さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

「トラック」の側にも不安あり ゴロフキン、4度倒してTKO勝ち

2020-12-19 17:26:15 | 海外ボクシング




ゲンナジー・ゴロフキン、タイトルマッチでは久々の快勝、大勝だったと思います。
IBF1位、カミル・シェルメタを4度ダウンさせ、7回終了のTKO勝ちでした。

こちらの記事によると、ダン・ラファエルが辛辣に評した、とあります。
トラック対三輪車、とはまた...いくらなんでも、三輪車ってことはないと思いますが、どうでしょうかね。
原付、というのも酷か、まあ軽自動車くらいではあったでしょう。
とりあえず思うのは「指名挑戦者」といっても、ピンからキリまであるものやなぁ...という。


その昔、日本人ボクサーが、フライ級以上では世界に通じないと言われていた時代、世界フェザー級王者デビー・ムーアに日本のエース、高山一夫が挑む試合を「ルノーでダンプカーにぶつかるようなもの」と評した向きがあったそうです。
実際の試合では、高山が一度はムーアを右クロスで捉え、実質的にはダウンに追い込む場面もあり、高山の健闘は大いに称えられたわけですが。



話は戻って、まあシェルメタの方がああいう感じ。
では「トラック」、ゴロフキンの側はというと、こちらはこちらで、やはり不安な印象でした。

重いジャブで崩し、止め、アッパーをリードに使ったり、上下のコンビに織り込んだりという攻めで、着実にダメージを与えていくが、本当に当てたい、倒したい、これで決め、というパンチは、きっちりとは決まらず「仕留め」の流れを作れない。
優勢に進めている試合の前半、5、6回あたりに、そんな様子を見せられると、どうしても不安、翳りについて思ってしまいます。

ダウンこそ4度奪いましたが、身体を寄せたときの返しとか、ジャブとか、そういうパンチで倒れる程度の耐久力しかないシェルメタが相手だった故、という面もあったかと思います。

あと、年齢を重ねたせいか、矢継ぎ早に行きたいときに「ひと息」入り、その間が、全盛期にはなかったものに見えること。
以前は、見ているこちらが「次は何を」と思うより先に、良いパンチ入れて、相手が倒れていたものですが、最近はその辺の流れが停滞し、どうも重く、間延びして見える。
これはここ最近の試合、大半でそういう印象です。


明日の結果がどうなるかわかりませんが、もしカネロが勝てば、ラバーマッチ実現へと話が動き出すのでしょう。
実況は再三、シンコ・デ・マヨで激突、と鬼が笑うような話をしていたようですが、この感じだと、ゴロフキンにとり、明るい展望とはいかない、と思います。

唯一、これまでと変わる点があるとすれば階級、ないしは契約体重で、スーパーミドル級(168ポンド)か、或いはキャッチウェイトで164とか(レナード、ハーンズ再戦の数字です)になることで、今より減量は楽かもしれません。
しかしそれが、ゴロフキンに幸いする話なのかどうかというと...。


とはいえ、明日の結果によれば、もう、やらないでは済まない流れになっているのでしょうね。
というより、それがゴロフキンの心情そのもの、なのでしょう。
勝っていたと思う試合を負けにされた、ということのみならず、もっとも良い時には闘えなかった相手への思いもまた、複雑なものがあることでしょう。

結局、この両者の明暗を分けるものは、両者のピーク時の力ではなく「時」を得るのはどちらなのか、というところに行き着くのでしょう。
それは過去二試合もそうだったし、二度あることは、という倣いで行けば、また。
そういう意味では、あまり明るい気持ちで、楽しみだ、とは思い切れない部分があります。残念なことですが。



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ということで、一曲。
山中さわお「アインザッツ」。









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比嘉大吾vsストロング小林戦、paraviで5分遅れのディレイで配信

2020-12-18 22:05:17 | 関東ボクシング




大晦日の井岡一翔、田中恒成戦、ひょっとしたら無観客試合になったりせんやろうか、と心配なくらい、昨今の「情勢」は悪化の一途を辿っておりますが、ひとつだけ朗報というか。

