町田市議会議員 山下てつや “獅子奮迅”

てつやではたらく“山下てつや”が日々の活動や出来事、お知らせしたいことを報告します。

村上市瀬波バイオマスエネルギープラント、瀬波南国フルーツ農園を視察

2015年11月09日 | 活動日誌

山下てつやです。先週に引き続き、行政視察を行っています。今日は、新潟県村上市に来ました。視察先は、株式会社開成が取り組んでいる瀬波バイオマスエネルギープラント、瀬波南国フルーツ農園です。

同社が取り組む循環型農業システムでは、近隣の温泉旅館など観光施設、スーパーなどから排出される生ごみ、農業・畜産などにおける廃棄物、下水汚泥などを地域資源として同社の瀬波バイオマスエネルギープラントに投入。発酵処理によりメタンガスを抽出、生成されたメタンガスによる発電を行い売電、発電の際の発生する温熱を温水ハウスの熱源として利用し、発酵残渣は堆肥として農業利用しています。これにより、農産物販売による収益に加え、廃棄物処理による収益、売電による収益、堆肥製造による収益を確保しています。

同社では、従来、米穀、農産加工品製造販売、独自商品の販売を手掛けていましたが、4年前よりバイオマスプラントの整備により循環型農業システムの導入を始めました。きっかけとなったのは、堆肥の調達であるとの説明を受けました。

堆肥の調達というのは、バイオガスプラントから発生する発酵残渣を活用し、水稲栽培の肥料とすることです。この発酵残渣の特徴は、一般には窒素分、塩分が高く、農家によっては、土壌に悪影響を与えるとの認識持つケースがあり、使用に慎重な声がありますが、その特性をわきまえ、化学肥料と調整して堆肥とすることで、その分堆肥のコストを減らすことが可能となり、現在、約3割程度堆肥のコスト削減につながっているとのことです。また、洗剤、無機物など、発酵や堆肥に不向きなものが入らないよう受け入れる廃棄物の選別を行い、また、搬入の際には手選別により異物混入を防いでいます。

廃棄物処理では、主に、温泉組合、スーパーなどの食品廃棄物、下水汚泥の処理を行なっています。畜産系の糞尿については、処理費を支払って処分をする畜産農家がないことから受け入れをはしていない。

廃棄物処理においては、産廃では運搬、処理、一般では処分の許可得ています。旅館の生ごみは、一般廃棄物の事業系ごみとして受け入れています。また、同社における食品廃棄物リサイクルの取り組みは食品リサイクル法における食品リサイクルループの認定をうけています。食品リサイクルプールとは食品リサイクル法に基づく再生利用計画への取り組みで、地域で取り組む循環型モデルのこと。食品工場や店舗で排出された食品残さを、再生事業者などを通じてリサイクルされ、飼料・肥料となって農家に運ばれます。その飼・肥料を使って育てられた農畜産物が工場や店舗に運ばれるという無駄のない理想的な再生利用計画です。認定されると、特例として、一般廃棄物にかかわる廃棄物処理法の収集運搬の許可が不要となります。

瀬波バイオマスエネルギープラントの施設概要は、以下の通りです。処理量4.9t/日、処理方式乾式メタン発酵、受入資源は有機物全般、発電量は600~3000kWh/日で、建設費は、約2億円です。また、施設建設にあたり、同社では、一切補助金を受けませんでした。この理由としては、できるだけ無駄のない、そして、建設費を抑えたものにするために、独自のシステムを追求したためと思われます。

同社をモデルとするバイオマス事業の投資回収は、早ければ5年、平均で7~8年、長いと12年前後となるとしています。事業としての可能性調査については、FS調査を推奨しており、同社では、この事業への取り組み以前に、村上市において瀬波温泉の温泉熱を利用した温室ハウス及びバイオマス発電事業化調査を行った際に、地域資源を有効活用する基礎データや法規関連の情報収集及び分析を行っています。これにより詳細な事業収支の算定を行い温泉熱活用温室ハウス及びバイオマス発電事業化計画を策定。H21年に地域資源利活用温室ハウスを2棟建設し、南国果樹栽培を開始しました。

H24年には瀬波バイオマスエネルギープラントを竣工、運転を開始、同年、プラント余熱を温室ハウスに供給開始。また、同年6月にはバイオマス肥料による農作物の作付開始し、10月に電力会社と系統連係を行い送電を開始しました。6次産業化にも力を注ぎ、温室栽培で収穫された南国果樹をジェラートにするなどしています。H25年、中央政府農業白書に、6次産業及びバイオマス活用事例として掲載されています。

町田市おける生ごみパイオガス化事業との違いは、規模的な違い(町田市においては処理量50t/日)以外に、大きな点として以下があげられます。まず、第一に、メタンガス抽出後の残渣(発酵消化液)が堆肥として使用される点が大きな違いです。同社では、堆肥として活用するにあたり、プラントに受け入れる廃棄物を具体的に把握し、ごみの質が保たれるようにしています。そのため、堆肥に不向きな有害物質が入りにくい環境を維持することが可能となっています。また、食品残渣を利用した堆肥を敬遠する原因として認識されているとおり、排出される堆肥は、窒素分、塩分が高くなる傾向にありますが、同社では、自社利用することで、その特徴を活かしてます。堆肥を利用する際、成分、また、土壌の状況を把握し、その上で必要な肥料を加え、土壌改良を行っています。

この残渣の利用は、町田市にとっては大きな課題ではありますが、今回の視察では、この堆肥を有効活用することの意義は大きいとの認識を改めて確認することができました。また、活用するには、受け入れる廃棄物の制限を設けること、また、土壌改良財として使用する際に必要な処置をすることが上げられます。町田市では、計画段階において、都市ごみという特性から、受け入れる生ごみを制限できないとし、農業利用については、難しいと判断しています。そのため、残渣については100%助燃剤として使用する方針ですが、今後、時間をかけ、堆肥化を研究してもよいのではないかと考えます。

残渣の量はバイオマスプラントの規模では、同社の10倍程度にはなると考えられ、肥料に有効な成分が多く含まれていることが想定されますが、ここから肥料の原料となる成分を回収することが可能であれば、都市部における新たな堆肥化への仕組みを確立できる可能性があると考えられ、生ごみのリサイクルが進むことなり、都市部の循環型農業のシステム構築への期待が高まります。

瀬波南国フルーツ園内にて

 

 最近では、もみ殻に液肥を混ぜて使用し、有効活用しています。断熱効果もあります。

ハウス内に設置されているバイオガスによる発電機

廃棄物処理施設

搬入口、左側が食品廃棄物の受入口、右側が下水汚泥受入口

食品廃棄物投入の際は、異物を手選別にて除去しています

下がメタン発酵槽、上がガスホルダー

バイオガスを生成過程にある脱硫塔

収穫された南国フルーツを使ったジェラート販売

 同社で販売している製品、6次産業化に力を注いでいます

バイオマスを活用した農業6次産業化としても注目されています