浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

おにぎりって割って食べます?

2011-06-07 23:44:25 | DVD、映画
数年前、暑い夏に上野公園の国立科学博物館前に「南極の温度を体験しよう」みたいな小屋があった。コンテナハウスですぐ移動出来そうなやつでね。

中に入ると南極大陸の温度、たぶんマイナス20度とか。夏には最高の企画でしたね。

何でか昔っから南極が好きなんだよなぁ。

たぶん始まりは学研漫画(僕らの世代は科学・歴史系知識はほぼこれから学んでるんじゃないかと思うけど)で読んだ「タロ・ジロ物語」。我々世代はこの話好きなはず。

あとはなんだろなー、よく覚えてないけどとにかく北極よりは断然南極派ですね。北極って言われると「フランケンシュタインの怪物が死んだとこだなー」と思っちゃうもん。あーでもホッキョクグマはかわいいか。

(ちなみにフランケンシュタインは怪物を作った医学生の名で怪物は名前ないです。フランケンシュタインが怪物の名前、というのはまつがい)

つーことでこういうDVDも見ました。

沖田修一
バンダイビジュアル
発売日:2010-02-23


映画公開時にたぶん「THIS IS IT」と重なってて見逃してました。

堺雅人が南極観測隊の料理人役。特に大きなドラマが起こるわけじゃないけどいいよー、出てくる食べ物が美味しそうでいい。

俳優人も堺雅人、生瀬勝久、嶋田久作、そしてきたろう、というなんつーか癖がある人たちばっかりでじっと見ちゃう。あと実は主人公の奥さん役の西田尚美は僕けっこう好き。

特にきたろう!アカデミー助演男優賞を差し上げたい。すばらしい!もう彼が写るだけで「ぷっ」って噴出しちゃうんだよね。

結局のところさ、人生において大事なことは「どんな状況でもメシちゃんと食えてるならいいよね」ってことだと思うんですよ。この映画、一言でまとめちゃうとそれしか言ってないと思う。

だけれども南極と言うロケーション(ロケ地はもちろん違うらしいけど、まぁいいじゃないですか)、と芸達者なおっさんたちのキャッキャッっぷり、そして美味しそうな料理の数々によって、そのメッセージだけで観られちゃいます。

特にこの映画における食材というか料理の選択が秀逸!なんですよ。はっきり言ってここまで「そうだよ!そのとおり!」と思える映画は稀です。

からあげ、ラーメン、カニ、ブリの照り焼き、おにぎり、豚汁、(おすましの時の料理としての)フランス料理。。。ことごとく我々日本人が「あ、そういう時ってこういうの食べたいよね」とか「こういうの食べたらそういう感じになるよね」と思うものばっかり。特にラーメン!使い方がすばらしいよ。

一度見終わって「あれ、カレー出てこなかったな」と思ってもう一度見直してみたらちゃんとあった。しかもあれは正しい。あのシーンはカレーじゃなきゃ。

この、食材の選択した人は圧倒的に正しい。本当によく分かってる。

はっきり言うけど伊丹十三監督の「タンポポ」以来の、真っ当に現代日本人の食文化を映画にした映画です。日本人がいつも味噌汁と納豆ばっかり食ってるわけじゃないんです。

この映画のフードコーディネーターは僕が好きな飯島奈美という人で、南極基地なんで決して豪華な食材にあふれているわけでもないんだけど几帳面な調理人(つまり堺雅人)が心を込めて作った感じが出てる。料理が並ぶ食卓がなんとも豪華でも質素でも無くただ「まじめ」って感じがする。決して堅苦しい「真面目」ってわけじゃなくてね。

ブリの照り焼きを皿に盛ったときに、ちょっと皿にこぼれたタレをちゃんと拭いて盛り付けるところとか、すごく「あ、まじめだー」と感じる。

あと「調理人としての気持ち」ね。これは特に男性で料理をよく作る人、特に誰かに食べてもらったことがある人はよーく分かると思う。「一番食べさせたい人に一番食べてもらいたい料理を作った時の、その一番食べさせたい人の反応を見る感じ」とかさー、これは堺雅人の演技力によるものが大きいんだろうけど。すばらしい。ドアを蹴るとことか「あーぐーら!」のせりふとかね。しかもその二つが出てくるのは南極行ってしばらく経ってみんなとの食卓が「日常」になった証拠なんだよなー。

こういう映画こそ僕は日本がもっと誇って世界に送り出して欲しい。

僕は一人で見ながらかなり涙がこぼれたし、下手したら声上げて泣きそうになりました。すばらしいですよ。爆発シーンもスーパーヒーローも出てこない、きったない(というと失礼だけど)おっさんたちがご飯食べてるだけです。でもここから何かを感じ取れるのが日本人でしょうよ。

おにぎり美味しそうだったなー。いいおっさん方がおにぎりと豚汁でいい笑顔するんだわー。もうなんかそのおにぎりに萌える。

文句はひとつだけ。カキ氷用のイチゴシロップ。あんな使い方僕は許しません。


ところでさ、おにぎり割って食べる人いますよね。ちょっとこう中の具を確認するかのようにして。僕は基本的には中身分からずともガブリと行きたい派。そもそも割って食べると両手ふさがっちゃうからおかずとか食べられなくなっちゃうじゃん。まぁ割って食べるきたろうがちょっとご飯こぼしちゃうところとか「こういう人いるよなー」って思えたけどね。