桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

思うように行かないのが人生

2013-05-28 | Weblog
いかに好意で行っても、却って迷惑がられることもある。
長い刑務所生活で、大概のことには慣れているが、それでも社会は複雑だから、俺は好意でしても理解されないばかりか、批判されたりもしてウンザリさせられることもある。
冤罪を被れば、誰もが心に傷を負う。俺だって負っている。負っているからこそ、負けないために意識して明るく行動して来た。
不思議なもので、明るく行動を続けてみると、それが自分の習い性となり、自然と行えるようになる。
そのせいか、俺は冤罪者に厳しい。特に、冤罪の心の傷だとか抜かし、たらたらしてる奴を見ていると、尻を蹴り上げたくなる。
真面目に人生を生きて来て冤罪になった足利事件の菅家さんも、一時的に心の傷は行動として現れたが、今では昔の菅家さんはこうだったろうと判る、実に穏やかで優しい人になった。
確かに心に傷は作っても、必ず元に戻れるのだが、そこが判らない人もいる。
同じ冤罪の苦悩を味わった仲間だと思えばこそ、何かの力になりたいと、疲れた身体を運び、長い時間を使って行動しても、お前には愛がない、と言われたりするが、これも人生かねぇ。