セミファイナルの比嘉大吾、ストロング小林佑樹戦は、関東ローカルではTBSで生中継がありますが、関西では見られず。
しかしTBS系列のオンデマンド、paraviにて、5分くらいディレイながら、オンデマンド配信があります

初めての視聴の方は、二週間無料で視聴出来るとのことです。
そうでない方は有料です。私はこれに該当します(嘆)
まあ、しかし、どうしても見たい試合があるなら、多少の出費も仕方ないかもですね。
実際、会場行って見るよりは、コストがかからないわけですし(ニヤリ)。
このカードがそうなのかは、人それぞれなのでしょうが...と、ここはひとまず逃げますけど。


ちなみに、比嘉の移籍初戦、引き分けに終わった堤聖也戦は、CS-TBSで26日、午後9時30分から放送されます
地方在住の身には、これで見るくらいしか、方法が無いですね。
ついでに比嘉、小林戦は、1月30日だそうです。情報ページはこちら


YouTubeやオンデマンドによるライブ配信が増えているご時世に逆らうように、ことがTVとなると、ひと月遅れ、ふた月遅れという、もう皮肉のネタも尽きるような話ですが、これでも放送や配信があるだけマシ、ですかね。
なんとか、ボクシング界全体で、カードの質を常態として維持し、コンテンツとしての価値を高めていってもらいたい、と、重ね重ねお願いしたいところです。


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高山vs小西戦ほか、枚方→府立第二に変更/週末は3試合ライブ配信

2020-12-17 17:00:35 | 関西ボクシング




新型コロナ自体の、というよりも「取り扱い」方の余波、という部分もありそうな気がしますが、一向に収まらない事態の中、12月27日、枚方市総合体育館でのグリーンツダ興行が、同日、同時刻(夕刻5時30分開始)のまま、難波の府立体育館第二競技場に変更されるとのことです。

枚方なら、クルマで行けて楽で良いんですが...とか、そんなことも言ってられませんね。
まあ、この日はどうしても動かせない用があり、夕刻からというのも微妙ではあるのですが(そのせいで、前日の墨田行きも断念しました。行く気やったんか)。

高山勝成、小西伶弥戦については色々と、心に染みそうな一戦である上、お馴染みグリーンツダ勢の試合もそれぞれに楽しみです。
とりあえず、会場変更だけで済んで、試合自体は行われるのだから、幸いだったというべきなんでしょうね。


まーほんとに、同じ事何度書いたら終わるんやろう、と自分でも飽き飽きしてますが、この状況下、本来せないかんものとは別の気苦労を強いられている関係者諸氏、そして何より選手の皆さん、大変な思いをされていることでしょう。
傍目の勝手で試合やら、それにまつわるあれこれに対し、好き勝手なことばかり言うたり書いたりしているだけの身ではありますが、こんなときでも我々の前で、ボクシングを闘って見せてくれる皆さんに、改めて感謝と敬意を送りたいと思います。



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さて、この週末はというと、DAZNで土日にゴロフキン、カネロが連日登場という、普通なら「何考えてんの」というスケジュールが組まれていますが、これは来年以降の、両者の対戦を見据えた上でのもの、と見て良いんでしょうかね。
もしそうだとしたら、大変結構なお話ではあるんですが...まあ、どちらも次の試合、勝てるという保証はないわけですけど。

ゴロフキンの相手、シェルメタは戦績見ると怖さがない印象ですけど「番狂わせ」というのは、そういう風評のときに起きるものでもあり...。
カネロ、スミス戦は、カネロが上手く立ち回れるかどうかですが、ある程度まで「思うに任せぬ」部分も出てくる、とも思います。
何しろ生中継、ライブ配信ですから、大いに楽しみたいものです。


そして土曜日、19日には今月の関西、要注目興行のもうひとつの方
これも府立地下、しかし12時30分開始で5試合。
3試合目が大森将平、5試合目のメインが久高寛之です。

これも観戦したかったのですが難しく、当日券発売がないとのことで、断念。
しかし、真正ジム山下会長のブログによると、BOXING REALチャンネルでライブ配信されるようですので、多分後追いになりますが、しっかり見ようと思っています。



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ということで、一曲。
フジファブリック「赤黄色の金木犀」。







