昨日の試合の感想文です。
ブランドン・リオスは、思いの外、堅牢なガードを用いて立ち上がりました。
2連敗からの再起を期すマニー・パッキャオを苛立たせる展開を作り、
全体重を乗せて踏み込んで打つ左ストレートの強打を誘って、その前後に勝負を賭ける、
そんな、普通なら無茶な企図が見えて、序盤は緊張感を持って試合を見ていました。
しかしパッキャオは、意外というべきかどうかはわかりませんけど、
こちらが勝手に思い描く悲壮感や力みをほとんど見せず、右回りのステップと
左ストレートの軽打で試合をコントロールしました。
リオスが狙う強打を、出す前の時点でほぼ無力化してしまうレベルのアウトボクシングでした。
また、左右のコンビではなく、左、または右のダブル、トリプルにボディ打ちを交える攻撃を多用したのも、
一発強打を狙うリオスの射程に、自分の体の軸を置きたくなかったからでしょう。
もちろん、スピードで勝るという確信を持っていないと出来ないことでしょうが、
この日のパッキャオは、中盤以降、見てるこちらが少々退屈に思うほど、
完璧なリスク管理を見せて、大差の勝利を得ました。
この闘い方と内容を、どう見るかはそれこそ議論百出でしょう。
まずは堅調、復調を示した、と見るのが基本なのでしょうけど、
普通のボクサーならそれで済む話ですが、やはり歴史的強豪たるパッキャオの
過去の試合ぶり、試合の度に新たな歴史を作ってきた驚異の男の姿を思い出すと、
そう簡単に得心がいかない部分もあったりします。
やはり、再起初戦とはいえ、あれだけ優勢に進めた試合の中で、
弾丸のように飛び込んで打つ左ストレートなどによって「打倒」の意志を撒き散らし、
果敢に攻め込む場面が無かったことは、仕方が無いことなのか。
もちろん普通のボクサーならそれでいいのですが、パッキャオを見る物差しとして
その普通の見方は正しいのか。
今回は無難だったが、次回以降はもう一歩踏み込んだ攻撃もあるだろうから、
今からとやかく言う必要はないのか。
或いは、この攻め急ぎを抑制した闘い方は、ブラドリー、マルケス戦で見せた
それぞれに形の違うペース配分の失敗を教訓とした「新生パッキャオ」のスタイルであり、
さらに踏み込んで言えば、強打を狙う相手の意志を最大限に「活用」する天才、
フロイド・メイウェザーを攻略するための第一歩なのかもしれないのか?
かつて彼を「序盤限定」の高速ボクシングで苦しめたザブ・ジュダーの「速さ勝ち」を
もっと多くのラウンドで実現しようという、壮大な構想の序章を、我々は見たのか?
...ちょっと(かなり?)飛躍や脱線が過ぎましたが(^^;)
とにもかくにも、再起初戦として、基本的には良い内容と結果だった、とは思います。
今回見られなかった、今後に期待する部分について語れば、上記のような疑問を抱く試合でもありました。
しかし、やはり我々は、再び起った英雄の姿を見て、勝手なものごとも含めて大きな期待をし、
あれやこれやと想いを巡らせる楽しい時間を得られるわけです。
今後の展開がどういうものになるかはわかりませんが、とにかく次の試合が楽しみです。それだけは確かです。
パッキャオの今後から、やはり我々は目を離すことなど出来ません。
後に振り返って、この試合の位置づけ、意味がどのようなものになろうとも。
ただ復帰戦ということもあるので、次の試合をしっかり見届けたいと思います。
パッキャオならではの見られ方というのは確かにありますね。私もそれにとらわれているクチです。今後どういう展開があるかを含めて、今回見られなかったものがどの程度見られるのか、要注目ですね。