庄野潤三「プールサイド小景・静物」読了
古本評論家でライターの岡崎武志氏がこよなく愛する庄野潤三ですが、自分も岡崎氏に触発されて「夕べの雲」「ガンビア滞在記」等を読んだものでした。しかし、庄野潤三の代表作であり、芥川賞受賞作でもある「プールサイド小景」、これをはずしておりました。
この「プールサイド小景」は昭和29年12月号の「群像」に発表され、翌年、芥川賞を受賞したとのことです。本作品を始め、7編の短編が編まれているわけですが、いずれも昭和25年~35年と、初期の短編集ということが言えると思います。
一読、驚きましたね。晩年の庄野の作品は、小説というよりほとんどエッセイというか、日記のような体裁になっているわけですが、本作品集の中の、例えば「イタリア風」「静物」などは、ただ事実というか、エピソードだけをたんたんと書き連ねていったもので、初期の頃から一貫して変わらない、こういう作風だったんですね。ここに男と女の心象の機微とか、人生いかに生くべきかといったような重いテーマは介在しておりません。これは文学としてどうなのか、といった思いが自ずと湧いてきます。
が、しかし、それが庄野の作品なんですね。これに異論をとなえるものではありません。むしろ、それだからこそ、そこに深い余韻が生まれ、本を閉じたあと、なんともいえないおだやかな気持ちに包まれるわけです。
いや、いいものを読ませて頂きました。庄野氏、また岡崎氏に感謝です。
古本評論家でライターの岡崎武志氏がこよなく愛する庄野潤三ですが、自分も岡崎氏に触発されて「夕べの雲」「ガンビア滞在記」等を読んだものでした。しかし、庄野潤三の代表作であり、芥川賞受賞作でもある「プールサイド小景」、これをはずしておりました。
この「プールサイド小景」は昭和29年12月号の「群像」に発表され、翌年、芥川賞を受賞したとのことです。本作品を始め、7編の短編が編まれているわけですが、いずれも昭和25年~35年と、初期の短編集ということが言えると思います。
一読、驚きましたね。晩年の庄野の作品は、小説というよりほとんどエッセイというか、日記のような体裁になっているわけですが、本作品集の中の、例えば「イタリア風」「静物」などは、ただ事実というか、エピソードだけをたんたんと書き連ねていったもので、初期の頃から一貫して変わらない、こういう作風だったんですね。ここに男と女の心象の機微とか、人生いかに生くべきかといったような重いテーマは介在しておりません。これは文学としてどうなのか、といった思いが自ずと湧いてきます。
が、しかし、それが庄野の作品なんですね。これに異論をとなえるものではありません。むしろ、それだからこそ、そこに深い余韻が生まれ、本を閉じたあと、なんともいえないおだやかな気持ちに包まれるわけです。
いや、いいものを読ませて頂きました。庄野氏、また岡崎氏に感謝です。
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