浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

これぞ映画!

2010-02-07 19:25:42 | DVD、映画
「スタンディング・オベーション」、つまりまぁ立ち上がって最大限の拍手、という行為ですね。

海外だとよくしてたりするけど、なかなか日本だとしない。

僕も典型的かどうかはわからないけど日本人なのでした覚えってあまり無い。

でももしこの映画を映画館で観ていたら、観終わった後で、エンドロールが流れ、そして立ち上がってブラボー!と叫びたくなって、そしてそんな習慣の無い日本を少し恨んだかもしれない。

いや、ここは日本らしく歌舞伎の大向こうみたいに「クリント屋!」とでも叫んだほうがいいかも知れないね。

それくらい素晴らしい映画だった。

クリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」。


これぞ正に「映画」だと思う。

2時間かそこらの映画に色んな要素が詰め込まれている。

生と死、暴力と報復、男と女、隣人、多民族社会で生きること、宗教、働くこと、老いること、友情、犬との生活、少年の成長、、、これらのことを語ろうと思ったらどれだけの時間がかかるんだろう?

それらを語りたくて、そして語る方法が映画しか無いからクリント・イーストウッドは映画を作ったんだろう。

一人の老人と隣に住む少年、という非常に近い「他者」との関係を軸にしながら実は現代アメリカが、場合によっては現代の世界が抱える問題をテーマにしている。素晴らしい。

たぶん、この映画の大きなテーマは(本当にテーマが多すぎるほどたくさんある素晴らしい映画なんだけど)「暴力と報復」。

昔であれば話は簡単だった。

クリント・イーストウッドも荒くれ刑事ダーティ・ハリーとして悪者を追い詰めマグナム44を突き付け「Go agead, make my day」と凄んでれば問題は解決できた。

でももう今はそんなに単純な時代じゃない。

暴力は暴力しか生まない、という奇麗事を言うつもりはないんだろうけど、銃を突き付ければ向こうはもっと大きな機関銃を出してくる。

どうやったって後戻り出来ない銃社会、雪だるま式に大きくなる暴力、正しくない「若者の自由」、多民族が集まることにより大きくなる民族間の齟齬、、、現代アメリカは多くの矛盾と問題を孕んでる。これはもう救いようがないように思える。

どうすればいいんだろうね、ほんと。

クリント・イーストウッドは答えを出してない。たぶん誰にも分からないんだと思う。

でもラストシーン、少年はヴィンテージ・カー、グラントリノを手に入れる。助手席にはかけがえの無い友人、犬がいる。

それはそれでかすかだけど立派な「救い」だと思う。

ふと思ったけど、「ミリオンダラーベイビー」にしろ今作にしろそして次回作「インビクタス」にしろストーリーの奥底に「民族」が流れている気がする。
そういえばイーストウッド監督の出世作「許されざる者」でも主人公のパートナーはアフロアメリカンだった。

典型的アメリカン(に思える)イーストウッドがそれをテーマにしてる、というのが非常に興味深いね。

って七面倒くさいことは抜きにしても、この映画、はっきり言いますけど僕にとっては本当に10年に一度の傑作です。男臭い映画に思われるかも知れないけどそんなことも無くって、色んな人に是非お勧めです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アヒルと鴨とイーストウッド

2010-02-07 17:36:13 | DVD、映画
うちのすぐ近所にレンタルビデオ屋があるんだよね。ツタヤだのそういう大チェーンではなくてフォーラム(←分かる人だけ分かればそれでよし)をちょっと小さくしたくらいの個人店。

ツタヤのほうが品揃えは当然いいんだけど浅草のほうにしかないからこっちのビデオ屋も結構使ってます。

今日、ご飯食べてたらふと「アヒルと鴨のコインロッカー」が見たくなって借りてきました。借りる時に「お客様、これ以前も借りてますが…」と言われたけど「あ、いいんです」と答えてね。


映画になる、と聞いた時は「あんなのどうやって!?」と思ったもんだけど、しっかり映画になってるんだよね。

瑛太と松田龍平は圧倒的にいいよ!

ストーリーについてはさ、はっきり言っちゃえば「何言ってもネタばれになる」って種類の映画だからあんまり語りたくないけど。

あとなんつってもオール仙台ロケってのがいいよね~。

仙台駅周辺の有名どころはほとんどない(コインロッカーのシーンくらいかな)けど、仙台結構行ってた身としては「あ、このバス停は東北学院大前のバス停じゃない?」とか気づくところがあって懐かしくなる。

と、いうDVD三昧の日です。

これからイーストウッドの「グラン・トリノ」観る。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする