パスが思うようにできるようになったらバレーボールがうまくなるよ。
ミュンヘンで日本を優勝へと導いた歴史に残る選手が発した言葉は、バレーボールを知り尽くした人ならではのもの。
スパイクは、誰でも打ちたいし、練習もする。
パスがうまくなるには、基本的な姿勢を身につけるために、繰返し地味な練習をしなければならない。
同じ練習を繰返し行うには、それを続ける精神力を必要とする。
しかしながら、これは話半分なのかもしれない。
同じ練習なようで、同じ練習ではなく、精神力に裏付けされた集中力が、ボール一球一球の違いを感じとり、似たようなボールはあっても、その違いを感じるようになるからだ。
指先、肘、肩、膝をさまざまな変化させながら、感触を確かめていく。
もちろん、試合やゲームとなれば、そんな練習の意識とは違って、結果を追い求めることなる。
実践でのボール裁きは、こんな練習の積み重ねを表したものであり、こうしたプレーヤーを見抜く力も、また、神経を研ぎ澄ました練習を経験した賜物といえる。
高校時代、バレー部に転入生が入ってきた。華麗なボール裁きや素早い動きは、見る人を圧倒した。私の目に映ったその姿は、厳しい練習を積み重ねてきたことを物語っていた。
交わす言葉以上に、プレーは、全てを物語っていたように思う。
残念ながら、今日は、その人の通夜に参列することになった。
高校を卒業して、30年、遺影との再会。同窓会まで、後3ヵ月。会ってみたかった人は、予想もしない場所に。
遺影とともに、ユニフォームが2枚。1枚にはキャプテンマークが。
一人で帰るには、少し、辛い夜。二人の友が付き合ってくれた。
思い返すほどに、バレーボールが、ほんとに、上手だった。
僕にも、こんな時代があり、仲間がいたことを気づかせてくれた。
ありがとう。