全国で唯一防災教育を行う学科のある兵庫県立舞子高等学校を視察しました。全21クラスのうち、防災教育を行う環境防災科が各学年1クラスあります。同校は、昭和49年に開校しました。開校当初は普通科のみを有する高等学校でしたが、平成14年に環境防災科を設置しました。
兵庫県内小中高等学校では、平成7年の阪神淡路大震災後、命の大切さ、助け合いの尊さなどを教育現場で伝える取り組みをしてきました。それを発展させ、本格的な防災のリーダー、地域のリーダーを育てる学科として環境防災科が同校に設置をされることになりました。
1クラス40名で、男女共学。進路にどのように結びつくのかがはっきりしないことが理由で、定員に満たない応募の時期がありましたが、ここ数年は1.5倍程度の学科となっています。
環境防災科は、自然環境と社会環境から防災を考え、震災の教訓を語りついでいくことを目的としています。授業は、体験型を基本として外に出ることが多く、募金活動、消防学校での訓練、東日本災害復興支援ボランティア、小学校における防災出前講座、各地域での防災訓練の参加、各地の災害ボランティアなどの参加を行っています。
カリキュラムは手作りで、大学の先生など7人の運営協議会により決定をされています。この方式により、より時期にかなった内容を授業に盛り込むことがでします。例えば、先日の鬼怒川の決壊についても授業ですでに取り入れています。
また、被災後の復興についても、学習のテーマに挙げています。ハード面を一機に整備した場所と住民主導の合意をもとに時間かけてまちづくりをした場所を比べどちらが人がいつくのかを現実をもとに比較し学んだことを聞きました。
国際交流が盛んで、ネパール、インドネシア、スリランカと定期的な交流をしています。また、JIKA研修の受け皿にもなり、毎年10名~20名の受け入れをしています。また、3.11で世界中から支援を受けたことから、海外で起きた大災害への支援にも参加しています。募金を募り、中国四川に行き、現地の学校に寄付をしています。
東日本大震災を契機として、東松島市と交流を行っています。毎年、クラス単位で現地をおとづれ交流を結んでいます。また、防災ジュニアリーダー育成事業として、防災合宿の受け入れ行っており、全国的な防災交流の輪が広がっています。環境防災科の設置後10年が経過し、これまでの蓄積を通して、舞子高校のみならず全国の高校へその防災教育を広げていくことに今後は力を注ぐとのことです。また、ここにきて、宮城県内に防災科学科設置が誕生することから、連携し進んでいくとのことでした。また、大学の中には、防災関係の学科を新設するケースもあり、同校を推薦指定校とした大学もでてきています。
卒業生の進路は、消防士、警察官、自衛隊などの公務員の他、大学に進学し防災教育による知識をもとに海外で防災教育を支援する団体を立ち上げたり、青年海外協力隊のメンバーとして活躍している人、教育の道に進み防災教育の知識を生かしている人など、さまざまな分野で活躍しており、防災教育を視点に世界規模で活躍している点ではスケールの大きさを感じます。防災教育には、責任感あふれる人間性を育む力、生命の尊さを感じさせる力など、大変重要な要素が含まれていることが感じられ、多くの教育現場にいかされることが望まれます。その点では、舞子高校の取り組みが具体的な事例として全国に広がることを期待したいと思います。
かまどベンチ、防災甲子園に出品された作品をつくってもらい、校内に置いています。
屋上には、太陽光パネルが設置され、校内で使用する電気の一部を賄っています。