浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

指導者としてのティベリウス

2011-06-02 22:58:56 | 
ふと思って僕が昔書いた「ローマ人列伝:ティベリウス伝」の一部を修正の上、転載。


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現在、イタリアの歴史の教科書にはこういう記述があるそうです。

「指導者に求められる資質は、次の五つである。知性。説得力。肉体上の耐久力。自己制御の能力。持続する意志。カエサルだけが、この全てを持っていた。」

指導者に必要なもの、について僕は何もわかりません。その五つと言われればそうなのかもしれません。

ただ僕は指導者として絶対に言ってはいけないこと、だけはおぼろげながら思っています。

それは、

「だったらお前がやってみろ」

です。

望んだ権力でなかったにせよ、それを言ってはおしまいではないですか。つまり、指導者は絶対に投げてはいけないのです。

辛ければ適当にお茶を濁してもいい、時には弱音を吐くこともあるでしょう。
しかし投げてしまうのは余りにも無責任じゃないですか。

人生は不本意なものです。あっち行けーと言われて行ってみたらこっちに来いと言われ、やれと言われたことをやろうと思ったらやるなと言われ。

確かにティベリウスの人生は不本意なものでした。司令官としての才能を持ちそれを十分に発揮しながら、なりたくも無い皇帝にさせられ。母からはいちいち政治に口を出され、愛した人とは別れさせられ、政略結婚させられた妻とは巧くいかず。

それどころか自分が何よりも愛し、全身全霊で尽くしたローマ市民からも蛇蝎のごとく嫌われました。

しかし彼はそれを受け入れました。彼は言われたことを言われた以上にやりました。不器用だったかもしれません。それでも皇帝としての責務を何一つ投げませんでした。それで充分じゃないですか。
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コメント (2)
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