ゲンナジー・ゴロフキン、タイトルマッチでは久々の快勝、大勝だったと思います。
IBF1位、カミル・シェルメタを4度ダウンさせ、7回終了のTKO勝ちでした。
こちらの記事によると、ダン・ラファエルが辛辣に評した、とあります。
トラック対三輪車、とはまた...いくらなんでも、三輪車ってことはないと思いますが、どうでしょうかね。
原付、というのも酷か、まあ軽自動車くらいではあったでしょう。
とりあえず思うのは「指名挑戦者」といっても、ピンからキリまであるものやなぁ...という。
その昔、日本人ボクサーが、フライ級以上では世界に通じないと言われていた時代、世界フェザー級王者デビー・ムーアに日本のエース、高山一夫が挑む試合を「ルノーでダンプカーにぶつかるようなもの」と評した向きがあったそうです。
実際の試合では、高山が一度はムーアを右クロスで捉え、実質的にはダウンに追い込む場面もあり、高山の健闘は大いに称えられたわけですが。
話は戻って、まあシェルメタの方がああいう感じ。
では「トラック」、ゴロフキンの側はというと、こちらはこちらで、やはり不安な印象でした。
重いジャブで崩し、止め、アッパーをリードに使ったり、上下のコンビに織り込んだりという攻めで、着実にダメージを与えていくが、本当に当てたい、倒したい、これで決め、というパンチは、きっちりとは決まらず「仕留め」の流れを作れない。
優勢に進めている試合の前半、5、6回あたりに、そんな様子を見せられると、どうしても不安、翳りについて思ってしまいます。
ダウンこそ4度奪いましたが、身体を寄せたときの返しとか、ジャブとか、そういうパンチで倒れる程度の耐久力しかないシェルメタが相手だった故、という面もあったかと思います。
あと、年齢を重ねたせいか、矢継ぎ早に行きたいときに「ひと息」入り、その間が、全盛期にはなかったものに見えること。
以前は、見ているこちらが「次は何を」と思うより先に、良いパンチ入れて、相手が倒れていたものですが、最近はその辺の流れが停滞し、どうも重く、間延びして見える。
これはここ最近の試合、大半でそういう印象です。
明日の結果がどうなるかわかりませんが、もしカネロが勝てば、ラバーマッチ実現へと話が動き出すのでしょう。
実況は再三、シンコ・デ・マヨで激突、と鬼が笑うような話をしていたようですが、この感じだと、ゴロフキンにとり、明るい展望とはいかない、と思います。
唯一、これまでと変わる点があるとすれば階級、ないしは契約体重で、スーパーミドル級(168ポンド)か、或いはキャッチウェイトで164とか(レナード、ハーンズ再戦の数字です)になることで、今より減量は楽かもしれません。
しかしそれが、ゴロフキンに幸いする話なのかどうかというと...。
とはいえ、明日の結果によれば、もう、やらないでは済まない流れになっているのでしょうね。
というより、それがゴロフキンの心情そのもの、なのでしょう。
勝っていたと思う試合を負けにされた、ということのみならず、もっとも良い時には闘えなかった相手への思いもまた、複雑なものがあることでしょう。
結局、この両者の明暗を分けるものは、両者のピーク時の力ではなく「時」を得るのはどちらなのか、というところに行き着くのでしょう。
それは過去二試合もそうだったし、二度あることは、という倣いで行けば、また。
そういう意味では、あまり明るい気持ちで、楽しみだ、とは思い切れない部分があります。残念なことですが。
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ということで、一曲。
山中さわお「アインザッツ」。