博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『繍花大盗』

2006年06月10日 | 小説
古龍著・阿部敦子訳『陸小鳳伝奇二 繍花大盗』(早稲田出版、2006年5月)

第一巻の『金鵬王朝』に続き、こちらの方も読了しました。
今巻は「四本眉毛」の義侠・陸小鳳が、髭を生やした男性ながらいつも牡丹の花の刺繍をしており、刺繍針で敵の両目を刺してしまうという盗賊「繍花大盗」を追うという筋立てです。

この第二巻を読むまで『陸小鳳』シリーズは一巻読み切りの連作物だと思い込んでましたが、それはどうも誤解だったようです。まさか第二巻の後半になって第一巻での謎が明かされるとは思いもしませんでした(^^;) (ただ、その謎の種明かし自体は限りなく後付けくさいものですが……)他にも前巻を読んでないと何のこっちゃと思うような箇所があったり、またラストは第三巻『決戦前後』につながる形になっているので、基本的には前から順番に読んでいくべきシリーズなんでしょうね。
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『神雕剣侠』第1巻/『金鵬王朝』

2006年06月09日 | 小説
『神雕侠侶』の日本語訳本・『神雕剣侠』文庫版第1巻が発売になりました。全5巻で、毎月1巻ずつ刊行される予定です。

ドラマの日本語版DVDとのタイアップということで、オビには主役を演ずる黄暁明と劉亦菲の写真がバーンと載っております。徳間もようやく金庸物のタイアップにまともに取り組むようになったんですねえ。前作の『射英雄伝』の文庫版も一応ドラマ版とのタイアップということになってましたが、文庫版が刊行されたのはDVDの発売とCSでの放映からだいぶ後になってからですし。

しかしこうなると、原作本とドラマ版の訳題を『神雕侠侶』か『神雕剣侠』のどちらかに統一した方が良いような気がしますねえ……

で、『陸小鳳伝奇1 金鵬王朝』を読了しました。あらすじその他はサイト本館の方をご参照ください。

小学館文庫版を読んでから随分と時が経っているので、オチや細かい展開をすっかり忘れていていい具合に楽しめました。カッコいいキャラクターに、緻密に計算されているようで実は思いつきで展開させているようなストーリーと、古龍武侠小説の魅力を久々に味わわせていただきました(^^;) ここから一歩歯車が狂うと、『多情剣客無情剣』のような話の展開なんかあってないような作品とか(これはこれで楽しめましたが)、『聖白虎伝』のような破壊的な駄作が出来上がってしまうわけですね……
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『陸小鳳伝奇』届きました

2006年06月08日 | 小説
注文してた早稲田出版の『陸小鳳伝奇』1~2がやっとこさ手元に届きました。

第1巻の『金鵬王朝』は以前に小学館文庫で『陸小鳳伝奇』のタイトルで刊行されましたが、実はこちらの方は所々端折ってある抄訳版で、今回刊行の早稲田出版の方が完訳版とのこと。小学館文庫版の方は前に読んだとはいっても、丁度いい具合に内容を忘れてしまっているので、横着せずに1巻の方から読んでいくことにします。
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『山の郵便配達』

2006年06月07日 | 映画
『山の郵便配達』(原題:『那山 那人 那狗』、霍健起監督、劉(リィウ・イエ)主演、1999年、中国)

舞台は中国南方。主人公の青年(リィウ・イエ)は父親から郵便配達の仕事を引き継ぎ、初めて配達に出る日がやってきた。彼の暮らす地域は自動車がほとんど通れない険しい山岳地帯で、二泊三日かけて徒歩で担当区域を回らなければならない。はじめは主人公が飼い犬を引き連れて一人で出発する予定が、引退したはずの父親も息子と同行することになり……

実は今まで気になっていながら何となく見そびれていた作品なんですが、昨日のNHK-BS2での放映でやっとこさ見ることができました。放映を見ながら、何で今までこんな名作を見なかったのだろうとしみじみと後悔しました(^^;)

主人公の青年は、仕事柄家を留守にしがちな父親に何となくわだかまりがありましたが、父親とともに旅をすることで、少しずつそのわだかまりが解けていきます。父親の方も少しずつ息子のことを理解するようになり、また旅を通じて今までの人生を振り返ることになります。

主人公の青年は郵便配達の旅を通じて、都会に出たまま戻ってこない孫の帰りを待つ老婆、父親が密かに青年の結婚相手に見定めているらしい少数民族の娘さん、祖父のもとで働きながら、通信教育を受けて記者を目指す少年など、様々な人と出会います。

最後の記者を目指す少年は、通信教育の添削者からの推薦で奨学金を支給されて都会の学校に進学できることになりますが、この少年が老婆の孫のように都会に出たっきり故郷のことを忘れてしまうのか、それとも主人公の青年との約束を忘れず、記者として彼を取材するために故郷に戻ってて来るのか、興味がひかれるところです。
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『蘇東坡』

2006年06月05日 | 中国学書籍
林語堂著・合山究訳『蘇東坡』上・下(講談社学術文庫、1986年)

