トシの読書日記

読書備忘録

プロレタリア文学の可能性

2017-07-18 18:11:47 | あ行の作家


先週はなんやかやとありまして更新できませんでした。


安部ヨリミ「スフィンクスは笑う」読了



本書は平成24年に講談社文芸文庫より発刊されたものです。誰あろう、安部公房の御母堂であります。先日、安部公房の「飛ぶ男」を読み終え、そういえばと書棚を探して本書を見つけたのでした。安部ヨリミ、生涯唯一の小説とのこと。


主人公の道子は恋愛至上主義というか、とにかく夫の兼輔を愛することで自分の存在を確かめているところのあるような女です。その道子の幼なじみの安子、そして道子の兄、一郎、これらの人物が織り成す愛憎劇といった作品です。


夫の兼輔が、かつては安子を愛していて、それを捨てて自分と結婚したことを知った道子は兼輔に詰め寄るわけですが、兼輔はそれを認めたうえで今は道子しか愛していないと釈明します。そして安子が行方不明になったとの知らせを受け、道子は東京から北海道へと行きます。


このあたりから話は、兄の一郎を巻き込んだ愛憎劇へと発展していくんですが、この辺のくだりは、タイトルは忘れましたが、夏目漱石の小説にもこんな話があったなと思い出しました。


無事、安子はみつかるんですが、しかし後半、安子が野田という男と駆け落ちし、北海道で暮らす場面、まぁすごいですね。凄惨な生活です。このあたりがプロレタリア文学と言われる所以でしょうか。


特に深い感動を受けたわけでもないんですが、なんというか、安部ヨリミの気迫がそくそくと迫ってくるような文章で、圧倒されました。



先日、久しぶりに名古屋 栄へ行き、買い物をしたあと、丸善で以下の本を購入


野坂昭如「とむらい師たち―野坂昭如ベストコレクション」河出文庫
久生十蘭「十蘭錬金術」河出文庫
辻原登「Yの木」文藝春秋社
丸谷才一「エホバの顔を避けて」河出書房新社
丸谷才一「彼方へ」河出書房新社
諏訪哲史「偏愛蔵書室」国書刊行会

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