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処分が出た/強い意志/今から興味深い/殿堂入り

2020-12-16 14:52:50 | 話題あれこれ




さすがに年末、スチャラカに生きているつもりでもそれなりに忙しく、連日更新ともいかないかもしれませんで、しかし週末毎にライブで試合が見られてしまう(しまうって何だ...)ので、話題あれこれ、まとめて。



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寺地拳四朗にJBCからの処分が出ました。詳しい記事

示談金の推移?について触れている部分など、正直、如何なものかと思いますが...。
処分の軽重については、そもそもそんなもの要るの、というのが個人的な意見ですが、まあ昨今のご時世(コロナ抜きの話です)とは、そういうものなんでしょうね。

ただ、当初は「犯行」の映像が証拠だ、という話だったはずが、どうもそうではないらしい、というのには驚き、ちょっと首を捻るところです。
「状況証拠」とはまた、奇怪な言葉使いですが、こういう話が長じて、袴田事件のようなことが起こったんやないのか、とも。
本当なら、徹底的に争うべきところかとも思います。

しかし、もう示談も済んだ話ですし、処分も受けるわけですから、いよいよこれで「おしまい」にしてほしいです。
唯一、彼がボクサーとして深刻に咎められるべきは、WBCの指名挑戦者でもある久田哲也との対戦が延びてしまった、という一点だと思いますが、それは早急に実現されるべきだと思いますね。


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ティモシー・ブラドリー、中谷正義を語る。杉浦大介氏の記事です。

この人、現役時代については、ええ左持ってるし、他にも良いところが沢山あるボクサーで「これでアタマさえなければ」と再三思ったものですが、さりとて首無しボクサーなんて、お化け屋敷の出し物やあるまいし、あり得ない...うまいこといかんものやなあ、と。

しかしこの記事によると、中谷の「強い意志」を称えると同時に、その欠点、そして課題も的確に評しています。
きちんと「評論家」として成り立っているなあ、と感心しました。
そして、こういう人に語られるところまで行った中谷正義、改めて素晴らしいな、とも。


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日曜日のDAZN、アンソニー・ジョシュアはクブラト・プーレフを4度倒して9回KO勝ち。
終始安定して、余裕のある闘いぶり、そしてフィニッシュは見事なクリーンKOでした。

この日は、過去の試合で若干過剰というか、肥大気味にさえ見えた肉体が、ちょっとだけ細めに仕上がっていた?ような印象でした。
体格面で自分より多少劣り、スピードもなかったプーレフ相手だから、というのは確かでしょうが、終始落ち着いて、無理や無駄のない、スタイリッシュなボクシングが出来ていた、とも。

ボクサーというよりボディビルダーのように見えることもあったジョシュアですが、その肉体の頑健さがどの程度まで必要なものか、ボクシングの質を上げることの方が重要なのではないか...と過去に何度も思ったものですが、今回はボクサーとしての質の良さが出た試合でした。
しかし、今後実現するであろうスーパーヘビー級の相手との対戦においては、やはり筋肉の鎧、頑健な肉体が必要になる場面も出てくるのでしょう。
単に巧いだけでなく、ありとあらゆる「手管」を駆使してくるであろう「あの相手」との闘いは、単にボクサーとしての技量「だけ」ではない、それ以外の何かを求められるものでしょうから。

アンソニー・ジョシュアにとり、来年はいよいよ勝負の時になりそうですが、そのあたりの折り合いを、どうつけてくるものか。
過去最大の、最も大きくて巧い者同士、でも「毛色」がだいぶ違う両者の対決に、今から興味が尽きません。


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今年の殿堂入りボクサー発表、はいいのですが、メイウェザー、クリチコ、ウォードと並んで、ちょっと早くないか、と思ったら規定が変わっていて、ラストファイトから3年で、ということなのですね。
不勉強なもので何も知りませんでした。

なんか、来年、YouTuberの人と闘うとか、東京ドームで格闘家とエキジビションをやる、という話もあるらしいメイウェザーですが、興行する方々にとっちゃ、こういう、引退した人でっせ、というお墨付き?は、迷惑なのかもしれませんね。
まあ、実際のところはこうなんです、と言うしかないんですが...。


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ということで、一曲。
Oasis “Morning Glory” です。







