昨日は場転とチンドンについて課題を書いた。今度は演技と演出についての総括だ。と言っても、この記事を読む人が皆、昨日の舞台を見ているわけではないしね、あのセリフ回しがどうの、あの場面での身ごなしがこうのと言っても意味がない。なので、昨夜の衝撃的事件?大袈裟だよ、について考えて見ることにする。
青年幸司と熟年幸司が、ともに思いもかけない場面で笑いを取ってしまったってことなのだ。それもかなりの爆笑!いや、驚いたよ!演じてる役者はもっとびっくりしたことだろう。だって、かなりシリアスなクライマックスなんだよ。相方の千晴なんかショックで打ち上げで酒も飲めないほど!本当?ウッソ!
まず青年幸司のシーンはこうだ。家出した女子高生をやっと見つけてみたら妊娠3ヶ月。母親から厳しく問いつめられた家出娘は、日頃の母親への反感から、幸司が子どもの父親だと口走る。突如ふられたぬれぎぬに幸司があたふたするという場面。ここでまず爆笑。うん、これはある程度想定内のこと。ただ、ここまで受けるとは思わなかったけど。さらに、教え子の嘘に合わせるべきかどうか悩む幸司。ここでも笑い。チャンチキの音を幸司だけに聞こえたという演出をしたつもりだったけど、これがまったく裏目に出てしまった。
さあ、ここで、この爆笑問題を解かなくちゃいけない。
理由のその一、観客がこのシーンの前に笑いのロックを外してたってこと。場転でやったチンドン屋の口上が馬鹿受けだったからね、お客さん、ああ、いいんだあ、この芝居大いに笑っても、って待ちかまえてたんだと思う。人間って、笑っていいんだと感じると、ほんの些細なことでも笑いたくなるものなんだ。
理由その二、役者が実際に置農高の先生だったってことも含めて、役者の持ち味が笑いを引き出した。置農演劇部の生徒全員集合だったから、彼らには現実の先生と役柄の幸司が見事にオーバーラップしたんだろう。それと、やっぱり彼のほのぼのとした雰囲気は大きいよ。彼自身は、いたって真面目にやってるんだけど、どこか外れていておかしいそんなキャラクターが笑いを引き出した。青年幸司については、まっ、こんなところだろな。
次ぎに熟年幸司の笑いだ。これも、役者の人柄が大きい。だって、熟年幸司を演じたのはチンドン屋の口上で大いに湧かせた役者の二役だったからね。それに、彼も置農の先生なんだ、それも人気者の。さらに、地域でもかなりの有名人。そんな彼が、若い娘に抱かれたんだから、ついつい笑いが起きてしまったんだろうね。あと、抱かれたときの彼の首の傾け方が、いかにもぎこちなく滑稽だったこともあるな。必死で泣きの演技をしていた相方にはとんだ迷惑だったよね。
でも、このシーンは演出としても、かなり無理があるなと感じてたことも事実。十分な言葉のやりとりが無いまま、相方の女性が感情を高ぶらせていく。ここはかなり難しいと思っていた。だから、女優には何度もダメだしをして稽古してきた。でも、幸司の方のリアクションが重要だったんだ。幸司も相手の気持ちを受け止めて感傷的になっていく演技をしなくてはならなかった。それを役者も演出も見落とした。だから、彼女が抱きついたのが唐突に見えて笑いを誘ってしまったんだろう。
と、書いてきて、やっぱり昨日の芝居『おもかげチャンチキ』見てない人には、まるでわからないものになってしまった。ええ、そこで、結論は無理矢理一般論に戻って、
一、笑いは役者のキャラクターによるところが大きい。
二、地元芝居は、何気ない事でも笑いが起こるから要注意。
三、観客の笑いのロックが外れていたら要注意。
でも、笑った後ですぐにシリアスなセリフに食いついてきてくれたから、そんなに気にすることはないってことかもしれないな。まっ、投げ銭が飛んできたようなもんだ、有り難く笑いのおひねりを頂戴しておこうよ。