浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

「Deus lo vult.」 - 神がそれを望んでおられる

2011-06-06 19:40:08 | 
「ローマ人の物語」を僕が読み続けているのはご存知のとおり。

このシリーズは元々単行本で15冊出版されている。まぁ1000年間くらいの話だからね、ロングシリーズ。

単行本だと場所も取るし値段も高いので僕は文庫本で揃えています。だいたい単行本1冊が文庫本3、4冊くらいになるので、15×3で文庫本でも45冊くらいになる。(たっぷりあるんで本棚の一番上に並べといたらこないだの地震で全部落ちてて大変だった)

文庫本のほうは年に一度9月ぐらいに刊行される。次の9月に最終刊「ローマ世界の終焉」が出て、文庫本シリーズ終了の予定。

とはいえ作者自身の単行本のほうもまだまだ出ていて、「ローマ人の物語」の後日談「ローマ無き後の地中海世界」という単行本が出てる。たぶんこれも同じ形態で文庫本になるだろうからそれ待ち。

そして現在、作者が5冊シリーズで出している単行本が十字軍の話。

ローマ帝国の成り立ちと終焉まで(紀元前40年くらいから紀元後480年)のあと、十字軍の話(紀元後1000年くらい)にというのは非常に楽しみ。僕自身は十字軍についてほとんど何も知らないからね。

ま、こちらも文庫本を待とうと思っているから読むのはかなり先だなー、と思ってたんだけどシリーズ第一作が図書館にあったのでつい借りちゃいました。

絵で見る十字軍物語絵で見る十字軍物語

この本は「十字軍シリーズ」の予告編的なもの。ドレという画家が描いた十字軍の物語の絵がメインで文はその解説。絵が大きめにで、細かいことは載っていないけどだいたいの流れを頭に入れるにはちょうどいい。

だいたいの主要登場人物も絵で見て分かるしね。隠者ピエール、サラディン、リチャード獅子心王なんかがキーパーソンだ、ということは分かった。「カノッサの屈辱」なんかも出てくるのかなぁー。


そして、この簡単な「予告編」だけを読んでも分かることは「神がそれを望んでおられる」を合言葉にしたこの戦いは終わりが見えないなぁ、と言うこと。

キリスト教側はイスラエルという聖地の奪還を「神がそれを望んでおられる」を合言葉に正義の戦いとした。一方、イスラム教側もこの戦いを聖戦(ジハード)と名づけた。

その結果、神が一番望むわけがない多くの戦いと人の死が繰り返されることになる。残念ながらそれは第一回十字軍から約1000年経った現代でも終わっていない。

ため息をつくしかない。

街場のマンガ論

2011-06-06 00:06:19 | 
あー、面白かったわー。

内田 樹
小学館
発売日:2010-10-04



内田樹の「街場の~」シリーズ。

第一章の「井上雄彦論」なんかはこれ完全にマンガ論ではなくて教育論ね。

『バカボンド』(宮本武蔵のマンガね)を例にとり「わけの分からないことを言う大人が複数人いる状態が子供に取って一番いい教育現場なのだ」という話が出てくる。

『バカボンド』読んだ人は覚えていると思うけど、主人公宮本武蔵の心の中であるとき柳生石舟斎、宝蔵院胤栄と言う二人の師(というかロールモデル)が出てくる。二人は超一流で、だからこそむにゃむにゃと勝手なことを言う。イメージとしてはよくマンガで心の中で悪魔と天使が言い争いをするけどそういう感じ。

この状態、複数のロールモデルがぜんぜん違うこと、場合によっては同じことを言っているんだけど違う言い方をしている、時こそ本当にその人が自分で考え、自分で答えを出す時なのだ、という話。

それなんて本当によく分かる。

明らかに正しい人が一人しかいなくてその人の言うことが正しいと思える時なんて自分は成長しない。いろんな人がいろんなことを言って、しかもそれがどうも「全部正しいなぁ」と思える時、初めて自分で考えるようになるもんね。

その他にも「少女マンガの四種類の音」なんかは面白かった。普通のマンガにある音、つまり紙面上に出てくる文字は3種類しかない。つまり「実際の音(口に出して言った言葉だったり周りの音だったり)」、「内なる声(つまり、考えていること)」、そして「擬態語」。少女マンガには更にもうひとつ加わる。それは「心の中に存在するけど本人自身それに気づいていない声」この4つ目の声を理解できる人は少女マンガを楽しめるけど、これが理解出来ない人は少女マンガを楽しめない。

なるほどねぇ。

その他、対アメリカとの関係から読み解くマンガ論なども面白いです。

マンガ好きな方は「へぇーなるほどー」と思えると思いますよ。