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「一本化」のカードを組む意義、ここにあり 福永亮次、中川健太をTKO

2020-12-14 22:38:19 | 関東ボクシング




昨日のWOWOWオンデマンドに比べれば、マイナー、と表現せざるを得ないBoxingRaiseのライブ配信ですが、中谷、ベルデホ戦に続いて、ライブで見られて本当に良かった、と言える試合を、先ほど見終えました。
スーパーフライ級の日本チャンピオン、中川健太と、WBOアジアパシフィック王者、福永亮次が、空位のOPBF王座決定戦も兼ねて戦う「三冠統一戦」という名目の試合でした。


共にベテランというべき年齢、サウスポー、しかし一打必倒の強打を持つ者同士。
そして、試合ぶりが真正直で、あまりベテランらしくない。
色々と似ている者の闘いは、予想以上の大激戦となりました。


初回、福永が右リードを強めに突いて仕掛けていく。中川は見て立った印象。
2回もほぼ同じ、中川は少ないながら左を繰り出すが、主導権支配で福永か。
この辺までは、わりと静かな感じ。中川の自重気味?と見えるスタートが、彼に向いた闘い方なのか、若干の疑問あり、でしたが。


試合前のコールで「リトル・パッキャオ」とニックネームをコールされた福永は、心なしか髪型も「寄せ」ている感じ。
そしてパッキャオばりに思い切りよく左を振る。

が、より効果的だったのが、上だけでなくボディにも強めに突き立てる、右ジャブのリードパンチ。
このパンチが、時に中川を止め、時にスリーパンチの端緒となる。
そして3回、福永の左クロスが中川をぐらつかせる前にも、このパンチがよく出ていました。

続く4回、福永が攻め、中川は左のヒットで反撃開始、と思ったところに、福永の右フックが決まり、中川ダウン。
中川、序盤から飛ばす福永の失速を見越した、抑え気味の前半かと思っていたが、そうだとしたら計算が完全に狂ったことでしょう。


5回から中川が奮起。ぐいぐい出て、時に足を止め加減で打ち合いに。
6回も同様だが、福永の方がまだスピードでまさっている。左を決めて出る中川がポイントを取ったと見るが、福永を抑えるには至らず。
7回、さらに出る中川に、福永がボディへ左右の連打を送る。合間の右リードも冴え、中川の方が失速気味。

8回は俗に言う「ビッグラウンド」。福永が右リードからスリーパンチ。中川が左クロス決め、右返し。
中川、半ば捨て身、さらに左をヒット。しかし福永の左がカウンターで決まり、追撃。10-8もあるか、という回。

9回、福永の右ジャブで中川がぐらつくが、中川左を打ち返す。福永、両手上げてアピール。
福永のワンツーで中川、ロープ際へ下がる。
両者疲れとダメージでさすがに失速、共にきつそう。しかし懸命に狙い合い、打ち合う。死闘の様相。
ことに、まともに打たれ続けている中川が心配になってくる。そのタフネスには感嘆しますが。

10回、中川が脅威の粘り。左クロス、右フック返しを繰り返して攻勢。
福永もガードがすぐ落ちてしまう状態で、続けてヒットを喫していたが、左を食ったあと、すぐに返した左が決まり、中川がよろめくと、レフェリーがストップ。
大激戦の末、福永がTKO勝ちとなりました。



過去に数多く、世界のタイトルホルダーを出したクラスですが、それ故にというべきか、国内レベルでの好カード実現よりも「避け合い」が目につく、という印象も残る、それが日本の115ポンド級でした。
かつて「保留選手」制度というものがあったとき、日本タイトルに挑戦しない、という位置付けの選手が7人も8人もいたくらいで、さすがに呆れかえったものです。
まあ、あくまで印象に過ぎないだろう...と言われればそうですが、そういう話で収まらないと思ったのも事実ですし、このような「構図」は、何もこのクラスに限った話でもありません。

今回、昨今のご時世を受けて、国内の上位対決が増えた趨勢の中、ベテランの域に入る両者のカードが実現しました。
とはいえ、このクラスから次に世界を伺う選手が出るとしても、この一試合だけではなく、今回の勝者と、今後浮上してくるであろう、新たな世代のホープとの対決を待たねばならないだろう、と思ったりもしていて、タイトル一本化の三冠戦、というお題目も、申し訳ないが聞き流す、という感じでした。


