昨日、仕事の最中に細田ひな子さんの訃報を受け取った。
笠井賢一さんチームの衣装担当だった細田さんとは、笠井さんの舞台「古事記」や「死者の書」に参加した時に本当にお世話になった。
舞台でも撮影でも現場の衣装方は、役者たちが楽屋で直接に触れ合う特別なスタッフ。
彼女が楽屋にいるだけで生まれる安心感のようなもの、があった。
何よりも彼女に着付けてもらうと衣装にはもう何も心配がいらない。役者の作業に集中できる、という信頼感があった。
10年くらい前だったか、オペラの仕事でイタリアにひと月滞在したんだけど、
毎日着付けと衣装のチェックだけやって、観光なんかどこにも行かないで帰国したわよ! と笑っていた。
依頼したプロデューサーの気持ちもわかる気がした。
先日、銕仙会で見た一人芝居も彼女の衣装で楽屋でお目にかかって、言葉を交わした。
「楽師が演奏で繋いでいる間に、役者が衣装を全部変えて出てくるんだもん。細田さんが必死になってるんだろうな、って思いました」。
彼女は、ただ笑っていた。
それが最後になった。
今年も予定が詰まっていたという。
頭を抱えて困る人たちがたくさんいるのだろう。
代わりになる人はなかなか見つからないだろう。
月曜日までは動けない。
それが明けたらお別れに参ります。