トシの読書日記

読書備忘録

歴史の中へ踏み込む

2010-09-20 16:13:06 | か行の作家
小林信彦「昭和が遠くなって~本音を申せば③」読了



週刊文春に連載されているエッセイを1年分まとめたものです。


小林信彦といえば、僕の記憶の中では「オヨヨ大統領」シリーズ、「唐獅子株式会社」等、その時の時代を揶揄した、シニカルな小説の著者であるわけですが、もちろん最近の小説も知っています。同作家の小説(単行本)は、何故かブックオフによく並んでいます。


小林信彦は、昭和7年の生まれといいますから、僕より24も歳が上なんですね。もう少し若いと思ってました。でも、僕は30歳の人と話するより、78歳の小林信彦との方が話が合う気がします(笑)


この小林信彦の感性というか、何が大事で何がそうでないか、というものが、読んでいてすごく共感できるし、リスペクトできるんですね。僕が今現在、最高の映画監督はクリント・イーストウッドであると思っているところも同じだし(笑)


本書は、シリーズ3冊目ということらしいので、これは1冊目から読まなくてはと思った次第です。

疾走する呪縛

2010-09-20 15:55:38 | は行の作家
古川日出男「ハル、ハル、ハル」読了



3年前に出た単行本が、文庫になって出てたので買ってみました。


ずっと前、同作家の「ラブ」という長編を読んだんですが、なかなか面白いと思ったものの、ちょっと意味がよくわからなくて当惑した覚えがあったんです。でも、気になる作家ではあるので、また読んでみたのでした。「ポスト村上春樹」なんて言われてるしね。


で、これも前回の山崎ナオコーラ同様、ちょっと肩すかしをくらいましたね。わけがわからないってことは全然ないんですが、つまんないなぁ。


表題作のほかに「スローモーション」「8ドッグズ」の3編を収めた短編集なんですが、どれもこれもうすっぺらい感じで、なんだかなぁって感じでした。


「ハル、ハル、ハル」というのは、13歳の中学生、藤村晴臣、16歳の家出少女、大坪三葉瑠、41歳のタクシー運転手、原田悟の3人の物語で、名前に全てハルがあるという、それがタイトルになっているようです。(3人目の原田悟は、原田の「ハ」と悟の「ル」ということだそうです)晴臣と三葉瑠が夜の新宿公園で偶然出会い、原田悟の運転するタクシーに乗り、拳銃を突きつけて脅し、千葉県の犬吠埼へ行くという話なんですが、読んでいて何も伝わってこないんですねぇ。文体にスピード感もあって、読点を極端に少なくした文章も、それに拍車をかける感じで、それはまぁいいんですが、ストーリーがね。ちょっとね。


二つ続けてハズレでした。残念です。

14歳の「少女」と25歳の「女」を取り巻く世界

2010-09-20 15:46:06 | や行の作家
山崎ナオコーラ「浮世でランチ」読了



「人のセックスを笑うな」で衝撃的なデビューを果たした本作家の第二作目です。以前、「人のセックス――」は、本屋で立ち読みをして、30分くらいで読んでしまって、なんだかなぁという思いしか残らなかったんですが、この作家、妙に気になっていて、次こそ面白い小説を書いてくれるんじゃないかと、期待して読んでみたのでした。

がしかし…やっぱり本作品も「なんだかなぁ」でしたね。14歳の中学生、丸山君枝と11年後の25歳でOLの丸山君枝が交互に平行して描かれています。

まぁどちらもいろいろな(特に対人関係で)悩みを抱えて生きていくわけですが、どうにもねぇ…

軽すぎるんですね。あまりにも軽い。こういった小説がぴったりくる人は、もちろんいるとは思うんですが、そういう人とはお友達になりたくありません(笑)



山崎ナオコーラ、自分とは無縁の世界で生きてる人なんだということがわかったのが収穫でした。残念。

民話を昇華させる力

2010-09-20 15:29:19 | ま行の作家
ガブリエル・ガルシア・マルケス著 鼓直/木村栄一訳「エレンディラ」読了



コロンビアのノーベル賞作家、マルケスの短編集です。本書は、本作家の代表作である「百年の孤独」と「族長の秋」との間に執筆されたということです。

マルケスに関しては、苦い思い出があります。何年前だったか、マルケスがノーベル文学賞を受賞した際、代表作である長編「百年の孤独」を読もうとしたんですが、あまりの難解さに三分の一くらいで匙を投げたんです。南米のブエンディーアという一族の興亡を描いた大作なんですが、親と子が全く同じ名前だったり、突然何の脈絡もなしに場面が変わったりと、とてもついていけませんでした。


なので、姉から本書を薦められたときも、「え~マルケス~?」と尻込みしたんですが、「とにかく面白いから」と言われてこわごわ読んでみたんです。


で、なかなか面白かったです。マルケス独特の世界観はそのままに、「百年――」よりもずっと読みやすく、わかりやすい話ばかりでした。
というか、着想が奇想天外ですごいですねぇ。思わず笑ってしまう場面もあったりして。

話の題材が、南米に古くから伝わる民話を元にしているようで、それをじっくり読ませる小説に仕立て上げるところ、さすがです。ちなみに表題の「エレンディラ」というのは本書に収められている中編「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」(長い!)から取られています。


マルケス、ちょっと見方が変わりました。しかし、それでも「百年の孤独」は読む気になれませんが(笑)