しかし、実際にリングの上で繰り広げられた、両者の果敢、懸命そのものの闘いぶりは、なるほどさらに上の、世界云々という話をすれば不足はあれど、国内最上位の王者を決める、タイトル一本化の試合というものを本当に組むと、これだけ見どころのある試合になるのだ、という好例として、もっと多くの目に触れて欲しいと、心底から思えるような試合でした。

この試合、その勝者の栄誉を飾るのに、三本ものベルトは必要ない。
国内における、真の王者ひとりを決める試合が、当たり前のこととして行われ、それが常態化していれば、ベルトは黒革の一本だけで足りるし、その一本のベルトの価値は、何処に出しても恥じない、輝かしいものであり得るはず、です。

そんな思いが、けっして間違いでは無いのだ、と思わせてくれた熱戦でした。
福永亮次、中川健太の両者に、その「健闘」に、心から拍手し、脱帽したい気持ちです。



...いや本当に、この試合見られただけでも、BoxingRaise視聴料980円はお得ですよ(^^)
セミの岡田博喜、富岡樹戦も熱戦でしたし。小田貴博は無念でしたが、普通の名前で闘えて良かった。
こちらも改めて、入ってて良かったBoxingRaise、と心底から思った次第です、ハイ。



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ということで、一曲。
サカナクション “aoi” です。









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劇的勝利も本人は「この先」を見ていた 中谷正義、大逆転KO勝ちで再起

2020-12-13 18:14:59 | 海外ボクシング



ということで、今日は朝からDAZN、昼からWOWOWオンデマンドでライブ配信二本立ての一日でした。
とりあえずWOWOWの方、中谷正義vsフェリックス・ベルデホ戦から、簡単に感想です...と、落ち着いて語れるような試合ではありませんでした。


初回、ベルデホが、強烈なワンツーでダウンを奪う。
懐深い中谷の作る距離をものともせず、というか、むしろその空間があることで、カウンターやリターンの際に見せる巧さ、鋭さ、意外性を存分に発揮した感あり。
中谷はダメージを隠したか堪えたか、逆にボディに強打を決めて追撃を食い止める。

2回は五分五分の感じ「競った回」だったが、その後は苦しく、3回を落とし、4回は打っていったところに、ベルデホのコンパクトな右カウンター。
膝を落としかけて、ダウンの宣告を受ける。
5、6回と中谷は単発でボディのヒット、右も出すが、その度ベルデホが複数のパンチをリターン。失点を重ねる。

中谷のパンチも、単発ながら鋭いものの、ダウン二度も含めてポイントは大差、という流れ。
ベルデホの方は、大量リードながら楽な様子ではなく、中谷の体格やボディへの攻撃などによる圧力を受けて、むしろ苦しげな様子でさえあったが、中谷のリーチから遠ざかりつつ、来たらリターン返すという流れを作っていて、これをひっくり返すのは容易ではない、という印象。
7回に入ったとき、残り4つ全部取っても勝てない、倒さないと無理だが、さすがに難しいだろう、と諦めつつ見ていました。


その7回、ベルデホのヒットがあった直後に、中谷はワンツーを決め、即座に追撃の連打。
この試合、初めてと言っていい、まとまった攻勢で、クリアに抑える。
ベルデホの右カウンター狙いが怖かった展開ながら、中谷の方も同じような右のカウンターを狙う場面も増えてくる。

8回、その右が相打ちのタイミングでベルデホの頭部をかすめ、ベルデホがたたらを踏むが、直後に中谷の右を外したベルデホの、ジャブのような左がカウンターになり、今度は中谷が一瞬、ぐらりとバランスを失う。
レベルの高い攻防が続く試合が、ここにきて、さらにスリルの匂いを纏い始める。お互いに「ただ者ではない」ことが証された場面。
ポイントは微妙な回だが、もうこうなるとポイント云々ではない。

続く9回、早々に中谷のワンツー。ベルデホが右返すが、中谷の右がよりインサイドを通り、アゴをかすめたように見えた。
ベルデホ後方によろめき、中立コーナーに背中から当たる。ダウン裁定もあり?と思う場面だが、レフェリーはスルー。
ベルデホ堪えて、左のヒット応酬のあとも粘るが、中谷は顔を腫らしながらもぐいぐい出て、圧力をかけていく。

中谷が左のジャブ(ヒット)、右クロス(頭部をかすめる)、左ボディアッパー(視認できませんでしたが、おそらくヒット)、そして左フック上へのダブルと続けた後、左ジャブをカウンター気味に決めると、ベルデホがロープに叩きつけられるようにダウン。
糸の切れた人形のような様のベルデホ、なんとか立つが、もう余計でした。右を被せられて倒れ、レフェリーが即座に止めました。


世界ライト級の上位クラスといえるランカー同士による、熾烈な攻防は、それぞれのスタイル、持ち味が存分に出た末に、より「タフ」な方が勝つ、という結果になりました。
普通に、傍目の立場で見ていても、世界中どこに出しても通るレベルの試合でしたが、その一方が、かつてカリブの英雄として一世を風靡したフェリックス・トリニダードの再来と謳われた元ホープであり、それを破ったのが、日本最強のライト級である。
一昔前なら、夢物語のような試合です。しかし中谷正義は、それを現実にやってのけました。

しかも、見ているこちらが半ば勝利を諦めてしまうような、これ以上悪い展開はない、と思うような試合をひっくり返す、大逆転KO勝ちです。
一昨年のテオフィモ・ロペス戦に続く、世界ライト級上位相手との二試合におけるこの内容と結果で、中谷正義は世界ライト級のトップシーンにおいて、重要キャストとしての地位を確立したのではないでしょうか。
今日一日の話に限っても、エドガー・ベルランガ、シャクール・スティーブンソンという、トップランク社お抱えのスター候補に挟まれてのベガス再登場、そして再起戦の舞台において、中谷正義はこのふたりにも負けない、ことによると上回る脚光を浴びたと言えそうです。



今回の試合については、以前も少し書きましたが、とにかく中谷という希有な人材が、その可能性を閉ざされることなく、再び闘えることがまず、何よりも嬉しく思えることでした。
正直言って、この試合に勝ってその先がああでこうで、と夢見る、というところまで、気持ちが届いていなかったというか、追いついていなかったというか。

しかし試合後、テオフィモ・ロペスへの雪辱を口にする、思いの外、冷静な中谷の姿を見て、当たり前のことながら、本人はその心中に、未来への情熱を秘めて再び起ったのだなあ、と気づかされました。
中谷正義の今後に期待...というより、本人がしかと見据えている「この先」を、我々も見られるのだ、見せてもらえるのだ、という喜びが、心中に溢れています。
本当に見事な勝利でした。脱帽、そして拍手です。



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寺地拳四朗や京口紘人にとり、今後最大の脅威になるかと目されるジェシー・ロドリゲスの試合、トップランク公式のハイライトがありましたんで、ご紹介しておきます。
この相手、確か拳四朗とフルラウンド闘った選手ですが、これだけではなんかもう...という感じです。








以前WOWOWで試合が放送されたのを見て、おお、これはなかなか上等な、と感心したものです。
今日のオンデマンド配信には入らないみたいだが、明日のWOWOWライブ放送枠には入るかも、と思ってたんですが、メインでシャクール君が、対サウスポー戦の目慣らしにフルラウンドを費やす我が儘を通したもので、おそらく放送する時間がないだろう、と思い、一応貼ることとします。
ベルランガはきっちり、いつも通りの仕事ぶりだったんですが...いや、これはこれで「いつも通り」なのか。

それはさておき、このご時世、来日して試合するのも難儀なので、おそらく狙いはIBFかWBOになるんでしょうが、帝拳の息がかかっている(というと禍々しいですね、契約選手だそうです)こともあり、コロナが収まったら、日本のリングでも見たいものですね。



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ということで、一曲。
LAMP IN TERREN 「キャラバン」。








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ドネア、一転「陰性」で世界戦を希望 複数回検査しても問題は起こる

