たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

自発的対掌性の破れ

2009-11-19 02:47:13 | Weblog
 このごろのゼミで、俺が突っかかる部分が、南部先生(昨年のノーベル物理学賞受賞者)の提唱した理論に関することであることが、2回もあって、ちょっと嬉しい。
 第二量子化されたハミルトニアンをスピンについての行列表示で書き下す南部表示の手法と自発的対称性の破れ。どちらも、本当に面白い内容で難しい。今回の、自発的対称性の破れなんて、ちょっとした粒子の意志を意味しているなんて(かなり不正確な表現ですので…)、凄すぎるわ。

 初めて理科をきちんとやってから6年。ついに、ここまで登ってこれたか。
 学問の最前線が一番の冒険をしている。今、やっと、冒険の域まで達せているのかもしれない。最近、あんま、やる気がでないけど。。

 『うーんと、この行列で書く書き方なんですけど、、先輩は、ッパと10秒くらいで書いちゃったんですが、きっと慣れてないとそんなに簡単にはでなくって。。僕なんか、この標識を導くのに、授業1回分…じゃなかった、90分もかかってしまいました。だから、まぁ、ゆっくり考えてですね、パズルみたいなもんなんですが。。』
 「そりゃ、そうだよ。それは南部表示と言って、そういう理論によって、南部先生はノーベル賞をとったんだから。」

 え?そうなの?知らんかった…。

 「むしろ、そんなの90分で思いつくんだったら、ノーベル賞何個も取れちゃうって。(笑)」
 『あ、まぁ、先輩の表示をチラ見してたんで、自分の発想じゃ、もちろんないですが。。行列要素を、反交換関係から導くのを、やってたんですが、難しかったですね。なんとか上手くまとまりましたけど。』
 「だから、そりゃ、そうでしょ。。」

 確かに面白いけど、ここまでっ。俺は、もっと、自分にとって価値があるって思えることを、やりたいんだし。

 今日、書店で、いかにも勉強しなさそうなヤローが、高校の学習参考書コーナーをうろうろしてるのを見かけた。参考書コーナーに来て、んで、帰って行って、またやって来て、って、いかにも不自然。
 遊びに遊んでいた頃、ある大学を目指すためとかそんな具体的になれなかったけど、でも何かを変えようとして、初めてちゃんと本屋の参考書コーナーに行き、数学と物理の参考書を探し、「青チャートⅡB」と「∑bestの理解しやすい物理ⅠB・Ⅱ」を買った時の自分を思い出したりした。
 俺はある程度は無難にこなすタイプではあったけど、本当に実力で勝負してやるって思ったのは、ここからだろう。俺はたぶん、こっから、実力主義になろうとしたのだろう。だから、

 『えー、俺、先生っぽいっしょー。』
 【全然。でも、塾の先生ってんなら、確かにーって思う。】
 『それどうゆう意味?(笑)』
 【なんてーいうか、先生は、実力で、どーだっ!!、って感じじゃん?】

 って言われた時、すごく嬉しかった。

 大きく現状を変えようとするとき、どうしても、背伸びしないと精神的に続かないのかもしれない。それで、行けるところまで行ってやったさ。
 でも、だからこそ、だいぶ、落ち着いた今は、地に足着いた理解こそが大事だと思ってしまう。あんまり、背伸びして、難しい言葉や数式で誤魔化して欲しくないんだな。新しい事に対して柔軟なのと背伸びすることは、明らかに違うからね。

 頑張れ。現状を変えるのは、生半可な覚悟じゃできねーぞ。だけど、それ以上のベネフィットが期待できる。
 こんな現状ヤダってどっかで思ったら、多少滑稽でも、少しのかすり傷どころか満身創痍になってしまうんでも、前へ一歩踏み出さなきゃいけない。あなたが誰であろうと。

 その瞬間こそ、「自発的対称性の破れ」なのだと思う。
 本気で現状を変えようとしてみる時こそ、身体のどこかで自発的に対称性が破れ、意志によって外部に影響を及ぼす事ができる。
 いや、生体だから、対掌性(chirality)なのかもな。っま、どっかのタンパク質でアミノ酸がD体になっちゃうなんて、ねーか(笑)。
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