今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

今どきの大雨の理由:2021年8月

2021年08月13日 | お天気

梅雨末期のような停滞前線による大雨になっている。
夏の盛りに停滞前線が横たわるのは、冷夏以外では珍しい。
冷夏※と違うのは、この停滞前線の寿命が一週間程度と短いこと(”停滞”前線なので、他の前線よりはもともと長命)。
※:より正確には、停滞前線による冷夏は西日本。東日本(関東以北)の冷夏はオホーツク海高気圧(やませ)による。

停滞前線がなぜ発生したのかを過去の天気図からみると、
まず8月8日に日本に接近・上陸した台風9号・10号が日本に低圧部(周囲の空気が流入)をつくり、そのせいで北からの冷気を呼び込んだ結果、熱帯生まれの台風9号が9日に温帯低気圧(暖気と寒気のぶつかり合いで発生)に変質し、自らの力で前線を形成した(温帯低気圧は前面に温暖前線、後面に寒冷前線を形成)。

ただ温帯低気圧ならそれらの前線を引き連れて東に去っていってしまうのだが、
今回は、華南から暖かく湿った空気がどっと流入してきた結果、低気圧の置き土産として停滞前線が形成されたようだ。

その説明として、気象予報士のアンチョコの1つ、「相当温位予想図」を下に示す。
「相当温位」は大気状態の指標の1つだが説明が難しいので、ここでは「空気の暖かく湿った度合い」と思ってもらえばいい。
図は12日の9時に発表された36時間後の13日21時、すなわち本日夜9時の予想図。
ただし地上ではなく850hPa(上空約1500m)面の分布。

まず本州日本海側の東西に延びる等温位線の密集した帯が、停滞前線に相当(「前線」は空間的な幅のある”帯”)。
停滞前線の南側が暖かく湿った空気の流入域(矢羽根が風向・風速を示す)で、そこが大雨になる。
この構造は梅雨前線と同じで、まさに梅雨(末期)の再来状態。
12日現在、北陸に大雨が予想され、関東以北には予想されないのもこれでわかる(ただし流入域は毎日南北に変動するので、今後は太平洋側も油断できない)。

その暖湿な空気の出所は、華南の354K(単位は絶対温度のケルビン)である。
この流入が続く限り、停滞前線は活発で、しかも時々低気圧を発生させる(温暖前線と寒冷前線は低気圧によって作られるが、大規模な停滞前線は逆に低気圧を作る)。
なので停滞前線が横たわっている間は常に大雨(強雨+長雨=記録的短時間大雨情報、土砂災害、水害)に注意。
特に流入風の(斜めの)収束(合流)域で線状降水帯が発生する(→線状降水帯は”線状”が重要ではない)。
もっとも停滞前線自体(の南側)が広い線状降水帯といえる。

ちなみに関東の南方海上には330Kで囲まれた(中心部が324Kの)乾燥域があり(同じ緯度で華南との差30K=30℃は水蒸気量の少なさとみなせる)、その周囲の風は時計回りの循環になっている。
これが、太平洋高気圧(場所的に小笠原高気圧と言われていた)。
この夏の主役であるはずの高気圧、今は力が弱いが、実はこれ(850hPa面)より高層では健在で(この点が梅雨の時期と異なる)、停滞前線の上昇気流が地上高気圧のエネルギー源になる※ので、来週後半にはパワーを回復してくる模様。
※:隣り合った低気圧(停滞前線)と高気圧は、水平面では高気圧が暖かい風を送って低気圧を強化し、鉛直面では低気圧の上昇流が成層圏下で下降流の供給源となって下降流渦である高気圧を強化する場合がある(高気圧は下降流帯だから雲が発生せず天気がいい)。ただし上図によれば、太平洋高気圧からの風は停滞前線の強化には貢献していない。

それによって華南からの暖湿空気の流入域が狭められ、やがて閉じられて停滞前線が消滅する(梅雨前線だったら北上するが、そこが違う)。
ということまでがスーパーコンピュータを使った数値解析ですでに予想されている。

ただ、梅雨時より気温が高いため、空気の含有水分量が多いので、雨量は梅雨末期よりも多い可能性がある。
なのでこの数日間は、梅雨末期以上の警戒が必要。


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