2020-12-12 21:48:02 | 海外ボクシング





ノニト・ドネア、新型コロナ陽性により、エマヌエル・ロドリゲス戦欠場の話から数日経って、再検査で陰性だったので、当初の予定通り、世界戦出場を希望しているとのこと。
しかし間の悪い?ことに、すでにドネアに変わり、レイナート・ガマリョがロドリゲスと対戦、それがWBC暫定王座決定戦として認可された、という報の後でした。


ドネアに関しては、確かに、試合まで二週間の時点で検査して、陽性と出たから即座に欠場、というのは急ぎ過ぎでは、と思わないではありませんでした。
日本では体操の内村航平が、大会直前で陽性だいや偽陽性だと騒ぎになっていましたが、もし「偽陽性」だったら、という事態を避けるために、複数回の検査を実施している、という側面から言えば、ドネアが当初の予定通りに試合出場することに、何の問題もないはずです。

ただ、もうひとつの興行的側面、欠場選手の「代打」を早急に決められるように、ということで言えば、ガマリョの出場が決まったこともまた、複数回検査の「意味」としては充分なものです。


試合の何日前なら、出場可能な選手のコンディションに問題なしとするか否か、という面と、再検査の結果、陰性(偽陽性?)だった、と判明したそのタイミングが、今回のようになった場合、非常に難しい問題が生じます。
まだ試合まで一週間あり、ガマリョもそもそも、同じ興行に出場する予定だった選手なので、もう少し、代替カードの決定を送らせても良かったのではないか...或いは、そうすべきだったのではないか、というのが、ざっと見た傍目の感想ですが。


しかし、従来型の興行的混乱とはまた、別物の問題があれやこれやと降りかかってきて、関係者諸氏もさぞや心労が重なっていることでしょう。
いちファンとして、勝手に思うことをつらつらと書いていてナニですが、心の反対側では、色々と心配な気持ちにもなろうというものですね。



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ということで、一曲。
大沢誉志幸「ハートブレイク・ノイローゼ」。








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ベガス二戦目、不足を自覚して挑む 中谷正義、会見で豊富語る

2020-12-11 19:32:20 | 海外ボクシング




ということで、井上尚弥のモロニー戦に次ぐ重要な一戦、中谷正義のベガス二戦目まで、あと二日
相手のフェリックス・ベルデホと共にツーショット(でいいんですかね)、そして豊富を語っています。


前回のテオフィモ・ロペス戦、内容的には競ったもので、その実力、地力を世界的にも知らしめた反面、今回本人が語ったように、一打の決め手、或いは明確な好打が、もうひとつ、ふたつは足りなかったかな、とも見えました。
抜群の体格、リーチ、懐の深さを持ちながら、それにかまけることなく、自ら試合展開を作っていくのが常の中谷は、国内や東洋圏の相手なら、その流れの中でKO勝ちを手にしてきましたが、世界上位(それどころか今や、アルファベット要らずの「世界ライト級チャンピオン」ですが)のロペス相手には、そういうわけにはいかなかった、という試合でした。

今回の相手ベルデホは、出始めの頃の勝ちっぷりといったら、後の上昇期にあったロペスと同等か、それ以上の鮮烈なもので、今回の試合は、彼が再び、時代を画すスターボクサーたり得るのか、という疑問に対する答えを出すためのものです。

その相手に、前回の不足を自覚し、さらなる進境を示さねば、と語った決意の片鱗を、いや、かなうことなら全てを、リングの上で見せて欲しい。
中谷正義に対する期待は、勝ち負けも大事ですが、まずはその点にあります。


記事にある、今回から指導を受けているというイスマエル・サラスは、少し前にコロナ感染という報がありましたが、その後どうなったものか、ちょっとわかりませんで、そこは気がかりですが...とにかく無事、計量を終えて、日曜の試合が行われるように願っています。
そして、大いに楽しみにしております。



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先日取り上げたジロリアン陸vs太田卓矢戦の動画ですが、改めてアップされていました。
整えてアップしなおした、ということのようです。
いろいろと、勝手な早合点で、申し訳ない限りです。大変失礼しました。
改めて貼っておきます。






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災厄の一年、これで打ち止めと願いたいですが ドネアも陽性反応、欠場へ

