トシの読書日記

読書備忘録

静寂にして過激

2009-01-13 16:44:06 | た行の作家
富岡多恵子「動物の葬禮・はつむかし」読了


作者自身による自選短篇集とのことで

「窓の向こうに動物が走る」
「動物の葬禮」
「はつむかし」
「魚の骨」
「立切れ」
「末黒野(すぐるの)」
「野施行(のせぎょう)」
「雪の仏の物語」
「花の風車(かじまやー)」
 
の9編が収められている。
最後の2編を除いて一貫しているのは「家族」「家庭」というテーマである。これは、どの小説家もこぞって取り上げるものではあるが、同作家の切り口は独特で、そういったテーマに実は自分はあまり興味がないのだけれども、思わず引き込まれて読み入ってしまう、そんな力強いものをこの作家は持っている。

過剰な修飾語を極力排した文章は一種そっけないほどではあるが、晴れ渡った冬空のようにきりりと冴えわたっている。

以前読んだ「波うつ土地・芻狗(すうく)」と同様、淡々とした文章でありながら実はものすごくラディカルな内容で、読む者の心臓の高鳴りを抑えることができない。

「丘に向かってひとは並ぶ」で初めて富岡多恵子を知って以来、同作家のとりこです。とにかくすごい作家です。

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