなっているようです。戦争が終わっても、避難したガザのパレスチナ人は、もう戻ることはできない状態になっているということです。国外に逃れるしか道が残されていないということではないかと思います。そして、ヨルダン川西岸も徐々にガザと同じように潰されていく気配を感じます。
 それは、やはり、圧倒的な経済力と軍事力を誇り、世界中に基地を置くアメリカが、イスラエルを支えているからだと思います。イスラエルは、世界の頂点に立つアメリカにとっても、周辺地域を威圧するために極めて重要な中東に存在する国だからだと思います。

 
 2002年、当時のブッシュ大統領は、「米国国家安全保障戦略」で、イラク北朝鮮イランなど、アメリカの意向に従わない国に対し、「悪の枢軸」とか、「無法者政権(outlaw regime)」という言葉を使い、「」というレッテルをはって、国際世論を誘導する方針を示しました。
 でも、本当の「悪の枢軸」、「無法者政権(outlaw regime)」がどこであるかは、国際社会の歴史が示していると思います。
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                                                国連安全保障理事会決議242号

安全保障理事会は、中東における重大な事態について引続き憂慮を表明し……

一、憲章の諸原則を満たすためには、次の二原則の適用をふくむべき中東の公正かつ永続的平和の確立を必要とすることを確認する。
(Ⅰ)最近の紛争において占領された領土からのイスラエル軍隊の撤退。
(Ⅱ)あらゆる交戦権の主張ないし交戦状態の終結。ならびに同地域のすべての国の主権、領土保全および政治的独立。および武力による脅しまたは武力の行使を受けることなく安全な、かつ承認された境界の中で平和に生存する権利の尊重と確認。
二、さらに次の諸点の必要性を確認する。
 (a) 同地域における国際水路の航行の自由を保障すること。
 (b)難民問題を公正に解決すること。
 (c)この地域におけるすべての国家の領土不可侵と政治的独立の保障
(以下略)                                               (1967年11月22日)
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                        二階堂官房長官談話

一、我が国政府は、安全保障理事会決議242号の早急、かつ、全面実施による中東における公正、かつ、永続的平和の確立を常に希求し、関係各国および当事者の努力を要請しつづけ、また、いちはやくパレスチナ人の自決権に関する国連総会決議を支持してきた。
二、我が国政府は、中東紛争解決のために下記の諸原則が守られなければならないと考える。
(1)武力による領土の獲得および占領の許されざること。
(2)1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退が行われること。
(3)域内のすべての国の領土の保全と安全が尊重されねばならず、このための保障措置が取られるべきこと
(4)中東における公正、かつ、永続的平和実現に当ってパレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利が承認され、尊重されること。
三、わが国政府は、上記の諸原則にしたって、公正、かつ、永続的平和達成のためにあらゆる可能な努力が傾けられるよう要望する。わが国政府は、イスラエルによるアラブ領土の占領継続を遺憾とし、イスラエルが上記の原則にしたがうことを強く要望する。わが国政府としては、引き続き中東情勢を重大な関心を持って見守るとともに、今後の諸情勢の推移いかんによってはイスラエルに対する立場を再検討せざるを得ないだろう。
                                                      (1973年11月22日)
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                         国連総会決議3236号
 
「パレスチナ人民の権利を認める決議」
 総会は、パレスチナ問題を審議し、パレスチナ人民の代表であるパレスチナ解放機構の発言を聴取し、また、本件の討議中に行われた他の発言も聴取し、パレスチナ問題の公正な解決がいまだ達成されていないことを深く憂慮し、かつ、パレスチナ問題が依然として国際の平和と安全を脅かしていることを認め、パレスチナ人民は、国連憲章に基づき自決の権利を持つことを認め、パレスチナ人民がその固有の権利、とくにその自決権の行使を妨げられていることに重大な憂慮を表明し、憲章の目的と原則に従い、パレスチナ人民の自決権を確認する関連書決議を想起し、
一、以下の事項をふくむ、パレスチナにおけるパレスチナ人民の固有の権利を再確認する。
(a)外部から干渉されることのない自決の権利
(b)民族独立と主権の権利。
二、また、追放され奪われた祖国と財産に復帰するパレスチナ人の固有の権利を再確認し、かつ、彼らの復帰を要請する。
三、パレスチナ人民のこれら固有の権利の十分な尊重と実現は、パレスチナ問題の解決のため不可欠であることを強調する。
四、パレスチナ人が、中東における公正かつ永続的平和の達成のための主要当事者であることを承認する。
五、さらに国連憲章の目的と原則に基づくあらゆる手段により、その諸権利を回復するパレスチナ人民の権利を承認する。
六、すべての国と国際機関に対して、国連憲章に基づき、自らの権利を回復するためのパレスチナ人民の闘争に支持を与えるように呼びかける。以下略。
                                                       (1974年11月22日)

 


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