2020-12-10 14:04:47 | 井上尚弥






昨日、ジロリアン陸の試合、YouTubeにあったのを貼って紹介させていただきましたが、早々に削除されています。
どうやら、YouTubeのライブ配信のみが許可されていて、動画アーカイブとして残すものではなかったのでしょう。
貼るなら試合前からチェックして、ライブ配信の紹介として貼るべきでした。申し訳ありませんでした。



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どこまで続くコロナ渦、ワクチンの接種が英国で始まったそうですが、なんでも厳重な冷凍管理が必要なものらしく、広範に使われる、といくかどうか。
本当に、一刻も早く、普通の感染症と同等に扱えるようになってもらわんと、今の基準で物事が動くのだとしたら、にっちもさっちもいきません。


今日もまたまた、ノニト・ドネアに新型コロナウィルスの陽性反応が出たとのこと。
日本時間20日の注目カード、エマヌエル・ロドリゲス戦は欠場となります。
ノルディ・ウーバーリに続いて自身も感染とは。

カード自体も「呪われた」なんて表現を使いたくなりますが、この手の話をいちいちそんな風に言っていたら、もう、そこらじゅう呪いだらけ、というのが昨今の現状です。
対戦相手のロドリゲスも、ネリー戦消滅に続きコレですから、こちらはさらに気の毒というか。

何にせよ、こういう話はこれで打ち止め、となってもらいたいですが...WBCバンタム級王座の「正常化」に、またしてもひとつの過程がプラスされてしまった、というところでしょうか。
ロドリゲスとレイナート・ガマリョ戦が行われる可能性あり、ただしWBCが認可するかは不明とのことですが。


とりあえず井上尚弥の次は、IBF指名試合クリア、その次は、リゴンドー戦が噂に上がっているというカシメロか(或いはリゴンドー?)、という運びで、その次にWBCの勝ち残り、という風になるのでしょうかね。
しかし、ここまであれこれ躓き、時間がかかる間に、井上転級のタイミングが来てしまったら、それはもう、そういうものだと諦めるしかないですね。
せめてカシメロ戦までは戦って欲しい、と思いますが、それもなかなか...どうなりますか。

このコロナ渦において、良いことは何もありませんが、改めて、ボクサーの生きる時間、その濃密さを改めて感じるところです。
加えて、様々な困難により、大仰に言えば「運命」が交錯する様を見続けた果てに、それを振り返って、壮大なドラマを見た、と思えるならば、その中心にいるボクサーこそが、真の王者であり、スーパースターなのでしょう。
そして当然、昨今のバンタム級、軽量級シーンにおいては、井上尚弥こそが、と信じています。



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ということで、一曲。
BOOM BOOM SATELLITES “NINE” です。







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もう今日の試合が見られた ジロリアン衝撃KO

2020-12-09 21:37:58 | 関東ボクシング



ということで、今夜の試合がもうYouTubeに上がっていましたのでご紹介。
これは、ジロリアン陸自身のYouTubeチャンネルみたいです。
そのうち、A-Signチャンネルでも見られるかもしれませんが。







ジロリアン陸、強打炸裂で初回KO。39秒だとか。
二郎系、ってんですか、何しろラーメン好きで、マジシャンが職業で、という多彩なキャラクターのみならず、デビュー戦でお笑い芸人トリオ「ロバート」の山本選手と対戦していたり、新人王決勝では森武蔵と闘っていたり、何かと語るところの多いボクサーで、闘いぶりはというと、ご覧の通りの強打一発を秘めた「スリラー」な試合を見せる。
これで4連勝、うち3KOで、日本ライト級18位となっていますが、こういう選手がもっと上位に上がってきたら、ボクシング界を賑わすスターになれるかもしれませんね。


相手は新人王戦で、粘り強い闘いぶりで鮮烈な印象を残したタフガイ、太田卓矢。
2012年にトーナメントで敗退したのち、6年を経て再エントリー、西軍代表にまで上り詰めたというキャリアの持ち主。
闘いぶりもキャラクターもタフな印象で、正直、こんな試合になるとは思ってもいませんでした。
しかし、こういうこともあるのがボクシングで、勝負の早さがイコール実力差、というほど単純なものでもありません。
今日は無念の敗北でしたが、またその闘いぶりを見たいと思います。




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