タイトル通り北宋の蘇東坡こと蘇軾の伝記で、講談社学術文庫創刊30周年を期に復刊されたものです。

単純に北宋の政治史と蘇東坡の生涯をなぞり、彼の詩作を紹介するだけでなく、彼が平生ヨガ(導引術のことか?)にはまっていたことや、東坡肉に代表されるような新しい料理・酒・医薬を創りだしたことなども詳しく記述している点が特徴です。

あとは杭州に赴任した時に風変わりな裁判をしたり、当時朝廷で実権を握っていた宣仁太后に気に入られていることをいいことに、中央から予算をふんだくって西湖の開浚作業などの土木工事を推し進めたりと、杭州時代の話がなかなかおもしろいです。この時期のエピソードだけで『包公案』ならぬ『蘇公案』というドラマができるかもしれません(^^;)

しかし蘇東坡が旧法党に属するせいか、政敵となる王安石の評価がちと辛すぎるように思います。極度に身なりに気を遣わなかった点などを考えると、人好きのしない変人だったのは確かなんでしょうが……

また、蘇東坡が恐妻家の友人をからかった詩の中で「獅子吼」という言葉を用いたので、以後、「獅子吼」がガミガミとうるさい妻を指す決まり文句となったというエピソードなんかも紹介されていますが、この話を読んでピンときたことがあります。ひょっとして『カンフー・ハッスル』で小龍女が獅子吼を使うのは、この話を踏まえているのでしょうか(^^;)
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『神雕侠侶』その6(完)

2006年06月04日 | 武侠ドラマ
(前回:その5

小龍女が十六年後の再会を約して楊過の前から姿を消して以後、楊過は神雕とともにさすらいの旅を続け、いつしか人々から「神雕大侠」と呼ばれるようになった。そして約束の十六年が経とうとしていた。郭靖の次女・郭襄はひょんなことから神雕大侠・楊過と出会うことになるが…… 楊過は果たして小龍女と再会を果たすことができるのか?そしてモンゴルの金輪国師との決戦の行方は……?

VCD版第40~48話まで見ました。
このパートの見所は何と言っても最終話付近の襄陽大戦です。郭靖・楊過らが広々とした戦場でモンゴル軍と敵味方入り乱れて戦う様は、さすがに20年以上前に制作されたアンディ・ラウ主演版とは段違いであります(笑) 楊過が編み出した黯然銷魂掌も、アンディ・ラウ版では楊過がまず手で顔を覆い隠して悲しみの情をもよおした後、おもむろに掌を突き出して敵にぶつけるというショボい演出になってましたが、今回のドラマではきっちりCGで処理されております。

ただ、戦闘シーン以外の場面がその割を食ってすっ飛ばし気味だったのは残念であります。ラストシーンも間尺の関係か、かなりおざなりでした…… 楊過が小龍女と見つめ合うシーンとか、谷底を駆け回るシーンとかを削っていけばもう少し何とかなったのではないかという気が(^^;)

【総括】

ついでにドラマの全編の総括をやっておきます。

配役面では、青年楊過、小龍女、郭靖、黄蓉、郭芙、郭襄、金輪国師など、少年時代の楊過を除いてそれほど違和感のあるキャラクターは無かったですね。

強いて不満点をあげるとすれば、黄薬師、欧陽鋒、柯鎮悪ら前作『射英雄伝』に登場した面子の配役の多くが変更されており、前作と同じ配役だったのが周伯通、魯有脚、曲霊風の娘、瑛姑らにとどまっているのが残念でした。壮年の郭靖、黄蓉を李亜鵬、周迅に演じてもらうのは無理があるとしても、その他の配役は何としても『射英雄伝』と揃えてもらいたかったところです。

小龍女役の劉亦菲は『天龍八部』に続いて神仙姐姐ぶりを発揮してましたが、黄暁明演ずる楊過と並ぶと、彼より年上に見えないのはちと苦しいところです。配役には不満がないので、できれば5年後か10年後ぐらいにもう一度小龍女役を演じてもらいたいところです。

脚本・演出面では、楊過や郭芙らの幼少時代のエピソードがバッサリ削られてしまったのは痛いです。その反面、楊過と小龍女がお花畑で戯れているシーンとか妙な場面がチョコチョコと目につき、こういうシーンを逐一削っていけば、もう1話分か2話分ぐらいの間尺は確保できたのではないかという気も……

あとは、今までの映画・ドラマ版では着ぐるみで処理されていた神雕がCGになっていたのはポイントが高いです。もっとも、パッと見でCGと分かる程度のクオリティなので、やはり5年後か10年後ぐらいに神雕をよりハイクオリティで再現したドラマ版の制作を期待したいところです。
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朝日土曜版『金瓶梅』特集

2006年06月04日 | ニュース
6月3日発行の『朝日新聞』土曜版『be on Saturday』で、『金瓶梅』が特集されていました。

http://www.be.asahi.com/20060603/W21/20060519TBEH0014A.html
http://www.be.asahi.com/20060603/W21/20060519TBEH0017A.html

