髪型の写真?んなもんあるかい!演出から手が離せないんだぜ。始めたらびっしり2時間半、役者の演技を見つめ、ダメを出し、ダメな理由を説いて聞かせ、繰り返させ、たまには演技エリアに行って代演する。カメラなんて取り出す暇、ないんだ。
隣りの部屋じゃ、ネット購入したウィッグで昔の髪型作ろと必死になってる。時折、メイク担当がモデルを引っ張って来て、この髪型でどうですか?なんて演出の判断をもらいに来る。前から横から後ろから素早く眺めて断定する。ダメ!何度も却下の繰り返し。土台無理があるんだよ、今風のウィッグで夜会巻き作るって。地毛だってあるわけだし。
でも。仕方ないんだ。時代設定、昭和の初めなんだから。ちょうどモガが闊歩し始めて断髪が一つの流行になってた頃の話しだもの。断髪が流行語になるってことは、世の主流は長髪を結ってたってことだ。さすがに、島田とか純然たる日本髪は少なくて、長い髪をうなじの上で結い上げる夜会巻きてのが主体だった。
今回の出演女優でこの髪を結わにゃならんのは6人8役。うち4人6役はもともと短髪だ。この4人分の簡易鬘をつくらにゃならん。苦労しいる、メイクさん。良い形に結い上げるだけが目標じゃない。その髪を固めて、いつでもすっぽりかぶれるようにしなけりゃならない。その髪型で最初から最後まで通せるなら、本番前に仕上げれば済む話しだが、なんと厄介なことに、劇の途中で断髪に変わるなんて面倒な設定になっているんだ。それと一人二役の役者も結いっぱなしにゃできない。だから、仕上がったものは強力スプレーで固めて保存する。本当に、ご苦労!
断髪が指定の役者は、地のままでいいか、って言えば、そうは行かない。当時の断髪ガールの髪型は、今とは違う。少女のおかっぱ頭のような髪型なのだ。ここ数日、髪を切って颯爽と登場する役者が目立っている。男の目から見ると、斬新で新しい魅力をたっぷり発揮してると感じるんだが、当の女性たち、慣れ親しんだ髪を切ることにはそれなりの抵抗もあったことだろう。でも、その思い切りも役者に必要なこと。役のためとあらば、短髪はおろか坊主にだって!いやいや、そこまでは要求しないけど。うむ?言い切れないかも???
着付けの方も、プロが来てくれて、格段に進んだ。着物の早着替えも5分を切った。さらに帯を改良すれば、大幅に時間短縮できそうだ。そんな専門家の技を見ていると、髪の方も美容師さんにお願いすりゃよかったんだって、今さら思ってももう遅い。菜の花座もずぶのアマから、片足の指一本プロに掛けたところに来ているってことなんだろう。団員自らが力量付けていくことも大切だが、プロを活用するってことも端から考えていかにゃならんのだろうな。
と、なると、金だよ、金、問題は。で、もっとお客さん集めなくっちゃよ、チケット売り上げ増やさねばよ、ってことになるわけさ。