トシの読書日記

読書備忘録

艱難辛苦を乗り越えて

2016-11-22 15:41:26 | た行の作家



エイモス・チュツオーラ著 土屋哲訳「薬草まじない」読了


本書は岩波文庫より平成27年に発刊されたものです。以前、同作家の「やし酒飲み」という作品を読んで、あまりの面白さに飛び上がった覚えがあるんですが、姉が「相変わらずだよ」と言って貸してくれたのでした。


作品のシチュエーションは「やし酒飲み」とどこかしら似ているんですが、でもやっぱり面白い。神託を司祭する者たちの頭領の父をもつ「わたし」はその町の創始者であり、父の親友の娘、ローラと結婚することになる。


しかし、結婚したのはいいんですが、なかなか子宝に恵まれず、ついに「わたし」は<さい果ての町>に住んでいる<薬草まじない師>のところへ子供が必ず産まれるという薬草を調合したスープをもらいに旅に出る。


ここからがすごいんですね。まぁありとあらゆる魑魅魍魎、妖怪変化が現れ、「わたし」は勇猛果敢にもそれらと戦い、打ち負かし、ついに<さい果ての町>へたどり着くわけです。そして<女薬草まじない師>に調合してもらったスープを頂き、勇躍帰るんですが、途中、食べ物がなくなり、あまりのひもじさに、そのスープを少し飲んでしまいます。


何年もかかってやっと我が家へたどり着いた「わたし」は、さっそく妻にそのスープを飲ませます。そして3ヶ月もするとあらふしぎ、奥さんは懐妊します。ここまでだったらめでたしめでたしなんですが、それだけでは終わらないのがチュツオーラのすごいところで、なんと「わたし」も妊娠してしまうんですね。男が妊娠するという、神の摂理に反することが起こったということで、「わたし」は村人から嘲り、笑われます。


まぁ、結局最後はハッピーエンドなんですが、とにかく抱腹絶倒、面白いのなんの。巻末の解説では、このチュツオーラの文学性を、異民族に対する激しいバイオレンスとか、現代アフリカの問題点を主題として、奴隷的な主従関係とか、民族集団のしきたりを重んじた旧弊な世界とか、難しいことをおっしゃっていますが、自分としては素直にこのエンターテイメントを楽しめばいいのでは、と思うわけです。もちろんこれは大きい声では言えませんが。


とにかく面白かった。楽しめました。



コメントを投稿