トシの読書日記

読書備忘録

個人主義とエゴイズム

2010-03-09 17:43:46 | な行の作家
夏目漱石「明暗」読了


自らの死によって未完の絶筆となった漱石最後の長編小説です。

なんだかすごいですね。昼ドラもかくやと思わせるような女同士の心理戦。思わずたじたじとなってしまいます。相当長い小説で(文庫で約600頁)しかも完結してないんですが、時間的にいうと、始めから終いまで、たかだか1ヶ月くらいの出来事です。


ただどうなんでしょうねぇ…この小説は、一般的にかなり評価の高い作品のように言われてますが、正直なところ、それほど?というのが自分の感想です。いかに自分に有利なように立ち回るかということばっかりに心を砕く人達。その先のものが見えてこないんです。何故津田が今のお延と結婚する前に付き合っていた清子のところへ会いに行かなければけないのか、そのはっきりとした理由が今ひとつ不明確なんですね。それは、吉川夫人が何故津田を清子に会わせたがるかということと同じなんですがね。


文庫本の裏表紙に「濃密な人間ドラマの中にエゴイズムのゆくすえを描いて」云々とありますが、ゆくすえってなんだよ!と突っ込みを入れたいくらいのもんであります。


これも自分の読み込みが浅いんでしょうかねぇ。残念でした。



さて、去年から何ヶ月か続いてきた夏目漱石の旅は、本作品をもってひとまず終了と致します。自分なりにこれで漱石コンプリートのつもりです。漱石をここ数ヶ月で13冊読んだわけですが、なんといっても№1は「行人(こうじん)」です。あとは「草枕」かな。


漱石の孫である、漫画批評家の夏目房乃介が書いた「孫が読む漱石」というのを買ってあるので、おまけで読んでみようと思ってます。とりあえずお疲れ様と自分に言っておきます(笑)

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