辻原登「抱擁」読了
大江続きでちょっと軽めのものをと思って手に取ったんですが、なかなかどうして、読ませる作品でありました。
いわゆる幽霊譚といわれる話なんですが、昭和の始め、日本有数の華族である前田候爵家に仕えた小間使のモノローグという形式でストーリーは展開していきます。前田家の二女、緑子の世話をする主人公が、ある時緑子の様子がおかしいのに気づく。他に誰もいないのにそこに誰かがいるようなふるまいを見せるわけです。前に小間使だったゆきのという女性がいて、その夫が2・26事件の首謀者の一人ということで処刑され、ゆきのは後を追って自殺したという過去があり、緑子の見ているのは、そのゆきのの亡霊ではないかということがわかってきます。そして話は意外な方向へ展開を見せ始めます。
いやぁ構成が緻密ですね。寸分のすきもないゴチック様式の建造物を見せられたような気分です。しかし最後の一行、緑子が主人公にささやく言葉、「さよなら、ゆきの」。これでわからなくなりました。緑子は主人公の中にゆきのを見ていたのか?どうなんでしょう。謎は深まるばかりです。
いずれにせよ、たまにはこういった完璧に仕上げられた作品を読むのもいいもんです。
書店で以下の本を購入
大江健三郎「空の怪物アグイー」
大江続きでちょっと軽めのものをと思って手に取ったんですが、なかなかどうして、読ませる作品でありました。
いわゆる幽霊譚といわれる話なんですが、昭和の始め、日本有数の華族である前田候爵家に仕えた小間使のモノローグという形式でストーリーは展開していきます。前田家の二女、緑子の世話をする主人公が、ある時緑子の様子がおかしいのに気づく。他に誰もいないのにそこに誰かがいるようなふるまいを見せるわけです。前に小間使だったゆきのという女性がいて、その夫が2・26事件の首謀者の一人ということで処刑され、ゆきのは後を追って自殺したという過去があり、緑子の見ているのは、そのゆきのの亡霊ではないかということがわかってきます。そして話は意外な方向へ展開を見せ始めます。
いやぁ構成が緻密ですね。寸分のすきもないゴチック様式の建造物を見せられたような気分です。しかし最後の一行、緑子が主人公にささやく言葉、「さよなら、ゆきの」。これでわからなくなりました。緑子は主人公の中にゆきのを見ていたのか?どうなんでしょう。謎は深まるばかりです。
いずれにせよ、たまにはこういった完璧に仕上げられた作品を読むのもいいもんです。
書店で以下の本を購入
大江健三郎「空の怪物アグイー」
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