博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『シェバの女王』

2006年06月19日 | 世界史書籍
蔀勇造『シェバの女王』(山川出版社 ヒストリア・2006年5月)

『旧約聖書』でソロモン王と会見したことで知られるシェバ(シバ)の女王の伝説を追った本ですが、シェバの女王の国がどこにあったのかを追究しているのかと思いきや、それについては女王の国のモデルとなったと思われる王国は南アラビアもしくはエチオピア方面に存在したと思われるが、シェバの女王伝説の史実性を認めることは難しいということで片付けてしまいます。

史実性云々はさておき、シェバの女王伝説が後世のユダヤ教世界・イスラーム世界・キリスト教世界、あるいは女王の国のモデルのひとつと目されるエチオピアでどのように受容され、変化していったのか。これが実は本書の本題となります。特にエチオピアの部分では、『レイダース 失われたアーク』の題材となった、モーセの十戒の石版を収めていたとされる聖櫃(アーク)についても言及しています。

やや話が専門的で込み入った部分もありますが、シェバの女王がイスラーム世界・キリスト教世界では神の信仰を受け入れた聖女とされているのに対し、ユダヤ教世界では魔女とされているとか、エチオピアではその時々の政治的な事情に合わせて伝説が変化していったという指摘が面白いです。
コメント
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