たかはしけいのにっき

理系研究者の日記。

阪大の研究費不正処理疑惑について

2015-12-27 01:00:31 | 自然科学の研究
 大阪大学大学院情報科学研究科の教授らが研究費の不正処理をしたとして疑惑がかけられている。メディアのいくつかの記事によれば、「預け金」や「私的流用」が疑われている。
 …と他人事のように書き始めてみたが(いや、確かに「他人事」ではあるのだが)、疑惑がかけられているのは、かなり俺と近い分野の先生だ。問題となってる先生とは、ほんの数回だが言葉をかわさせてもらったこともあるし、この先生が主催する研究室の人たちとは何度か話したり、一緒に飲みに行かせてもらったりもした。俺は「分野」という言い方は大嫌いだが、それでも少なくとも、目指していること、掲げていることは、共通だと思う。

 以下は、報道されている内容が事実であると仮定して、書く。俺としては、事実と認めたくないという気持ちも、正直まだ少しある。

 今回どういう内容が具体的にあったのかは俺は一切知らないが、それにしても大学の科研費のあり方は、やはり今一度考え直すべきだと思う。
 プールしていたのはルール違反で大問題だが、それでも単年度予算ってのはかなり無理があると俺は思っている。研究を進捗させるうえで、本当の意味で計画的な予算の使い方をしたいなら、とにかくその年度で使い切ってしまわなければならない感を出されるのは研究しにくくて仕方ない。
 獲得した研究費をとっておいて、大きな装置を買いたいということもあると思うし、ポスドクが入ってくるならそこで人件費として使いたいということだってあるだろう。

 しかし、だからといって、彼が不正処理したのだとすれば、それはルール違反で完全にアウトである。まして私的流用は事実だとすれば問答無用でアウトだし、預け金に関してもシステムがおかしいと思うなら、彼ほどの立場の人間だったら、意見をきちんと主張してルールが変わってから、正式に行使するべきである。
 彼ほどの立場、と書いたが、研究費を使っている限り、間接的であろうが、直接的であろうが関係なく、卒研生だろうがテクニシャンだろうが、同じだ。そして、自分の所属している研究室主催者が不正処理を強要してくるような研究者であるなら、それはできない!とはっきり主張して、職や身分や立場を失うべきである。

 失敗しないために一番大切なことは、「おごらないこと」
 この件が事実なら、「自分ほど立場があるし、これくらいのことは、どーせみんなやっているから、大丈夫だろ」という「おごり」があったように思う(そんなわけがないのだが)。
 だからね、どんなに安泰だと思っても、どんなに安泰な場所に所属していると思っているのだとしても、絶対に自分の実力を向上させ続けなくちゃいけないし、相手がどんな立場であれ、どんなに心の中ではクズだと思ってるヤツを相手にするんであっても、そこにルール違反があっちゃいけないし、真実を見つけることに対して常に真剣じゃなくちゃいけないんだよ。

 そういう意味で、やっぱり、常に意見を戦わせる勇気のない人間は、研究の世界を去れ、と言わざるを得ない。
 考えてみれば、研究者は自分固有の意見を提供するために存在しているのだし。

 またこういうことを言うと、サイエンティフィックな事柄では議論を戦わせるべきだが、その他のことでは空気が大事だ、というサイエンスと経済やシステムを分離したい分離主義者たちが、俺に対してドヤ顔で主張してくる。
 今回の件に関しても、俺の周囲の多くの人が、不正をしたのはダメだけど、それでも彼の研究は素晴らしい、などと言う人が多かった(この気持ちはわからないわけじゃないが、今まで信じていたから、という履歴依存性が強すぎると思う)。いや、不正を事実だと思うのなら、彼のサイエンスもそれだけのものだったのだろう。自分と違って、ルール違反をしていたのだ。みんなのカネを使ってルール違反をして成果を出していたのだ。そこに何かの素晴らしさを見出せるか?その「おごり」が研究内容にもむけられていたと考えるのが自然なのではないか?信用ってのは、そういうもんじゃないのか??自分の一番純粋な心に、質疑応答をもう少し繰り返せよ!、と俺は思う。
 本当に彼の研究が心から素晴らしいと今でも思っているのなら、あなたが言うべきことは「彼ほど素晴らしい研究をしているのだから、不正なんかしてたはずがない!これは何かの間違いで、誰かのワナにはまったんだ!!」という言葉じゃないのか?そして、俺はどちらかというと、こう思いたい気持ちは強い。

 もちろん、だからといって、そもそも、この問題となっている教授の研究や原著論文に対して、批判的な意見が何もないわけじゃないけれど(むしろ沢山あるけど)、、少なくとも、彼は、自分固有の意見を堂々とみんなの前で主張できるタイプの研究者である、と俺の眼には映っていた。それだけに、報道されていることが事実だとすると、残念で仕方ない。

 わがふりなおせ。
 おごったり、あなどったりしてちゃ、ダメダメだよね。例えば、ほかのことでも、データ一つひとつについても正確に提出していくべきだし、そこに対して、自分は詳しくないからー、専門じゃないからー、などと言っていないで、数理統計学や誤差論は、実験屋は少なくともしっかりやらなくちゃ絶対にダメだし、あらゆる研究に対する態度をよりよく改善させていかないといけないよね。

 堂々と常に前を向いて、自分は(政治家などではなく)研究者だ!、と常に言えるように。何かの保身や維持のために、誰かを騙せたとしても、自分だけは常に誤魔化せないから。

 (報道内容についての反対の事実の証拠を観た瞬間に、この記事は削除します)

参考記事

読売新聞; 阪大不正経理2.2億円 教授や名誉教授ら3人
NHK; 大阪大学大学院教授 1億5000万円余の不正経理か
日本経済新聞; 阪大教授らが不正経理 研究費1億円超、告訴を検討
コメント (2)
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