『愛の旅人』という特集シリーズで『金瓶梅』を題材にするあたり、なかなかアレですが、(通常は普通の恋愛物を取り上げてます。ちなみは先週は『君の名は』を特集してました。)中国での『金瓶梅』出版事情や、武大と潘金蓮の子孫と称する人々がくらしているという村の様子などが取り上げられており、内容の方はまあまあ面白いです。
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『中国古代史論叢』三集

2006年06月02日 | 中国学書籍
『呂氏春秋』の講読会・一字千金の会の有志による論文集、『中国古代史論叢』三集が、東方書店と京都の高畑書店での取り扱いが決定したとのことです。筆者も「西周期における周新宮の役割」という論文を寄稿しておりますので、店頭で見掛けたら手に取ってやってくださいませ。

取り敢えず東方書店の注文ページを挙げておきますので、表紙やその他の所収論文はそちらでご確認ください。
http://www.toho-shoten.co.jp/kbook/JBookView.jsp?cbc=4990113144
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もしも『ダヴィンチコード』の作者が武侠小説家だったら……

2006年06月02日 | 雑記
以前『ダヴィンチコード』の原作を読んだ時に掲示板の方で披露したネタですが、当時の掲示板のログは既に消えてしまいましたし、何より私自身が気に入ってるネタなので、映画版公開を期にもう一度披露させていただきたいと思います(^^;)

『徽宗密碼』

北宋末期の皇帝にして偉大なる芸術家・徽宗の画に秘められた謎とは?
徽宗はなぜ執拗に殷周時代の青銅器を収集しようとしたのか?
北宋を滅ぼした金はなぜ徽宗父子を拉致し、彼の青銅器コレクションを持ち去ったのか?
元末の白蓮教の領袖・韓山童、韓林児父子はなぜ徽宗の子孫と称したのか?
武則天が中国唯一の女帝となることができたのはなぜか?
鄭和の大航海の真の目的とは?
現代中国の模範兵・雷鋒はなぜ若くして死なねばならなかったのか?
そして、太古の殷周革命に隠された謎とは?

すべての謎が、いま解き明かされる!

中国美術の研究者にしてカンフーマスターの主人公は助手の武女史とともに、『桃鳩図』など徽宗のものと伝えられる絵画を調査しているうちに、徽宗が「克殷九爵」と呼ばれる九つの爵を収集していたことをつきとめる。

「克殷九爵」とは、その昔周の武王が殷王朝を滅ぼした時に、周王室に伝わる九つの武功の型を器の内側に絵文字にして鋳込んだ爵で、(青銅器に鋳込まれた絵文字、いわゆる図像記号についてはこちらを参照。)このような強力な武功があったればこそ、周は強大な殷王朝を打ち倒すことができたのである。

その後「克殷九爵」は所在がわからなくなったが、北宋末になって北方の遼に対抗するための秘密兵器として徽宗が捜索させ、九つすべてを探してあてたが、爵に秘められた謎を解き明かす以前に金の侵略を受けることとなった。金は「克殷九爵」を手中に収めようとしたが、徽宗は金に拉致される以前に「克殷九爵」の手掛かりを自らの画の中に暗号として残し、徽宗の庶子が父の命により「克殷九爵」を持って民間に逃れた。その徽宗の遺児の子孫が何を隠そう韓山童・韓林児であった!彼ら父子は「克殷九爵」に秘められた武功、「克殷九功」を習得し、元末に紅巾の乱をおこした。しかし明の朱元璋が天下を統一した後、再び「克殷九爵」は所在が知れなくなった。

以来、永楽帝、乾隆帝、西太后、袁世凱、蒋介石、毛沢東ら歴代の権力者が「克殷九爵」を探し求める一方で、白蓮教の系譜に連なる秘密結社・天地会や青幇もその行方を追っていた。鄭和の大航海の真の目的は海外に流出したと噂された「克殷九爵」の捜索であった。若き模範兵・雷鋒も毛沢東の密命を受けて「克殷九爵」の捜索にあたっていたが、青幇の手の者によって軍事訓練中の事故に見せかけて謀殺されたのである。

そして現代……
首尾良く「克殷九爵」を収集した主人公に、青幇の魔の手が迫る!また九つの爵に秘められた「克殷九功」は周の武王の子孫でなければ真価を発揮できないことが明らかとなるが、(武則天は周の武王の子孫であっために「克殷九功」の真の力を発揮して皇帝の位につくことができたが、韓山童・韓林児父子は「克殷九功」を完全にはマスターすることができず、天子となることができなかった。)主人公の助手である武女史が実は武則天、ひいては周の武王の子孫であった!「克殷九爵」と武女史の身柄をめぐり、主人公と青幇の手練れとの血戦の幕が今まさに開かれようとしている!

……ここまで書いて、このネタは掲示板のログ消滅とともに封印しておいた方が良かったんじゃないかという気がしてきましたが、実際のところ、『ダヴィンチコード』もこのレベルの妄想をネタにした小説ですよね……
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