アゴタ・クリストフ著 堀茂樹訳「第三の噓」読了
本書はハヤカワepi文庫より平成14年に発刊されたものです。「悪童日記」シリーズ、いよいよ完結編であります。がしかし、読んでいて「あれ?」と思うところがいくつも、というか、全体に前作からの整合性がなく、非常に戸惑いました。
リュカとクラウスがそれぞれの過去を回想しているんですが、前作のそれとは違う過去を生きてきたことになっているし、登場人物の一人、ぺテールは「ふたりの証拠」に出てくるぺテールとは明らかに別人だし、双子の二人の父と母も「悪童日記」のお父さんとお母さんとはどう考えても違うし…。
これはあれですね、タイトルから考えて「悪童日記」は第一の噓、「ふたりの証拠」は第二の噓ということなんでしょう。要するにこれは一つの物語を主人公達の成長に合わせて三つのバージョンで描いた、と理解する方向が正しいのでは、と思います。
1956年、ハンガリー動乱の折にスイスへ亡命した当時21才のアゴタ・クリストフの心中は、日本に生まれ、日本でしか暮らしたことのない自分にとってなかなか推し量れないものがあります。
最後の最後にちょっと肩すかしを食った感もなくはないですが、この三部作、全体を眺めてみると、祖国、愛、絶望など、深い深いテーマが流れている大作でありました。
感動しました。
ネットで以下の本を注文
北村薫・宮部みゆき選「とっておき名短篇」ちくま文庫
辻原登「籠の鸚鵡(おうむ)」
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