トシの読書日記

読書備忘録

軽やかな厚み

2008-08-28 18:09:28 | は行の作家
堀江敏幸「回送電車」読了

エッセイでもなく、評論でもない、いわゆる「散文」とでも呼べばいいのでしょうか。一つが5ページくらいの話を集めたものです。

読み始めて、これはつらい、とまず感じました。話が高尚すぎてついていけないんですね(笑)しかし、ここで挫折しては読書人の名折れとばかりに頑張りました。そのかいあってか、途中から非常に平易な話ばかりになって、これならいけると喜んだ次第です。何事も最初からあきらめてはいけないと、巷でよく言われる人生訓を地でいったようなものでした。

作中に、フランスの紙巻タバコの銘柄の表記に誤りがあり、それを敢えてそのまま載せ、(そのままにしたい理由があって)それを解説の杉本秀太郎氏がゆるやかに指摘したのを受けて、最後の「ながい追記として」と題したあとがきのようなものの中で、そのわけを書いている。

このあたりが堀江敏幸の真骨頂というか、面目躍如たるところですね。そこらあたりの堀江氏の心情は、私の拙い語彙ではうまく表現できません(笑)

「雪沼とその周辺」「いつか王子駅で」「めぐらし屋」を読んだときから感じていたんですが、やはり堀江敏幸、ただものではありません。

「回送電車」シリーズは、たしかもう1冊買ってあるので、是非共近いうちに読みます。

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